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30 暮羽の病室2

 「神力(しんりょく)っていうんだ」

病室でベッドで座っているパジャマ姿の暮羽に俺は説明を始めた。

 「危ない人だと思われたり、知れると変なことに利用されたりするから、人には言わないで欲しいんだけど、海で釣りをしていてアマビエって神様にあったんだ。誰でもってわけじゃないらしいんだけど、彼女が、異界の門を海の中に開いてくれて、そこの魚を釣ると魚は消えるんだけど、代わりに、この力を授かるんだ」

「不思議な話ねぇ、大和が船を買って釣りを始めたって話は愛吹ちゃんから聞いてたけど、アマビエって本当にいたのね」

 暮羽は、俺の話を面白がるように聞いている。


「この神力は、人を癒したり病気を遠ざける力があるみたいでね、さっきの傷や軽い毒なら癒すことが出来る」

「ふーん、それで傷痕が消えたのね」

「他にも釣った魚が、美味しくなったりね」

「あはは、それはいいなぁ~」

体調が良くなったことで、暮羽の気分も良くなったようだ。久しぶりに見る暮羽の笑顔だ。


「これはネットで調べて、過去にそういう人がいたって分かったから、やってみたのだけれど、神力で水も作れるんだ。これが、いろいろと便利でね、今も何が出来るか確かめている最中なんだけど、飲むと身体に良いことは分かってる」

「あー、それで愛吹ちゃんが、この水を持って来てくれたのね。詳しいことは、お兄ちゃんに聞いてって言ってた」

「うん、神水(しんすい)って呼んでる。暮羽の体調も改善される可能性があるから、飲んでみて欲しい」

「うん、分かった」


「それから、ちょっと待ってね」

 俺は、昨日作った神水目薬を差す。目薬による涙を拭うと暮羽のベッドの傍らに、紫の人の形をした影が体育座りをしているのが見えた。

「こいつのせいだな」

俺は、紫の影に向かって手を翳し神力を注ぐ。

『出て行け!』

 紫の影は、靄のように散り散りになって拡散していった。暮羽は俺のおかしな行動を黙ってみている。

 たぶん、これで大丈夫だと思う。


「アマビエの話だと、人を病気にする厄病魔ってのがいるそうで、この神水の目薬を差すと少しの間だけ、影のように見えるんだ。今、そこにいたから追い払っておいた」

「そんなことが出来るの?」

「俺も初めてやったんだけどね。俺は暮羽の病気が良くなればそれでいいから、信じなくても、俺の頭がおかしくなったんだと思っても、別にいいよ」

「半信半疑だけど、大和の言うことを信じないわけじゃないわ。あなたは、正直な人だもの」

「俺自身も効果は認めているけど、まだ全部を信じているわけではないんだ。不思議すぎるもんな」


「それと」

「えっ、まだ何かあるの?」

「これは、病気になったと聞いて作ってみた、お守りなんだけどな」

 俺が取り出したのは、虹色まで神力をこめた神石(しんせき)に穴を開けて、革紐でぶら下げるようにしたものだった。

「綺麗~」

「ペンダントにしては、かなり重いけどな。その消える魚が時々石に変わるんだけど、それに最大まで神力を注いだ石だ。持っているだけで、たぶん厄病魔は寄ってこないんじゃないかと思う。まっ、お守りだ」

「ありがとう」


「俺がやったことは、自分でも神がかりの怪しいことだと分かっているから、効果があればラッキーくらいに思っていてくれよ。後は、先生のいうことを良く聞いて、一日も早くよくなることを祈ってるよ」

「ほんとうに、ありがとう。なんだか、本当に病気が治りそうな気になってきたわ」

「うん、但し俺のやったことは、下手をすると逮捕されるかも知れないから、秘密にしてくれよ」


 自己満足だが、今の俺に出来るだけのことはやったという気分で、愛吹と暮羽の病院を後にした。

 もし、これで本当に暮羽が治ってくれたら嬉しいのだが。

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