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新聞部員は心霊神社にて  作者: 蓮根 実
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真夏の日射し

第1章 夏の暑さとインドア派


高校二年生十七歳の夏の日のこと。

新聞部男子三名、僕 ヘタレ新聞部員"上坂 樹"とゴリラっぽい新聞部員"近藤 剛士"とにかく神ってる新聞部員"神城 夏目"は僕の叔母"瀬戸 里佳子"同伴のもと「神原高校新聞八月号、真夏の心霊特集!」のネタを探していた。


雲ひとつない空のした

ミーン……ミーン……と遠くで蝉がせわしなく鳴いている。遠くの坂の上には陽炎が微かに揺れる。

「そーれにしてもあっついわねーもう、やんなっちゃう!もうそろそろ体にキノコ生えるわね……」


「そうですね、今日の気温は確か今年の最高気温を上回るそうですよ。」

神城は涼しげに合図ちを打つ


叔母はぶつくさと愚痴をいいながらおんまゆギリギリに切り揃えられた前髪をかき上げ、パタパタと弱々しい風をおでこに送っている。


「……叔母さん、もう少し声のボリューム下げてくださいって……それに本当にこんなところに心霊スポットなんてあるんですか?」



僕はタオルで汗をぬぐい少し傾いた眼鏡を元の位置に戻した。


「うるっさいわねー、歩いてればそのうち着くわよ、あんた、少しアタシを信じなさすぎ!」


里佳子叔母さんは僕の耳を容赦なくギュッと引っ張った


「イタタタタッ!や、やめてくださいよ~」

「おぅ、お前んちの叔母さんおっかねぇな~。」


剛士はニヤニヤと薄笑いで僕をからかう


「ほらっ行くよ!シャキッとしなさい。」



叔母は茶色がかったさらさらのボブヘアーをひるがえしハイヒールをコツコツと鳴らし歩く


今日は僕らの住む京都は夏の蒸し暑さがピークの日だった。日本特有の湿気の中、僕と叔母は取材にきたのだが、それらしき看板も建物も見つからず…………かれこれ二,三時間歩き続けている。現在三時二十八分。

周りは木々が生い茂る林が多くなり民家すら見当たらなくなった。少々気味が悪い


僕は今、叔母と二人で来てしまったことに猛烈に後悔している……。叔母は大のド方向音痴なのだ。噂の場所も詳細は定かではなくまさに伝説。


ちなみに叔母と僕はそこまで年は六歳ほどしか離れていない。叔母は色気のある美人なのだが……話すと口が悪くめんどくさがり屋、最近カレシに振られたらしい。口調に少し棘があるのが、その証拠だ。


「ちょっと、ボケーッとしてないで少しはあんたらも探しなさいよ!……ってちょっと樹、顔赤いわよ、大丈夫?」


「…………大丈夫です、さっき水飲みましたし。」


叔母を心配させまいと笑ってはみたものの

正直少し足元がフラついている、それにさっきと言っても水を飲んだのは三時間前…………もう僕の水筒はとっくにスッカラカン。

「……はぁ」

さらに生まれてからずっとインドア派の僕の身体はエアコンなしでは生きられない……だから夏の暑さに抵抗力が全くないのだ。


……くそぅ、夏の暑さを甘く見てた…………


「あ……っ」

そんなことを考えていたら突然足元がフワッと浮いた感触がした。


「………………樹?」

「おい、樹!」

「どうした?」


体がぐらつき視界が暗くなり始めた……


「樹!……樹!?ねぇ大丈夫?いつきーーー?」

「おい!?しっかりしろ!」


三人はしきりに何かをいっているのだが全く聞こえない


もう夜なのだろうか、空の色は真っ暗だった



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

第2章 美女降臨!



カナカナカナ…………蝉の声が遠くから響いてくる

「……知らない天井だ…………」

気がつくと僕は布団上に寝転んでいた、あれからどのくらいの時間がたったのだろう。どうやら気を失っていたらしい。

先程のフワフワとした浮遊感はなく頭ははっきりとしている。


突然、頭上に見知らぬイケメンの顔がぬんと現れた。

「…………ぅうわぁっ!こ、ここここの人誰!?

なんかイケメンがめっちゃガン見してくるんですけど‼」

僕は心のなかで叫んだ

悲鳴も出せずに固まっていると、イケメンは安堵の表情を浮かべ

「おーい、里佳子さん、夏目くん、剛士くん!樹くん目覚めましたよ!」

と叔母の名前を呼んだ

バタバタと叔母さんらが駆け寄ってくる

「樹、良かった気がついて。」

「心配させんなよー!心臓に悪いじゃねぇか」

「もーーーーっ樹!……ホントに良かった~。……もう、心配したじゃない!いきなりバターンって倒れちゃったんだもの……体調悪かったらすぐにいってくれれば良かったのに……もう目を覚まさないかと思ったでしょ……!グスッ」


涙目だった叔母はついに泣き出してしまった、隣の見知らぬイケメンが叔母にハンカチを渡す。


「まぁ、でも良かった。大事に至らなくて、君が倒れているのを見たら肝が冷えたよ」


どうやら叔母と同い年くらいのイケメンは僕を助けてくれたらしい

「助けていただいてありがとうございます。あなたは……?」


「!あぁ、すまない自己紹介が遅れたね。私は篠宮神社の陰陽師 篠宮 匠 〈シノミヤ タクミ〉よろしく!」


「……は、はぁ。」


陰陽師………?頭の整理がつかないのだが……


僕は差し出された手をつかむと上下に激しく振られた、見た目はひょろいのに凄い腕力だ


「あ、助けていただいて本当にありがとうございました……」


「いいのいいの、堅苦しくしなくても」



僕が凄まじい腕力に圧倒されていると、ふいにふすまの向こうから声がした。

「兄様、入ってよろしいでしょうか?」

「あぁ、入って入って!」


僕はその場から動けなくなった

ふすまの奥にいた声の持ち主の姿に驚いたからだ


入ってきたのは巫女の姿の美しい女性、歳は僕と同じくらいだろうか?前髪はパッツン、艶々とした黒い後ろ髪は三つ編みの一本で赤い紐で結わえられ、くりくりとしたガラス玉のような瞳、まつげは一本一本が美しく輝き、唇は朱色で染められ純白の肌に映える。結論で言うと「絶世の美女」だそれしかない。まさにタイプ!

ドストライクーーーーーーッ!!


美しい女性はこちらにお辞儀をして

「わたくしは篠宮神社巫女 篠宮 弥生〈シノミヤ ヤヨイ〉です。以後、お見知りおきを。」


「…………あ、……どうも」


しまった、美しさに見とれすぎてしっかりした挨拶が出来なかった……!


驚いたことに弥生さんの声には感情がない。眉がピクリとも動かない、美しい顔は完全なる無表情。


「お客様体調が回復され、たいへん喜ばしく思います。今、お帰りの支度を…………」


「弥生、もうこんな時間だ、お客様をお返しするのはとても危険すぎる。今日はここに泊まってもらおう、樹君もまだ顔色が悪い。」


現在八時十二分


しばしの間、美女は顎に手をあて考えた後、

「…………分かりました、ただいまご支度をしますのでしばらくお待ちを……夕食の準備はできております、兄様のように頭が回らず誠に申し訳ございません、では、後程。」


ピシャリとふすまが閉じられた


「……すまないね、あのこは私の妹なんだ。あまり人に慣れていないせいか緊張していたみたいだ。」


叔母は気にしていないようすで


「いえいえ、お気になさらず。とてもかわいい妹さんですね!お年はおいくつで?」


「…あ………あぁ、今年でたしか……25歳になると」

「…………へ?」

15歳と聞き間違えたのだろうか、

「……25歳になりますね」

「……え、ええええええーーー!?」


あきらかに見た目は十代なのにまさかの年上!?


叔母はそれほど気にしていないらしい、というか匠さんにメロメロで話を聞いていない。


驚いて呆然としている僕を気にせず二人は立ち上がり

「さ、里佳子さん、夏目くん、剛士くん、樹くんそろそろ夕食にいたしましょう」


「ええ、そうしましょう!匠さん。…………三人とも、早くしないと置いていくわよ~」


「あぁ、はい!」



僕は自分の頬をぱちんっと叩き一階に移動した。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

第3章 ほかほかご飯


一階に降りると可愛らしい割烹着に身を包んだ弥生さんが

「お待ちしておりました」と頭を下げた



食卓にはふっくらと炊き上がった白米、山菜のごま和え、鮮やかな赤色の焼き鮭、鰹節が踊る揚げ豆腐に豆腐の味噌汁がきれいに盛り付けられていた。


弥生さんは麦茶をグラスに注いでくれた、喉がカラカラだったのでキンキンに冷えた麦茶をイッキ飲みした。

喉に冷たい麦茶が滝のように流れ込み内臓を優しく冷やしてくれたのだが……

案の定、頭がキーンとして涙目になる…マジで痛い

二十一歳にもなった大の男が冷たい麦茶をイッキ飲みして涙目になっている

それを見て叔母と匠さん、剛士、夏目がぷっと吹き出した


「樹ったら、もう小学生じゃないんだからお行儀悪いわよ……クスっ」


「相変わらずだな、樹は」


「大丈夫か?樹」


「いやでも良かったよ、樹君が元気になってくれて。…………フッ」


「………………みんな……っ」


こっちは本当にキーンとしているのに……!


「それじゃあ、手を合わせていただきます。」

「いただきます」


とてもお腹が空いていたので急いでご飯を口に運ぶ


鰹節の踊る揚げ豆腐は熱々で甘味がほんのりと口に広がり幸福感に包まれた

「~~~っ!」

艶やかな白米はほかほかで噛むごとに甘みが増す

「~~~~~!!」

山菜のごま和えはほどよく山菜がしんなりして深みのある味とゴマの風味が鼻腔を通り抜けた

「~~~~~~~~!!!」

鮮やかな赤色の焼き鮭はほどよく塩気を持ち

鮭の身はふっくらと焼き上がっていた

「~~~~~~~~~~!!!!」

豆腐の味噌汁は味噌の量はちょうどよくつるんとした豆腐が喉を滑り落ちた

「~~~~~~~~~~~~!!!!!!」


「……少しお静かに……」

しまった、美女のつくるご飯が美味しすぎてはしゃぎすぎてしまった、小学生かよ!恥ずかしい‼


しかし、あの美女が五人分のご飯を作るのは大変だっただろう。後で手伝いでもしなければ


「みんな食べ終わったかな、それじゃあ、手を合わせてごちそうさまでした。」


「ごちそうさまでした」


何年ぶりだろうか、誰かと食卓を囲み共にご飯を食べ楽しいと思えたのは……


後片付けは弥生さんを手伝うことにした、これ以上世話をされっぱなしでは申し訳ない


叔母さんはお風呂掃除を手伝うらしい、剛士と夏目は寝床の準備だ


僕と弥生さんは皿洗いをしている

「………………」

無言と無表情のまま時間は過ぎていく

「………………………………」

き、気まずい

「……あ、あの弥生さん」

「……はい、なんでしょう?お客様」

「あ、お客様って呼ばなくていいから、樹とかでいいよ。あと敬語とかも使わなくていいよ」

「……承知しました、では、樹君と呼ばせていただきます。」

あ、敬語はそのままだ…………

「……その、弥生さん料理すごくうまいね、誰から教わったの?」

「……母様から教わりました。」


「そ、そうなんだ…!あんなに美味しいご飯を作れるなんて羨ましいよ!お嫁さんに欲しいな~……なんつって……」


ガチャン


「………………へ……?」


「……………………………………。」


弥生さんが皿を落としたのだ、とがった破片で手を切ったたらしく血が流れている。弥生さんは動かない


「し、止血して手当てしないと!」

僕は一旦皿洗いを中断した。

幸い傷は浅かったらしくすぐに血は止まった

消毒薬で傷口を消毒し、傷薬を塗り絆創膏をはる


「はい、これでOK!弥生さんは休んでて、あとは僕がやるから」

「……はい、有難う御座います………………」


弥生さんはうつむいたままである、何かまずいことを話してしまったのだろうか?


「樹君…………。」


「あなたは私と関わらない方がいいですよ……。」


「…………え?」


「……みんな私と関わると不幸になるんです……だって私は…………疫病神……ですから。」


うつむく彼女、どんな表情なのか分からない。僕はそんな彼女を見ていることしか出来なかった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

第四章 こおにのおねーちゃ


疫病神……ですから。

僕の頭のなかには弥生さんが言った言葉がリフレインしていた。なんだかモヤモヤする。


叔母さんはたぶんお風呂だろう、とても静かだ。

チリン………………

闇のなかに鈴の音が響く

「トタタタタッ……」

「!?」

軽快な足音だけが樹の回りを駆ける

「タタタッ…………シクシクグスッ……シクシクッ」


「だ、誰だ……?」

ふいにトスンッと何かに抱きつかれた、それは、小さな子供だった。子供は着物を着ておかっぱ頭

「……こおにのおねーちゃかわいそう、ずっとずーっとくるしんでる、たすけて……!…………ねぇ、おにーちゃ、おねーちゃたすけてくれる?」


「…………う、うん……?」

おかっぱ頭の子供の圧力に押され口が勝手に動く

おかっぱ頭の子供は嬉しそうに飛び跳ね、笑う


「やったぁ、おにーちゃありがとう!やくそくね!ゆびきりげんまんしよ!」



強引に手を掴まれ小指と小指を絡ませて子供は言った


「……ゆびきりげんまんウソついたらはりせんぼんのーますゆびきった!………」


少女は首だけをくるりと回し


「やくそく……だよ?」


と、静かに言った



少女らしきものはだんだん霞んで見えなくなった


こおにのおねーちゃ……?くるしんでるのを助ける?全く意味が分からない…………暑さにやられて幻覚でも見たのかな?


ふいにちらりと小指を見る、残念ながらあれは夢でも妄想でもなかったようだ。



小指には何かが巻き付いたような黒い痣が残っていた……














ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



















































読んでくださりありがとうございました!続きます!

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