15 ブリ
今日の夕食分が確保出来たので、次は神力分の補給。
俺の予想では、三十センチ程度の神魚の出した神石のルアーだから、それ以上の魚しか食って来ないだろうと思っている。
念のため、タイラバロッドでは無く、近海魚クラスにオールマイティなジギングロッドにタイラバ、アンバランスではあるが、このタックルで始めてみる。
いつものルアーなら、神魚は、ほぼ入れ食いで食ってくるが、やはり予想通り食っては来ないようだ。
「うーん、やっぱり難しいかね?」
タイラバをタイラバの動きで無く、メタルジグに近い動きで誘ってみる。
神石の形そのままだったが、やっぱり叩いて成形した方が良いかな?
と思いはじめたその瞬間、ゴン!とアタリが来た!
ラインが太いので、かなりキツ目に設定したドラグが唸る。
ヤバイヤバイ!
魚が船の反対側に潜り込む。
俺は、慌てて竿を持って先端から、船の反対側に回り込む。
船底にラインが擦れて切れるのを防ぐためだ。
竿を立てて魚を浮かし、竿を振り下ろすと同時にリールを巻き取る。ポンピングというラインに自信がある時の、大物相手のやり取りの方法だ。
引きずり上げては巻き取り、引きずり上げては巻き取り、この動作の途中でまたドラグが出て行き、巻いた分が元に戻る。
こうなると持久戦だ。魚が勝つか、俺が勝つか、若しくはラインや鍼が負けるか。
どのくらい時間が過ぎただろうか?
三十分?四十分?
徐々にドラグの出る事が少なくなり始め、リールの巻き取りが目にも分かるようになって来た。
アマビエは船縁からずーっと海の中を覗き込んでいる。
「アマビエさん! タモお願いしてもいいかな?」
「良いぞ、この網で魚を掬えば良いのじゃな?」
「そうそう、俺が引き寄せて来るから、網を構えていて入ったら引き揚げてくれる?」
「承知した!」
神さまは、妙に張り切っている。
「ブリだ!」
推定九十センチ。タモに頭が入った、尻尾はタモからはみ出ているが、アマビエは華奢な腕で上手にブリを捕獲したので、二人がかりでデッキに上げる。
これまでの神魚でも、一番の大物。
こうなると、神魚釣りもかなり面白い。当然、光って消えたのだが。
「いえーい!」
俺とアマビエは、自然にハイタッチしたのだった。
神さまとハイタッチって、した事ある人は、少ないだろうなぁ〜
このところずーっと、アマビエは海の中から乗船してきているので、なんとなく心が通じ合って来た気がする。見た目美女でも、神でも妖怪でも、心が通じ合うってのは、気持ちが良いものだ。
アマビエがなかなか良い相棒になってきました。
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