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31 暮羽目線

 大和に会ったのは、二年ぶりになるかな? 別れてからは、一度も会っていなかった。妹の愛吹ちゃんとは、時々会うことがあって、今、大和がどうしているのかは大体、聞いてはいたけれど、私の我儘で別れたようなものだから、私は会わす顔が無かったというか、避けていたというか。


 高校を出て私はアニメーションの専門学校に二年通い、卒業して京都の制作会社に採用された。大和とは、遠距離恋愛になってしまったけど、いずれは結婚するつもりで時間を作って会ったり、メールのやり取りでお互いの将来を語りあっていた。

 就職して二年ちょっとの時、私は動画から原画の担当に抜擢されたので、より一層、大和との時間が取れなくなり距離が遠くなった。まだまだ私は仕事を続けたかったし、大和は、愛吹ちゃんもいるので、家を離れることが出来ない。結局、二人で話し合って大和は私の夢を尊重してくれて、まだ結婚は無理だということで別れることになった。


 私が大和を、一番大切な人を傷つけてしまった。忘れるためにも、その夢を追い続けるためにも私はより一層仕事に打ち込んだ。その無理が祟ったのか、罰が下ったのか、突然理由の判らない発作で、身体を中心に世の中が回転するような眩暈に襲われ、食事も摂れなくなってしまった。


 近くのお医者様で様子を診てもらった結果、専門の科のある病院で再検査と入院したほうが良いとのとこで、実家の近くの総合病院を紹介してもらって帰郷して入院したのだけど、担当の先生は私の病気の原因が判らないので、対処療法しか治療の方法がないとおっしゃり、体力が落ちているので、とりあえず体力を戻しましょうとのことでしかなかった。


 私の病気はもう治らないのだろうか、仕事ももう辞めなくてはいけないとしたら、私はどうなってしまうのだろう? と不安で押しつぶされそうになったある日、愛吹ちゃんが来てくれて、大和がお見舞いに来てくれているとのこと。

 どうしよう。お化粧もしていないし、こんなボロボロの私を見て欲しくない。


 でも愛吹ちゃんは、

「今のお兄ちゃんなら、ひょっとしたら私の病気を良いほうに導いてくれるかも知れない。なんせ神っているから」

 なんて、危ない宗教にでもはまっているのかしら? と思うようなことを言う。もし大和が変な方向に行っているのなら、何か言ってあげないといけないし、逃げると後で後悔しそうだ。

 私は、大和と会うことにした。


「暮羽、点滴している方の手をだしてみて」

 再会した大和は、突然そんなことを言う。何をするんだろう?危ない宗教のおまじないでもしてくれるんだろうか?

 私は目の前で起こったことが信じられなかった。

 彼が私の腕に手を翳した途端、少し腕が暖かくなったと思ったら、私の腕の点滴痕が綺麗になっていたのだ。

 手品? いや、奇跡? 彼は奇跡を起こせるようになったの?


 背中を向けてと彼が言うので、素直に背中を向けたら、重苦しく辛かった身体が、スーッと空を飛べそうなくらいに軽くなり、あんなに苦しんだ眩暈なんてもう起こりそうもないくらい楽になった。これは、間違いなく、私の身体に奇跡が起こっている。

 何が起こったの?

 彼は何をしたの?


 彼の説明は、不思議なことだらけで普通なら、きっと私は信じない話しだったけれど、今、私の身体に起こったことと、彼がそういう嘘を言うような人でないことは、誰よりも私が良く知っている。きっと、全部、本当なんだろう。


 その後、彼は私に取憑いていた厄病魔とやらを祓ってくれたそうで、これも鵜呑みにするには怖い話しだけど、彼はお守りの綺麗な石のペンダントも置いていってくれた。

 秘密にしてくれよ。と彼は言ったけど、勿論、こんな話しを人にしたら、私が危ない人だと思われちゃう。

 それでも、不安な時に会いに来てくれただけでも、本当に凄く嬉しかったんだよ。

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