16 清蒸
台所のまな板の上には、アコウ(キジハタ)とヒラメが載っている。
アコウは清蒸って決めてるんだけどな、ヒラメは何にしようかな?
半身はやっぱり、また昆布締めにして、刺身とエンガワの塩焼きにするかぁ〜
アコウは、鱗と内臓を取って下処理完了。ヒラメは五枚下ろしにした。まずヒラメに神力を注ぎ、塩をして少し置き、その間に昆布を酒で湿らせたキッチンペーパーで叩く。後は、昆布にヒラメを挟んでラップをして、冷蔵庫で明日まで寝かせれば完成。
これが、お茶漬けにすると美味しいんだわぁ〜
熟成の神力があれば、今夜食べれて便利だろうと思うが、そんなに都合よくは力は得られない。
アコウは煮付けにしても、大変美味しいのだけれど、俺はアコウは清蒸と決めている。
アコウに塩胡椒をして、皿にネギを敷いて酒をかけ十五分ほど蒸す。
松の実を軽く炒り、輪切りにした鷹の爪、パクチーと白髪ねぎをトッピングして、鶏ガラスープ、醤油、ナンプラー、砂糖、胡椒で一度煮立てたスープを上からかける。
最後に、煙が出るほどチンチンに熱した胡麻油を上からかけて完成!
この胡麻油の香りが部屋中に漂って美味しいこと間違いなし! と食べる前から感じる一品だ。
本で読んだのだけれど、ニューヨークの中国人が大好きな料理なのだそうで、マリーナに戻った釣り人に魚を売ってくれと頼みに来るらしい。
俺も一度だけ、中国に出張で行ったとき、本場の清蒸を食べた事がある。あの時は、青ハタという同系列の魚だったが、中国で食べても一皿一万円近く取られた。
そのくらい、このハタという魚は価値がある。
「うわぁ、美味しそうな香りがしてる!」
愛吹が二階から降りてきた。
「今日は、高級魚三昧だぞ、熱い内が命だから早く食べよう」
美味しい魚が食べれるのは、釣り人の特権だ。そして、その魚を更に美味しく食べれるのは、神力保持者の特権と言うべきかも知れない。
船をチャーターして、タイラバに行ってきました。アコウとヒラメも狙ったのですが、二十五センチくらいのマダイが二枚でした。現実は厳しいです。マダイの清蒸もいけますが、やっぱりアコウが美味いです。煮付けにしても、かなり美味しいです。