008 都市伝説研究部とかいう頭のおかしい部活
遅くなってすみません。リアルが超忙しくて執筆する時間がありませんでした。3月ぐらいには落ち着くと思います。ご迷惑お掛けします。
「部活?」
「ああ、クルス入ってなかったやろ?」
──部活、部活ねぇ。
「──部活!?」
「ド〇クエごっこか?」
部活って、青春じゃないか!!
飛躍し過ぎな思考だが、確かに青春を送る上で部活は欠かせない要素と言えるだろう。
「ふほっ、ふほほほ、ホーホホホホ」
嬉しすぎて私乙女になっちゃうわ、オホホ♡──はぁ、キモいな俺。
「どの部活に入るか決めてないんやったら、俺らの部活に来んか?」
「どんな部活なんだ?」
シンジが目を閉じて沈黙する。そして、胸に手を当て、背を反らしてドヤ顔を作った。
「都市伝説研究部やっ!」
「他を当たって下さい」
「即答!?」
逆になんでそんな誇らしそうに言ったの?マイナー過ぎるよ、青春のせの字もないよ。
「まあまあ、活動内容だけでも聞いてみんか?」
「名前で八十パーセント分かっちゃってるけどね」
「──ふっ、初めは皆そういうんや、やけどこの言葉を聞いた瞬間、全員同じように驚くんやで?」
いたずらっぽい笑みを浮かべてシンジは瞳を妖しく光らせる。
「──なんとこの部活、学校の七不思議まで研究しとるんや」
「予想通り過ぎて驚いたわ!!」
シンジはクルスの叫びなどまるで聞かずに畳み掛ける。
「それだけやないで、聞き込み調査から検証実験、果ては魔法まで駆使して謎を徹底的に解き明かすんや!」
「ちょっと面白そうだなこの野郎!」
ずずいっと前のめりになったシンジの熱弁に、クルスの興味が惹かれる。
「トイレの花子さんはただの山田君の便所飯やったけどな」
「山田くぅぅうううううん!!」
「山田君は便所飯愛好家なんや!」
「便所飯愛好家!?」
都市伝説研究部と、便所飯愛好家の山田君のイメージ像が頭の中でぐるぐると混ざり合う。
──ああ、どうする、憧れの魔法剣道部、都市伝説研究部、山田君、俺は、俺は······!
■■■
「ようこそ!都市伝説研究部へ!!」
──ああ、来てしまった。まあ見学だけだよ?別にアンタのためなんかじゃないんだからね、フンっ!
半透明の窓枠に、都市伝説研究部と書かれた貼り紙の着いた扉を開けるやいなや、シンジは振り返り芝居がかった動きで両手を広げた。
そう、クルスは誘惑に負けたのだ。
大きく息を吐きながら、廊下と部室の境界線を跨ぐ。
想像していたものよりずっと広い部屋だったのは、流石クルシーズ騎士学園と言ったところか。
見るからに呪わせてくださいオーラを放ちまくる品々が、所狭しと詰め込まれていてとんでもなく禍々しい──なんてことはなく、むしろオカルトチックな物品どころか、中央に一人佇む長机以外殆ど物が置かれていない。
「──ほう、君がシンジ君の言っていた転校生君か」
パイプ椅子に腰を下ろし、ぐでーっと長机に身を投げる小さな少女が、気だるげに顔をもたげていた。
「──迷子かな?」
「失礼なー、これでもあたしは二年生だぞー」
少女が半眼で唇を尖らせ、不満の意を唱える。
その仕草一つとっても子供っぽい。
クルスの懐疑の瞳を読み取ったのか、少女は項垂れたまま、スカスカの胸元をまさぐり、一枚のカードを取り出す。
生徒証明書と記入されたそのカードには、少女の顔写真の横に、〝リル・コルキー 二年B組五十一番〟という文字が見える。
やっべ合法ロリだ。KAWAII。
「これは大変失礼しました。それとありがとうございます」
「んー?何がー?まあいいけどね、子供と間違われるのなんてしょっちゅうだし」
と言いつつもリスのように膨らませた頬が、不機嫌さを露わにしていた。
やだ何この可愛い生き物。天使か?天使だな?天使だわ。
「──てか他の部員の方々は?」
クルスがぐるりと部室内を見回しても、自分とシンジ、そしてリルの気配しか感じない。
パイプ椅子もリルが現在座っているのと、あと二つ、それ以外は部屋の隅に畳まれて積み上がっている。
「ああ、言ってなかったか、この都市伝説研究部な、お前入れて四人しか部員おらへんねん」
「俺入れないで?入らないからね?その発言で揺れてた決意が確固たるものになったからね?」
「大丈夫や、もう入部届けは出しといたで!」
「何してくれてんの!?」
まさか先にこっちの退路を断ってくるとは──くっ、策士!
手で顔を覆い苦虫を噛み潰したような苦悶の表情を浮かべるクルス。
しかし、そこでふと我に返る。
「これ普通に先生に事情説明すればいけね?」
「それは止めて!」
シンジの素の叫びがこだました。