interlude:LOVE LETTER
<作者コメント>
突然すみません、本日掲載予定だったところから先に、矛盾が見つかり、せっせと修正作業中です!
少し時間かかりそうなので、場繋ぎ(言い方)の短編を書きました。
本日とおそらく明日はそちらを楽しんでいただければ幸いです。
明後日から本編に戻れるよう頑張ります!
「ん……?」
朝。学校について、自分の席に座ると、ルーズリーフを折り畳んで作った手紙が引き出しに入っていることに気付く。
『小沼拓人くんへ』
こ、これは……?
動揺しつつ、主に窓際の席から死角になるように身体を傾けた。
こっそり開くと、そこには、丸文字が並んでいる。
『大切な話があります。今日の放課後、食堂のウラに来てください』
『P.S. 誰にも言わないでね』
ええ、なんだこれ。ドッキリか……? ドッキリだとして、なぜおれに? 仕掛けてくるような友達はいないんだけど……。
だとして、リアルな告白とも考えづらい。
じゃあ、何だ……?
しかめ面をしながら考えている間に、ホームルームが終わる。
1時間目に向けて、教室移動をしている途中、
「小沼くん、何か悩み事?」
と市川に話しかけられる。
「な、なんで?」
「眉間にシワよってるよ?」
天使さんは、心配そうに首をかしげてくれる。
「な、悩みとかはないですが」
「どうして敬語かな?」
「あー、いや……」
……ていうか、放課後もし行くなら市川に話をつけないといけない。
「市川、あの、今日の放課後……」
とはいえ、なんといえばいいか分からず言い淀んでいると、
「放課後? あ、そうだ! 私、部長会だ。知っててくれたの?」
「あー……いや、まあ、そろそろかな、とは思ってたけど……」
「そっかあ! そしたら、お待たせしちゃうのも悪いから、今日は先に帰ってて?」
「あー、うん……」
……やけに都合よく話が進む。
手紙の主はこれを把握しているんだろうか……?
やきもきしたまま、放課後を迎えた。
「ふう……」
バクバク鳴る心臓を撫でながら、おそるおそる食堂裏に行ってみると……。
「あ、たくとくん!」
「え、英里奈さん……?」
そこには、茶色のダッフルコートを着た英里奈さんが立っていた。
「気付いてくれなかったらどぉしよかって思ったよぉ」
「英里奈さんかあ……」
なんだか、「なんで英里奈さんが?」という疑問よりも、英里奈さんだったことへの安心感が優り、力が抜けていく。
「よかった……」
「どぉして? えりなに告白されたかったのぉ?」
「いや、そうじゃなくて……」
告白でもドッキリでもなさそうだからだ。
……いや、ドッキリの線はまだ消えてないか?
「ねぇねぇ、今日1日、どんな気分だったぁ?」
おれの中で疑念が再度首をもたげると同時、英里奈さんが小悪魔のニタニタ笑顔でそんなことを聞いてくる。
「どんな気分って、気が気じゃなかったわ……。いや、何、これ?」
「何って、告白だよぉ?」
「こ、こくはく……!?」
英里奈さん、いつの間に、おれのこと……!?
「うん! 告白の練習!」
「だよな!!」
……そんなわけあるはずないのに、一瞬よぎってしまった可能性が恥ずかしく、かき消すように大声が出てしまった。
「効果的かなぁ? 手紙で呼び出されて、えりながいたら、キュンってする?」
「キュンっていうかホッとしたけど……」
「それ、いいことなのぉ?」
「さあなあ……」
いや、ていうか。
「また告白すんの? 間に?」
「うん、もちろん! 何回でも告白するよぉ! 学園祭の時の告白は、サプライズが強かったけど、キュンとさせるにはちょっと弱かったかなぁって。それで、別の方法を試してみようかなぁって思って、まずはたくとくんで練習!」
「そういうことなら、事前に言っておいてよ……」
「事前に言ったら、ドキドキしてくれないじゃんかぁ」
それもそうだけど……。
「まあ、ドキドキって意味ではすごかったな……。ハラハラって言う方が近いかもしれないけど。ていうか、あまりにもベタ過ぎて、逆に普通に告白されるとは思えなかったわ。間は友達多いから、ドッキリだって思うかもしれない」
「なるほど、そしたらあんまり良くないかもねぇ」
ふむふむ、とうなずく英里奈さん。
なんか、真面目な顔してると、顔が整ってるんだなあと改めて思う。ていうか、ダッフルコート似合いますね。
「まあ、また別の方法を考えてみてください……」
「そしたらまたたくとくんにやってみるねぇ!」
「いや、それは勘弁してくれ……。じゃあ、実験終了ってことでいい?」
「あ、うん」
「それじゃ、また」
おれが踵を返すと、
「ま、待って、たくとくん!」
「ん?」
背中をきゅっと掴まれて、振り返ると、英里奈さんは頬を赤く染めて、上目遣いでこちらを見上げてくる。
「……こ、これ」
「ん……?」
その手の中にあるのは、手作りと思われるチョコの焼き菓子。
「これ、おれに……?」
「うん、そぉ……」
「あ、ありがとう。え、なんで……? バレンタイン? 今、11月だけど?」
「違うよぉ、なんていうか、そのぉ……」
英里奈さんは珍しくもじもじとしたあとに、
「……お礼」
ぽしょり、とつぶやいた。
「お礼? なんの?」
「その……曲。作ってくれて、ありがとぉ」
「ああ、そういう……。いや、それならおれだけじゃなくって」
「分かってる。だけどね、曲作ろうって最初に思ってくれて、バンドのみんなに言ってくれたのは、たくとくんでしょぉ?」
「まあ、そうだけど……」
「ずっと言いたかったんだよぉ? でも、あまねちゃんの前で渡したらあまねちゃん怒らせちゃうかもだし……」
……それで、わざわざこんな手を使っておれを呼び出したのか。
「マフィン、好きなんだよなあ。ありがとう」
改めてお礼を言うと、
「違うよぉ! カップケーキ!」
ここ大事! と言わんばかりに遮られる。
「何が違うの?」
「違いは全然知らない! けど、これはカップケーキだからぁ!」
「ああ、うん……?」
どうしてそんなにこだわるんだろうか、と首を傾げていると、英里奈さんはまたいたずらっ子のような笑みを浮かべる。
「カップケーキを渡す意味、あとで調べてねぇ?」




