24 釣ってみたいぞ
「そなたが落とした竿は、この銀の竿と金の竿どちらかのう?」
「いや、一本しか持ってねぇじゃないか」
「わはは、一度やってみたかったのじゃ」
ぷっ!
蘭が堪え切れずに笑った。
バカ神さま、グッジョブ!
「よっこらしょ」
アマビエはいつもの様に、デッキに上がってきて人間の脚に変化した。
「蘭がいるのに、なんで出てきたんだよ?」
「この娘は、大丈夫じゃ、そなたと同じ神臭がする」
「なんだその神臭って」
「神力を使える力を持った者の香じゃよ」
「神力って、神魚を釣ったら誰でも使えるんじゃないの?」
「そうはイカの金○○! それなりに生まれ持ったものがなければ、使えん」
「可愛い顔して、金○○とか言うな!」
「そなたも、神臭がしたから、我は常世の門を開いたのじゃぞ」
そうだったんだ、俺が必死で誤魔化した苦労を一瞬で無に返したバカ神なりに、一応、人を見て判断してたんだ。俺は参観日でちゃんとやれてる我が子を見る親のような気持ちでアマビエをみた。
「はじめまして、蘭と言います。大ちゃんの従姉妹です。本当に神様なんですか?」
「ほー、大ちゃん! そなた、大ちゃんと言うのじゃったか」
「違うよ大和だよ」
「照れるでない、大ちゃん」
「お前まで大ちゃんって言うな!」
「蘭、一応、本物の神さまみたいだぞ、バカだけど」
「そう誉めるでない。そうじゃ、我は瀬戸内海を守っておる海神のはしくれじゃ」
「驚いてしまって、すみません。その神臭ってなんですか?」
「簡単に言えば、神の力、神力を使うことが出来る者の放つ香じゃよ。我らは、その香で、接して良いもの悪いものを見分けるのじゃ」
「犬みたいだな」
「ほう、また新たな言われようじゃの」
「じゃ、私も神力が使えるようになるのかな?」
「そうじゃの、試しに神魚を釣ってみればよい」
「神魚って?」
「我が大ちゃんに開いてやった常世の海で釣れる魚じゃ。大きいのが簡単に釣れておるようじゃぞ」
「だから、大ちゃん言うな!」
「大ちゃんは、どうして教えてくれなかったのだ?私も釣ってみたいぞ」
「俺は、蘭の神臭なんて分からないからな! 普通は、そんな魚を釣らしゃしないだろ」
「釣ってみたいぞ」
蘭の目が『花○満』を前にした『星飛○』のように燃えている。
「わかったわかった。アマビエにまで会ってしまったら、隠しておくのも面倒だから、釣らせてやる。蘭、お前に大物釣りを経験させてやろう」
「大ちゃん、大好きだぞ!」
「いや、そういうの、いらないから」
キス釣りをやめ、俺は、常世ポイントに向けて船を移動させる。
「アマビエさんの絵を描いて持ってると、本当に病気にならないんですか?」
「流行り病だけじゃがの、我の絵で厄病魔が避けるでの」
「すごいですね~!」
「そうじゃ、我はすごいのじゃ」
移動中、二人が会話をしている。
可愛い女の子が二人も同船していると、それだけで華やかで、まるで海がお花畑のように見える。
片や妖怪、片やオムツ女なのかも知れないが。




