表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
318/362

第57小節目:恋をしたのは

<作者コメント>

明日お休みいたåだきます。

喜ばしい忙しさなのでご心配は大丈夫なのですが、単純に亀更新ですみません。

どこかで立て直したいと思っております……!

「……分かってるよ、分かってる」


 天音あまねは、夕立の降り始めみたいに、ぽつぽつと話し始めた。


神野じんの先輩が、小沼くんにとって尊敬する先輩で、ヒントをくれる存在だってことも分かってる。私の知らない夜を過ごして、それで生まれた絆が不純なものじゃないってことも分かってる」


 おれは、うなずくことすら出来ないまま硬直して、じっと彼女の声を聞いていた。


沙子さこさんと重ねた日々が、小沼おぬまくんをここまで連れてきたってことも分かってる。長い間一緒に過ごした二人だから鳴らせる音が、amaneの大きな大きな武器だってことも分かってる。……分かってるよ」


 息。


「『じゃあ私は、小沼拓人くんに何をあげられるんだろう』」


「そんな、」


「……だなんて、そんなことを言っちゃいけないことも、分かってるよ」


 乾いた笑い。


「私だって、amaneのバンドメンバーだもん。バンドの音源がよくなってくよりも嬉しいことなんか、あるはずない。歌う最中にはこんな感情なかったし、歌も誠心誠意歌えたことも、誓って本当。……むしろ、あの曲にはぴったりの感情で歌えたとも思う。ギターも、小沼くんと沙子さんが作ってくれた、本当に素晴らしいリズムに乗って弾くことが出来たし」


 でも。


「それでも、ちょっと曇っちゃう気持ちがミュージシャンの私とは別のところにほんの少しだけやっぱりあって、それで……」


 冷たくて、熱い声。


「……私は、私の中のそんなところが、たまらなく憎らしい」


 震えるため息。


「ねえ、拓人くん」


 圧迫される背中。


 圧迫される胸元。


 切羽詰まった声。


「……こういうこと(・・・・・・)していいのは、私だけ、だよね?」


































 5秒の沈黙。


「…………嫌だ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2021年10月1日、角川スニーカー文庫より
『宅録ぼっちのおれが、あの天才美少女のゴーストライターになるなんて。』が発売中です!

購入はこちら!(amazon)
作中曲『わたしのうた』MV
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ