表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Lost Film  作者: ぬペペ
10/17

Film№10 心配性とオーバー・イマジン



「な、何から逃げてるんですか?」


俺は驚いて聞き返す。


「さぁ?知らないけど?」


(…は?)


「…え。なんですかそれ?知らないものから逃げてるってどういうことですか…?」


俺はごく一般の回答をした。

自分は何から追われているのかわからないなんてあるのか?

だが、彼女は、はぁっと深いため息をついて一気に答える。


「まぁ、とにかく!弟がこの箱を持ってきちゃった時点で、私は能力について既に誰かに目をつけられてるの!だから逃げるの!以上!」


なんでそんな吹っ切れて面倒くさそうに答えているのか。

まるでどっかの誰かさん(フォルティーナ)のようだ。


というか、彼女は能力について目をつけられたと言ったが、自分が能力を持っていることは知られたらまずいのか?

確かに、能力は一般人にとっては珍しく、ドラマなどでは研究対象として実験のために拉致されたりするシーンを見るが、それはあくまでフィクションであって、現代のこの完全法治主義国家の日本でそのようなことは誰も考えないだろう。

というか一般人ならその存在すら知らないだろう。


そういえば、誰かさん(フォルティーナ)が先程から異様に静かだ。

俺は後ろを振り返るが、そこに彼女はいない。

いつの間に部屋を抜け出したのか。

まぁ、いつも通り、難しそうな話は退屈だからと言ってどっかに行ったんだろう。

気にせず、話を進めることにする。


「では、その箱は一体なんなんですか?」


「それはね…爆弾だよ!」


そう言って彼女は俺に箱を投げ渡してくる。

少し怖気ずいたが、落ち着いて受け止める。


「いやいや、からかわないで答えてくださいよ…本当は何なんですか?」


「んー…略奪の神かなぁ?なんであろうなぁ?実際見るけどよく分からんなぁ。」


(何を言っているのだ、この人は。)


「あの、略奪の神ってなんですか?強盗か何かですか?」


「あわ!あわわわわ!ごめん!なんでもない!」


(なんださっきから変なことばかり言って、まだ俺をからかっているのか?)


「で…結局、その箱は一体なんなんですか?」


「知〜らない!」


やはりか。

結局は知らないじゃないか。

ここまで来るともう慣れてくる。


「そうですか…」


「でも、私にとっては危険なものだって、それはわかるんだよ。」


ただの勘でよくもただの箱に身の危険を感じられるな、と彼女の想像力を逆に尊敬する。


「あー。信じてないな〜?」


「えぇ、まぁ。」


結局、彼女は弟が貰ってきた箱にビビって失踪した、ということなのか?今回の案件は。

だが、何故、何も根拠がないものをここまで信じられるのか、不思議だ。

それとも彼女がこんなことを言うのは他に重要な根拠となるものがあるのか?


だが、ここで俺は大事なことに気づく。


「あ、そういえばこの箱は過が貰ってきたと言いましたけど、誰からもらってきたんですか?この箱があなたにとって危ないものならその人が犯人ってことですよね?」


「あ〜。確かに!」


いや、逆に何故今まで気づかなかったのか。

今の反応でだいたい、答えは分かりきっているが一応質問する。


「で、その人のことは過から何か聞いてますか?」


「んー…そう言えばなんか言ってた気がするけど…なんだっけ?」


どうやら、過の方がもっと重要な情報を持っているのかもしれない。

だが、美來さんについてはこれ以上は当てになりそうにない。

最後に過に話を聞いて、もし気になることがあれば解決してこの案件は終わりにしよう。


「そうですか、じゃあこれ以上、用はないので失礼します。」


「え〜。もう帰っちゃうの?」


「はい。これから学校もありますし。くれぐれも失踪するなんてことはしないで下さいね。弟さんもきっと困りますし、能力を持っているからといってあなたの身が危険というのはきっとあなたの思い込みですから。」


そう言って俺は上着を着て部屋を出る。

玄関に向かっているとフォルティーナがリビングらしき所のソファで寝転がっているのが見えた。


「いや、何してんの?」


「えー。だってつまんなかったんだもん!」


「だからって人の家来て勝手にソファで寝んなよな。」


そう言って彼女を連れ出し、靴をはかせ、お邪魔しました、と言って玄関を出る。


すると、美來さんは最後に真面目な顔で、


「私はこういう人だから。忘れないでね。」


と、そう言って彼女は俺たちを見送った。


結局、この時間はなんだったんだろう。

今からならまだ授業には遅刻しないか…


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ