表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/84

41 オクトパッシング3

「このペンダントの神石を身につけて、竿で切るイメージで振ってみたんだ」

「そしたら、飛ぶ斬撃が出るのかぁ~、かっこいいなぁ~。まぁ、そんな感じでいいんじゃないか」

 愛吹はドン引きしている。蘭は弱みを見つけたとばかりに、ファスナーを開けたまま、胸を隠そうともしない。アマビエは、やたらと嬉しそうだ。

「コホン…俺も釣ろうっと」


 船をまた、もとの場所に移動して、俺はタコ釣り用の仕掛けをそのまま落としてみた。

 トン、トン、トン

 トン、トン、トン

「おっ!」

 トン、トン

「そりゃ~!」

 ズン!


「大ちゃん、来たか?」

「来たのは、来たけど、重すぎて上がらねぇ・・」

 重い、先ほどの二キロなど比じゃないほど重い。

 常世の海のタコ釣りなど、やめときゃ良かったと、直ぐに後悔した。この海の魚は半端ないんだった。

「ふんぬ! ぬぉぉ!」


 とにかく、今の少し浮いた状態で、ドラグを思いっきりしめて少しづつリールを巻く。ラインが切れても仕方ないや、それよりも竿が折れるかも。

 竿の限界を確かめるように、そーっと竿を立てる、ゆっくりと竿を寝かせながらリールを巻く。

少し上がった、それを繰り返し沈んだタイヤを釣り上げるように、やっと六十メートルを巻き取った。

 アマビエに網を入れてもらい、二人いや、蘭も入れてほぼ三人がかりで船に引きづり上げた。


 真ダコだ、とてつもなくでかい。何キロなのかは分からないけど、猫よりは大きく、頭の丸いところだけでバスケットボールほどの大きさはある。

「うぎゃー、化け物だぁ~!」

「そなた、とんでもないのう!」

「怖い! 怖い! 怖いぃ~」

 船の上は、女子達の悲鳴で大騒ぎだ。水ダコだと記録には三百キロ近い、全長九メートルという中型バスほどもあるものがいたという話だから、それに比べるとかなり小さい方だけど、真ダコだとデカイ。

 しかも、虹色にヌメヌメと光っている。ほんと、どう見ても地球外生命体だ。


 それでも、そこは安心の神魚、大騒ぎを他所に、コロンっと神石に変わった。神石が赤い。タコだから?

 いつもの神石とはちょっと形が違う、まん丸ではなく、オタマジャクシのように、へんな突起のような尻尾のような物が付いている。勾玉? そうだ勾玉に形は近い。きっとまた何か特別なことが出来そうな気がする。

「もう、お兄ちゃん、変なもの釣らないでよ」

「悪かった、もう俺もタコは釣らん。めっちゃ怖かったなぁ~」

「少し、ちびったぞ」

「蘭、また下ネタかよ」

「冗談に決まっているだろ」

 釣りをするからには、大物を釣りたいと願うものだが、度を過ぎると怖いな。水蛸を相手にする漁師さん達は勇者だと思う。


「愛吹も蘭も、もう少し釣りたいだろ?」

「なんだか、怖くなってきた」

「私は釣りたいぞ~」

「蘭は釣りたがっているから、愛吹ももうちょっと釣ってみろよ。もう俺は、船の操船に専念するから」


 愛吹はおっかなびっくり、蘭はやる気満々で再開した。面白いことに、アマビエが愛吹にくっついて、なにやら教えている。アマビエが釣りをするのは、見たことないけどなぁ~

「そうじゃ、そうじゃ妹君。そなたは、ここに竿を置いたままでそのリールとやらを操作しておれば良いのじゃ。釣れれば、我が取り込んでやろう」

「ありがとう、アマビエさんは、優しいのね」

「そうじゃ、我は可愛い娘には、優しいのじゃ」

 アマビエが、怒ったのを見たことないけどな。アマビエも一人でずーっと瀬戸内海の番をしていたんだろうから、気兼ねなく神臭を宿した三人がいる場所にいるのは、きっと嬉しいんじゃないかな?と思う。

 かく言う俺も、妹や蘭には明け透けに話せるが、他の人と話すのは気構えてしまって、疲れるから苦手だ。

 若い女子達が俺の船で仲良く和気藹々としている風景を見るのは、船長冥利に尽きるというものだ。


「大ちゃん、まるで親父じゃのう」

 俺の心を読んだアマビエが、そう突っ込む。

「へっへっへ、お嬢さんたち、可愛いのう」

「変態が全開だな」

 三人にジト目で睨まれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ