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黒髪のホワイトオーク

変態紳士さんが異世界に行った場合の全年齢版になります。(オリジナルはノクターンです)

18歳禁止の表現は不要だ!という硬派な方向けに修正しております。

よろしくお願いします。

 とある山の中腹にある洞窟を利用した建物に、ドカドカと音を立て複数の武装した者たちが入っていく。


 「・・・戻ったよ」


 赤髪をかき揚げ美しい顔を不敵に歪ませて、先頭の女性が口を開いた。


 「頭ァ! おかいりなせーやし!!」


 その建物―――アジトに入ってきた女性に向かい、留守を任せられた凶相の男が手放しで向かい入れた。


 「がはは! 今回は大量だぜえ!」


 「しばらく飯に困らねェくらいかっぱいできたぜェェ」


 「マジスかあ! こりゃ~今夜が楽しみだあ!!」


 次々に荷物を担ぎアジトに入る男たちが増えるたび、建物の中は活気づいていく。


 「今回は護衛の冒険者共がどえれえ数いたんだけどよ、また、お頭がすげえのよ! バッタバッタと倒していっちまってよ!」


 「そうよ! 俺らの出番がねェくらいだったわ!」


 テーブルに飛び乗った下っ端と思われる男が身振り手振りでそうはじめると、ガハハ!! と笑い声が沸き起こる。


 「しかも、ゲルガンもお頭がぶっ倒しちまってよ」


 「おいおい!? まさかゲルガンってあの冷鉄のゲルガンか?」


 「そうよ。あのゲルガンさ!」


 「マジかよ! 流石はベフィリアの姉御!! 敵なしだな!」


 口々に褒められるのに気を良くしてきたお頭と呼ばれた女傑ベフィリアは、帯刀した剣をスラリと抜き、高々と掲げる。

 冷たく光る刀身を持つ、片刃の剣だ。


 「見ろ。あの冷鉄のゲルガンの武器を奪ってきたぞ」


 「おおおお! これが噂の魔導剣<イクスランゲル>か!!」


 「うへ! 物理結界破壊のイクスランゲル!? 姉御、怪我は無かったんですかい!?」


 「フン。当たらなければどうって事はないよ。でも、コレをあたいが持てば最高だと思わないかい?」


 ぺろり。とイクスランゲルと呼ばれた剣を妖艶な仕草で舐めながらベフェリアは嗤う。その姿に触発されるように、間違いねぇ! と同意の声がそこかしこで上がった。


 「ところでデムジンはどうした?」


 ベフェリアが、いつもは居るはずの片腕と呼ぶべき男の姿が見えないので誰ともいわず問いかける。


 「デムジンさんは十名ほど引き連れて狩りに出ましたぜ。そろそろ帰る頃だとは思いますが」


 狩り。とは彼らの間では隠語で、金持ちや護衛の薄い商人の旅人の情報を他の町の情報屋から仕入れ、それを襲う事を言う。

 ベフェリアは働き者め。と心の中で悪態をつきつつ、早く今回の成果を自慢してやりたいと堪えきれない自尊心を踊らせた。


 ドンッ!!


 そんな戦勝ムードのアジトに、不釣り合いの人影が飛び込んできた。


 「ヒギィ!! ・・・み、みんな助けてくれェェ!!」


 その男は全身ボロボロで、転がるようにアジトに入ると同時に喚き叫んだ。よく見るとデムジンの腰巾着だった男、マディガだ。


 「デ、デムジンさんがやられた・・・他の奴らも・・・」


 「なっ!? デムジンが?」


 頭目のベフェリアには敵わないまでも、強力な『天恵』の所有者だったデムジンが倒されたというにわかに信じ難い一報は、一瞬にして怒りに変換された。


 「どこのどいつだ・・・っ!!」


 ギリリ。と魔導剣イクスランゲルを堅く握り、ベフェリアが怨嗟の籠もった眼差しをマディガに向けた。その殺意に似た眼光を直接受けたマディガは更に竦みあがり、声を震わせる。


 「名前は知らねェ! 情報からだと無名な筈だ! く、黒髪の白豚・・・いや、オークみたいな男だ!! 十人以上で囲んだこっちの攻撃がまったく利かない上に、こっちの防御を全部すり抜けてきやがる!!」


 「っ!? 相手は一人って事か!?!?」


 「・・ぁ・・・ぁぁ・・・・・」


 恐怖に震えるマディガに問いただすが、それ以上の返事が返ってこない。何故か一定の場所を睨んだまま硬直している。その視線を追い、たどり着いたのはアジトの入り口だった。


 「コフー・・・。ここでプか。ぽくを襲った悪い奴の溜まり場は」


 ぬらり。とした声と、肥満特有の息苦しい呼吸音が静まり返った部屋に木霊する。

 それと同時に、ぬっと縦にも横にも巨体な男がアジトに踏み込んでくる。

 黒髪。白い肌。豚のように太った体。それを人として体現するとこうなる。といった風貌の男だ。


 「で、デムジンさん!!!」


 族の仲間の誰かとは分からないが、その黒髪のオークの背中に鼻フックで担がれている人ともおぼしき塊を指さし、叫ぶ。

 見ると、確かにデムジンだった。ベフェリアの片腕。絶炎のデムジンだった。


 「で、デムジンっ!! 貴様ぁ!! その手を離せえええ!!」


 手下の数人が同時に叫び、黒髪のオークに向かい襲いかかる。


 「さて、だれでプか? ここの親玉は。教えないと思いつく限りの事をしまプよ?」


 そして会話が成立しないまま、黒髪の白いオークと呼ばれた男(実は主人公)と近隣最強を称する盗賊団<ギール・エバイル>の戦いが切って落とされた。

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