エピローグ、そして彼女のプロローグ
熱狂の夜は明けた。そして、数日が経った。
1月9日。
マリーは売り子を引退した。会長の不正、収賄などが一度に表ざたになったので、商会が倒産してしまったのだ。
もちろん、売り子の所属する商会はほかにもある。ベテランの彼女たちは、今頃別の紹介に移っている事だろう。しかし、彼女には売り子を続ける理由も、実力もない。
「…行ってきまーすっ」
マリーが向かう先は、ヤドリギ広場。目的地に到着すると、町長が満面の笑みで出迎えた。
「やあ、おはよう。今日もよろしく頼むよ」
マリーの新たなお仕事、それは、ヤドリギ広場の清掃と管理の仕事だった。町長が与えてくれた。彼女にとって思い出深い場所となったここで、働くことになったのだ。
箒で石畳の上の砂を払っていると、あの女性…カナが広場に入ってきた。
「また煮詰まってたから、今日もお散歩に来ちゃった」
「…ふふ、お仕事お疲れ様です。」
今ではすっかり仲のいい友達だ。
「…まさか、あの時花火があんな風にはじけるだなんて。もしかしたら、妖精さんが悪戯でも仕掛けたのかしら。」
あの日、花火は、彼女の予想もつかない色を放っていた。
天空に打ちあがった火の玉が、空の真ん中で弾け、マッチの炎がごとく赤く輝いた。そして、たくさんの光の筋となって、街に降り注いだのだ。
…そう。まるで、伝説にあるキールの星夜祭のように。
「伝説が本当に形になった気がしたわ。もしそうだとしたら…『星の欠片』…だっけ?を探さなきゃいけないけれどね」
「…そうですね…。あの時は、本当に驚きました…。」
マリーも、同じくあの夜の事を思い出す。
あの三つの夜を経て、マリーは、自分の中の何かが変わったような気がした。それが何なのかは分からないが、確かにあの時、運命の歯車がかみ合ったような気がしたのだ。
マリーはふと、あの時に、「星」に願ったことを思い出した。
「運命の人と、巡り逢えますように」
その願いを胸に秘め、彼女は今日も日々を生きていく。
三夜にわたる祝祭の物語は、終わりを告げた。
しかし、彼女の運命が進み始めたのは、この時だったのだ。
きっと、彼女の願いはかなうだろう。彼女が、思い続ける限り。彼女が、天使でいる限り。
【マリーが「運命の人」と出会うまで、あと一年】
…いかがだったでしょうか。
マリーの物語は、まだ終わりません。彼女の一年後の話は、また別の作品で描きますので!
お楽しみに♪