25 釣りガール
「着いたぞ」
魚探には相変わらず、すごい反応が出ている。
アマビエは、反芻するように幸せな顔でクリームパンを食っている。
「じゃ、そのロッドのまんまでタイラバやってみ」
蘭のタックルに、タイラバをセットしてやる。
「じゃ、底まで落として」
蘭はリールをフリーにして、タイラバを沈める。
「どうなれば、底なのだ?」
「底に着いたら、ラインがたわむから、そしたら根がかりしないように、直ぐに巻き始めるんだ」
「一定のスピードで、コツコツとアタリが出ても、同じスピードで巻き続ける。グンと引き込まれても、とにかく一定のスピードで巻き続ける」
「分かった、あっ、着底したみたい」
蘭はリールを巻き始めた。
ココココ
さお先が揺れる。アタリだ。
「あっ! アタった!」
俺が言ったとおり、そのまま巻き続ける。
クククク~
本アタリがきた。
グングングン!!
鯛の三段引きだ。
「すっ! すごい引き!」
「たぶん鯛だな、そのまま巻き続けて」
リールのドラグが出てスプールが空回りするが、蘭はそのまま巻き続ける。
腕で竿を支えきれないのか、竿の後ろ側を脇にかかえ、足をハスに構えてやり取りしている。
さすが、自称、剣の達人だ。安定感は俺よりも良いかも知れない。ピンクのパーカーの裾から伸びるレギンスの脚線美が美しい。うーん、釣りガールいいなぁ~
アマビエはお尻を突き出して海を覗き込んでいる。
俺は、網を持って構える。
水面下に魚体が見えてきた。
やっぱり鯛だな。
二度取り込み損ねたが、網に魚が入り、デッキに引き上げた。
虹色の魚体がペチペチと跳ねる。
光の屑になって消えた。
「えー! 消えちゃうの~?! 写真を撮る暇も無かったぞ」
やっと、蘭が口を開いた。
言いながら、へにゃっとデッキに座り込んだ。
初めての大物で緊張してたんだろうなぁ~
「初めての大物だったのにぃ」
「神魚って、幾らでも釣れるけど、釣ったら直ぐに消えちゃうんだ。」
「えー、そうなのか。で神力って?」
「腕とか張ってないか?そしたら、反対の手で擦ってみると判る」
「ほんとだ! 楽になった」
と言いながら、蘭は胸を擦っている。
「えっ? おっぱいも張ったのか?」
「違うぞ、これはドキドキしただけだ! ヘンタイ!」
「大ちゃんもヘンタイだったかの?」
アマビエは嬉しそうだ。
「一緒にするな~!」
「消えちゃったけど、こんな大きな魚が釣れるとは思わなかったぞ。鯛? たぶん鯛だよね?」
「うん、神魚だから、全部虹色だけど、鯛だったな四十センチちょっとってとこか」
「面白かった~。もう一度釣ってもいいかな?」
「いいぞ、今日の持ち帰り分は十分釣ったしな。沢山釣れば神力は、その分強くなるみたいだぞ」
「それ! いいなぁ~」
 




