第21小節目:『未明と夜明け前』
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あたしの歌詞(うた)
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『未明と夜明け前』
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Thursday - 04:52 comments(0) - by 山津瑠衣
朝日よりも早く目覚めたのは 特別な音がしたから
真っ暗な部屋 両耳に鳴らす曲
起き出して窓を開けたのは のぼせてしまいそうだから
鼓膜がふるえて 両耳を熱くする
なだれ込んでくる冷気 紺色の匂い
この音漏れだけで 世界を変えてしまいそうなくらい すごい
イヤフォンをすぐに外したのは たまらなくなったから
真っ暗な部屋 急かすように光る画面
親指がそこで止まるのは 左上の文字を読んだから
鼓動がうるさい 左胸をおさえる
「何時だと思ってんの?」「もしもし おはよう」
繰り返してみる ボタンは爆弾のスイッチみたい 怖い
最初の一声が上手くいったのは ちゃんと練習してたから
真っ暗な部屋 右耳を撫でる声
急いで窓を閉めたのは 閉じ込めておきたかったから
呼吸まで全部 この部屋の中に
かすれた声 息遣い 足の指先をこする音
その他に音なんか一つもしなくて
世界にふたりしかいないみたいだ なんて
本当にそうだったらどうなっていたんだろう なんて
敵いもしないこと分かってるのに
少しだけ期待するのを許して
55秒ちょっとで切りあげたのは 戻れなくなりそうだったから
真っ暗な部屋 余韻みたいに響く終話音
自分で止めずにおいたのは 名残惜しかったから
こんなとこも全部 あたしは悪いやつだ
『頑張ったよ』『大丈夫』『間違いなんかじゃない』って
その他にも優しさが沢山鳴って
あの子が褒めてもらえるんだったら なんて
「本当はあたしだってずっと持ってるんだよ」 なんて
叶いもしないこと分かってるのに
少し撫でて欲しくなるのを許して
ぜんぶまとめて
あたしの口からこぼれ出たのは
「いいなあ」だなんて こどもみたいだよ
「そうなあ」だなんて あいつみたいだよ
ちょっと笑って
あたしの両目からこぼれ出たのは…
ううん
「あくびしただけ」
言い聞かせて
そっと拭って なかったことにしよう
今は未明
未だ明るくはないけど
あなたがきっかけをくれたから
あたしは夜明けをつれてこよう
あなたとあなたの大切な人に
夜明けをつれてこよう
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