34 五目釣り
常世ポイントに移動した。
「蘭、ティップランのロッドでは、ちょっと無理だから、このロッドを使えよ」
俺は船倉から、以前鯛サビキをやった電動リールのロッドを出してきた。真鯛サビキを取り付けてやる。
「こうして、竿受けにセットしたまんまで使えばいいから」
と竿受けに竿をセットしリールの電源を取り付けて、蘭にリールについているレバーの使い方を説明する。
アマビエは、こういうセットや説明をしているときは興味がないのか、魚探の変化する画像を面白そうに観ている。釣り自体には、まったく興味はないらしい。
「竿を手に持たなくていいんだな?」
「うん、面白みにはかけるけど、神石を集めるには、数を釣らないといけないからな」
「どのくらい釣るのだ?」
「そうだな? 何が釣れるか判らないけど、百は釣らないと神石も集まらないだろうな」
「ひゃ、ひゃく・・・」
蘭がすっとんきょんな声を出す。
「イシモチ(シログチ)が釣れたら、二匹に一個くらいの割合で出てくるけど、他の魚だと、十匹で一個出ればいい方だからな。百匹釣っても十個も出るか出ないかってとこだぞ」
「もはや漁だな」
「そうだ、今からお前は趣味の釣り人ではなく、漁師になるのだ。これからこの船は、蟹○船と化す」
「私は漁業奴隷になるのか?」
「わはは、泣きながら釣らせてやる」
冗談交じりで蘭を脅しながらも釣り開始。
俺は、常世ポイントを維持するように操船しながら、見ている。実際、この釣りは面白くないのだ、常世ポイントは仕掛けを入れたら、ほぼパーフェクトで神魚が釣れるのだもの。
竿先に早速アタリが出た。
「そのまま、底まで落とせよ…うん底だな、じゃぁリールを巻いて」
蘭は言われるがままに、不慣れな手つきで電動リールのレバーを操作する。
「レバーを前に倒すほど早く巻けるから、ゆっくりで」
ゴンゴンゴンと竿先が遠めでも判るほど揺れはじめた。
「そのままで、上まで来たら勝手にリールが止まるから、そしたら竿受けごと竿を立てて、ラインを手繰り寄せて上から順番に取り込むんだ」
「大きくて無理そうなのは、俺がギャフで取り込むから、仕掛けが長くて縺れやすいから、丁寧にな」
「すっごく重いぞ~」
言われたように、ラインを手で持った蘭が嬉しそうに言う。順番に引き上げている、手で抜けるサイズのようだ。
マルアジ、マルアジ、イシモチ、マアジ、フグ、フグ、ワニゴチ。全部虹色の神魚で七本鉤のパーフェクト。一度で五魚種達成だ。そのうち、一個だけ神石に変わった。やはりイシモチだな。
「やや! 色んな神魚が釣れたぞ」
「蘭は、すごいのう!」
魚探を見飽きて、いつものように海を覗いていたアマビエが、蘭を賞賛する。アマビエは何でも釣れるのを観るのが好きなんだろうな。自分で釣ってみたいとは一度も言ってきたことがない。
「これが、神石かぁ~」
「そうだ、これに神力を注いだら、色が変わって神力が充填できるんだ。使い方は後で教えてやるから、今は使うなよ」
蘭は神石を大事そうに袋に入れると、自分のタックルボックスにしまった。




