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011 ハイハイ負け犬の遠吠え











『遂にこのときがやって来ました!観客の皆さんも変わらない日常のスパイスとなってくれることを期待していることでしょう。研鑽の日々を剣に乗せ、想いと想いがぶつかり合う。オール・オア・ナッシング!勝者は全てを得、敗者は全てを失う。力のみがものを言う、血みどろの決闘の始まりです!!』


 巨大な円形の決闘場と、それを中心として千は入れる観客席が円周上に広がっている。

 放たれた放送部の力の篭もった実況に、観客達が熱気と歓声を轟かせた。

 でも流石にゆうしょ正しき名門校で血みどろは駄目だろう。


「うぉぉ、何か盛り上がってんなあ。オラわくわくすっぞ!」


 お店で玩具を眺める子供のように瞳を輝かせはしゃぎ倒すクルス。


「──フッ、本当にガキですわね、些か品位にかけるのでわなくて?」

「ハイハイ負け犬の遠吠え」

「──んな!?マグレで一回勝ったくらいで調子に乗らないで下さいさし!!」

「ハイハイ負け犬の遠吠え」

「ムキー!!」


 いやー、この言葉便利だなー。


 さて、ここらで決闘のルール説明をしておこう。


 試合形式は一対一を順々に繰り返していき、勝ち星の多いチームが勝利となる総当たり戦。──しかし、今回都市伝説研究部のメンバーは四人しかいないため、最低でも一人二戦。三戦する者もいなくてはならない。はい、鬼畜。

 決闘場に整備されている魔法陣により、たとえ選手が大怪我、死亡などの事態が引き起こっても、決闘後にはたちまち元通りの健康体に戻ることができる。出た、謎技術。

 その為武器の持ち込みは可。しかし武器等は全て自己負担だ。うわ、明らかな貴族贔屓。

 基本どんな攻撃も有りだ。たとえそれが相手を屠る程の威力だとしても。いや、ここ学校だよね?


 ······最早ダメだこの学園。バーサーカーしかいねぇ。──やっちゃえ、バーサーカー!


『──さあ、皆さん。上をご覧下さい!今回の対戦表が映し出さ、れ······て?』


 観客、選手共に闘技場中心上空に浮かび上がるホログラムを眺める。

 どの角度からでも視認できるよう、三つの画面が三角柱の形をしているソレを、全員が声も忘れて呆然と眺めていた。



3-Cマリギ・ポインド VS 1-Aフレイニー・デ・バラン

3-Bカマーク・パリィ VS 2-Bリル・コルキー

3-Bドン・トッキマー VS 1-Aシンジ

3-Bクナシ・マンド VS 1-Aフレイニー・デ・バラン

3-Bクリミナフ・トレイドル VS 2-Bリル・コルキー

3-Bパクロンピ・ポポランプ VS 1-Aシンジ

3-Aノーマイン VS 1-Aフレイニー・デ・バラン

3-Aロジーナ・フォン・スカイ VS 1-Aクルス

3-Aカザリア・ファイスト VS 1-Aクルス

3-Aスキロット・ヴァン・ウォリミア VS 1-Aクルス



 それもそのはず、圧倒的人数差と学年差が丸わかりなのだから。


 てか、いや、うん、俺の負担考えて?ラスト三戦押し付けないで?


「──アッハハハハハハハ!!」


 クルス達都市伝説研究部が控える入場ゲートとは反対側のゲートから響く高笑いが、クルスの耳を(つんざ)いた。

 呼応するように、観客席からも失笑やら嘲笑やらの入り交じった声が囁くように響いてくる。


「いけフレイニー、高笑い返しだ!」

「意味不明ですわ!?」


 ──くっ、お前から高笑いをとったら何が残るってんだよ。


「どうやらこの勝負貰ったようだね!」


 またも向こう側から声が飛んでくるが、フレイニーはお構い無しにクルスを睨みつける。


「今失礼なことを考えましたでしょう!?この高貴で崇高なわたくしに向かって!!」

「──え?うんまあ」

「あらあら、まだそのような態度ができますの?どうやら御自身の立場が理解出来ていないようで。まあ頭の足りない平民のことですから、致し方ないのかもしれないですわね」


 フレイニーがこれ以上ない嘲笑を浮かべて嫌味ったらしく罵る。

 クルスはこいつ人を嘲るとき異常なくらい生き生きしてんなぁと思いながら、唯一言零した。


「ハイハイ負け犬の遠吠え」


 フレイニーが未知の言語を発しながらクルスに飛びかかるのを、シンジが羽交い締めにして懸命に防ぐ。


 なるほど、いい胸だ。


 シンジに抑えられたまま荒れ狂うフレイニー。

 おかげで胸が元気にバウンドしていた。


「くくく、まあどうしてもというのなら許してあげてもいいけれど──どうする?」


 懲りずに話しかけてくる敵の男を蚊帳の外に、都市伝説研究部の面々はフレイニーの怒りを鎮めるのに躍起になっている。


「落ち着けやフレイニー!」

「そうだよ、喧嘩は良くないよー」

「器を大きく持てー、君の胸のように」


 噛みつかんばかりに暴れ回る。その光景はまるで幼児の癇癪のようだ。


 ──しかし、もう一人この場に憤怒に身体を震わせている男がいた。

 スキロット・ヴァン・ウォリミア、魔法研究部の部長にして、先日都市伝説研究部に訪れて勝手に勘違いして帰った人物だ。


「僕の話を聞けぇえええええええええええ!!!!」


 観客席を震わす程の大轟音に、騒いでいた都市伝説研究部も静まり返る。


「もう絶対に許さない!今更後悔しても遅いぞ、恨むんなら弱小部のくせに人気部の僕達を敬わなかった自分と、助っ人を一人も連れてこれなかった人望を恨むんだな!アッハハハハ!!」


 自分が絶対的優位に立っているとでも思っているのか、スキロットは大口を晒して笑っている。


 ──まあ明らかにあっちの方が優位だからね!······でも、聞き逃せない単語があったな。


「──助っ人?」


 クルスが首を傾げて呟く。


「助っ人ってありなんか?」


 シンジも疑問符を浮かべてリルに視線を向ける。

 フレイニーもまた同様にリルに答えを求めた。


「······そ、そんなのあったんだ。えへへ、知らなかったなぁ」




 えへへじゃねえよ······。














パクロンピ・ポポランプって名前が個人的にすげぇツボ

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