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Lost Film  作者: ぬペペ
3/17

Film№3 陰キャ君とパスト・グラスプ



今回の依頼主の名前は、日瑠星(ひるせ) (すぐる)

近くの私立に通っている中学1年生。

積極性に欠ける性格から友達は多い方ではないらしい。

そんな彼が今回依頼してきた内容は、たった一人の姉を探して欲しいということだった。


<hr>


「…というわけなんだけよね。だから彼が依頼に応えればそれはもう百発百中ってわけ!」


と、面倒な俺の事情は全部へスティアさんが簡単に説明してくれた。

そして彼を窓際の会談室へ案内する。

まぁ、会談室と言っても、事務所の玄関のすぐ横にある対面式ソファにテーブルを添えただけの簡素なものなのだが。


「すごいです!じゃあ姉も絶対見つかるのですね!」


はぁ、良かったと、彼は安堵の表情を見せ、ソファに腰をかけた。


「安心するのはまだ早い。何をするにもまず情報がないとダメだ。こちとらチャンスは1回きりだから確実に解決したい。まずは外見的特徴から教えてくれ。」


そう言って俺は彼の前に座る。


すると彼は俺を一目見るなり首を傾げた。

そしてものすごく不思議そうな顔で俺の目を見つめてくる。


「…ん?どうかしたか?」


俺は別に何もおかしなことは言っていないのだが。


「顔に珍しいものでもついてるのか?」


「いやぁ、え、でもなぁ…そんなはずはないんだけどなぁ…おかしいなぁ…」


何をブツブツほざいているのか。


「これだから陰キャは…」


と、思わず声に出してしまった。

ヘスティアさんの目が少しだけ強ばるのを感じた。

だが、今回の案件に俺が気乗りしないのには理由がある。

1つは俺が子供を嫌いなこと。

奴らは何を考えているのかわからない。

具体的な意思を持たない、言わば昆虫と同じだと思っている。

彼は中学一年だが、その小柄な体型を見ているとそういうイメージがどうしても払拭出来なかった。

そして何より、彼が陰キャという事だ。

何事もはっきりしない、言葉を濁せば相手が勝手に気を使ってくれると思ってる。

俺が二番目に嫌いな人類だ。

(まぁ、ダントツはこの隣でぼーっとしてる猿なんだが…)

だから本来ならば関わりたくない依頼人だった。


「…なんだ、文句があるならはっきりいえよ。」


と、図らず彼に強く当たってしまう。


「ちょっと、カイトくん。」


へスティアさんが俺の性をわかった上で優しく注意してくる。


すると、彼は慌てて


「あっ…ご、ごめんなさい。その、なんて言うか、お伺いしたいことがありまして…」


「…なんだ、言ってみろ。」


「ちょっと言い難いので単刀直入にお伺いします。」


「ああ。」


(なんだ、はっきり言えるじゃねぇか。)


『なんであなたには過去がないのですか?』


「…はぁ?」


過去がない?

何を言い出すかと思ったら、一体こいつは何を考えているのだろう。


「す、すいません。変な言い方になってしまいましたね。説明します。」


だがその真意は、後の彼に聞いた話で明らかになった。


<hr>


彼には俺と同じようにある能力を持っている。


それは第三者経験掌握(パスト・グラスプ)と呼ばれる能力。

相手の瞳の奥を覗くことによって、他人が過ごしてきた時間を自らの記憶として把握することが出来るというものだった。


だからさっき、俺の瞳を見ていきなり驚いたのかと1人勝手に納得する。

俺は様々な時間軸間を移動する。

彼はひとつの時間軸内の過去を見る。

俺は過去に何度も時間軸転移(タイム・リーピング)しているため、この時間軸においての俺が生きてきた時間は過去から戻ってきた約3週間前からということになっている。

それゆえ彼にはその前までが見えなかったのだと言った。


この能力が発現したのは最近で、どうやら姉の失踪と何か関係があるようだった。


「能力者ねぇ。」


ヘスティアさんはそう言って奥の部屋に来客用のお茶を取りに行った。


「いるとは聞いていたけど実際に俺以外に持っている人が現れるなんてな。」


「えぇ。僕も、このセカイになってから能力者が現れた、なんて信じてませんでしたし…」


(このセカイか…)

「エクストラ・フィルム」のセカイに書き換えられることは人々の記憶を書き換えるということだ。

そのため一般の人にはその存在すら認識されない。

実際ヘスティアさんも、今自分の部屋でゴロゴロしているフォルティーナも、「エクストラ・フィルム」の存在を知らなかった。

だが、能力者である俺には消えた人の記憶が残っている。

(やっぱり能力者には影響がないのか…)


「このセカイってことは、君の姉の失踪が『エクストラ・フィルム』の影響であることを考慮した上で君はここに来たんだね。」


「んー…まぁそれもありますけど…」


「…ん?」


と、ここでヘスティアさんが帰ってきた。


「はい、お茶。」


「あ、ありがとうございます。」


そう言って彼は熱いお茶に一口。


「身の上話はまた後ほどすることにして、今はお姉さんについて聞かせてもらおうか。」


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