表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/84

4 魔石

 次の休日、俺はまた早朝から出航していた。

「今日はお土産を持って帰らないと、また愛吹に叱られちゃうからな」

 朝一の反応はまずまず、程なく三十五センチ程度の真鯛を三枚釣り上げた。

「じゃぁ、この間の異世界ポイントに行ってみようか」


 異世界ゲートはまだ閉じていないようで、魚探の反応は先日と同じく真っ赤だ。

「ふふふ、今日は秘密兵器を用意したもんね」

 取り出したのは、七本鉤の真鯛サビキ。全長十メートル幹糸四号ハリス三号の大仕掛だ。

 腰が硬く先端の柔らかな、少し長めのロッドに、パワーのある電動リール。


 このポイントの魔魚だと、七本鉤に七匹って可能性もあるもんな。

 竿受けに固定して落とし始めると、早速竿先(ロッドティップ)にココーンとアタリが出る。

 構わず底まで落とす。

 低速で巻き上げ始めると、次々とあたって、またロッドの先端が水中に引き込まれる。


 三十センチ近い、イシモチ(シログチ)っぽい、やはり虹色に光る魚。

 どうせ消えてしまうのだから、網は用いず手鉤(ハンドギャフ)で順番に船に引き上げた。

 デッキで前回と同じ様に消えてしまうのだが、消えた瞬間にコロンと石の様なものに変わったのが数匹いた。

 思った通り、七本鉤で七匹。

 パーフェクト!

 魔魚でも消える前にグーグー鳴いている。


「なんだ? 魔石か? マジでイシモチだな」

 石に変わったのは、三匹。だから三個の石の様な金属の様な鯛ラバのヘッド大のものがデッキに転がっている。

 石を拾って握ると握っていない方の手の平が熱くなった。

 先のヒールじみた力のこともあって、なんとなく俺は、そのまま手の平を残った石に向けて、

「動け!」と念じてみる。


 スー!!

 石がデッキの後ろに滑って、縁に当たって止まった。

「念力が使えちゃったよ」

 右手に持っていた石は、消えて無くなってしまった。


 石を持たずに同じ事をやってみる。

 今度は動かない。

「なるほどなぁ〜本物の魔石なんだ」

 こう言う物も手に入るとなると、食えない魚を釣るモチベーションも上がるというものだ。

「魔石が出るのは、やっぱりイシモチだけなのかなぁ〜?」


 サビキでどんどん釣り上げ、消えていく。鉤を外す必要がないのでかなり手返しが良い。

 イシモチの魔石率は圧倒的だけれど、違う魚でも七匹に一匹くらいの確率で魔石が出てくる。

 魔石は出なくても、数を釣れば釣るほど、自分の持つ力が上がっているような気がする。

 かれこれ、百五十匹は釣ってる気がするが、電動リールを使っているせいもあって、一向に疲れ知らず。

 体力や素早さなどの基本ステータスが上がっているように感じる。


 しかし俺は少し飽きてきた。

 落とせば、毎回大漁、しかし手元には魔石しか残らない。

 こんなの釣りじゃない!と思い始めていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ