016 決闘 いやもう帰れない流れになっちゃったじゃん
会場の注目を釘付けにして出てきたスノウは、腰を深く折り、恭しく頭を下げる。
「クルス様、この一戦は私にお任せ下さい」
うん、ついでにその後の三戦もお願いします。
「あぁ、クルス様にバトンを繋げるなんて、これ以上ない幸せです」
頬を紅潮させ胸で手を組むスノウ。······やっぱフレイニーって凄いデカイな。
決して小さくはないスノウのものと、後方でうなされるフレイニーのものを交互に見比べてみる。
······いや何がとは言わないけど。
というか俺が帰るのを阻止して幸せとか、何?俺の事嫌いなの?まだ会って数週間だよね俺ら。
「──ま、待て!」
相変わらず元気な魔法研究部高笑い担当スキロット君だ。
「助っ人の参戦は事前に申請しないと認められていないぞ!」
そ、そーだそーだ!頑張れスキロット君!そして帰れスノウ!
ぶっちゃけびっくりするぐらいの正論を前にして尚、フレイニーは穏やかな笑みを崩さない。
なんだその顔は、おちょくってんのか!
「な、なんだその顔は、おちょくっているのか!」
スキロット君とシンクロした。これはもうマブダチと言っても過言ではないのではなかろうか。(※過言です)
「ええ、ですから私は助っ人ではありません」
じゃあ帰れ。
「私は──」
スノウの表情から笑顔が消え去り、何処までも真剣な顔つきに一変する。
腰ポケットをまさぐったかと思うと、一枚の紙を取り出した。
······どうでもいいけどフレイニーとかなら胸の谷間から出しそうだよね。しかも超ドヤ顔で。
スノウは四つ折りのそれを教養の高さを節々から滲ませながら開き、突き出してスキロットに見せつけた。
A4サイズの紙の上部には──
太字で『入部届け』の四文字が刻まれていた。
「私は、都市伝説研究部に入部致しましたので」
「「なん、だと──!?」」
シンクロ率100%!!
俺とスキロゲリオン初号機の相性はピッタリだ!
「「正気かお前!?」」
あの脳内カーニバル集団に進んで仲間入りするとか、狂っているとしか思えねえ!
スキロットも同じ気持ちなのか、俺同様驚愕と混乱に顔を歪めている。
「はい、クルス様のお傍が私の居場所ですから」
コイツは重症ですね。はーい、頭お医者さんに見てもらおうね〜。
スノウが歩き出す。
向かう先は戦場。
大切な人が見守ってくれている。
不安など、あろうはずが無い。ただ喜びに満ちている。
──やっと、貴方の役に立てるのですね。
花咲くような笑顔を輝かせ、彼女は可憐に戦場に足を踏み入れた。
「あの時の誓いを果たすため、〝雪姫〟スノウ・レイ・マスコッティ、参ります」
貴方の為に、最後にそう付け足した。
魔法研究部VS都市伝説研究部
七戦目
3-AノーマインVS1-Aスノウ・レイ・マスコッティ
開戦。