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Something story  作者: 宇宙鮪
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scene6 雑念と剣

光無き真夜中、サムは目を覚ました。壁伝いに歩いて扉を触り、部屋を出る。フラフラと階段を上がった所でこう呟いた。


「トイレ行きてえ……」


暗闇を彷徨い、家の中を歩き回る。そしてある扉を見つけた。彼は当然のように躊躇いなく開ける。足を踏み入れると天井の水晶が光り、その部屋を照らす。信じがたいモノがそこにあった。


「マジでトイレ……!?」


それは紛れもなく現代の洋式トイレ。陶器で作られた便器とタンクに、木製の便座、ご丁寧に紙の入った箱まで用意されており、異質極まりない光景だ。


「嘘だろオイ……まぁ助かるけどさ」


サムは普通に用を足し、水を流そうとレバーを引いた。するとタンクや便器に紫に光る謎の模様が浮かび上がり、黒い液体のような何かが便器の中を洗浄していった。何かが流れ去ると模様は消える。


「なっ……訳が分からねぇ」


予想外に予想外を重ねられて、困惑しながら後にする。水晶の明かりは部屋を出ると自動で消灯した。

サムは地下室に戻り、適当にベッドを選んで横になる。洋式トイレという明らかに不自然な形状の概念はどこから出てきたのか、教えられたなら誰が教えたのか、便器に浮かび上がった模様と黒い液体は何なのか、くだらない事だが考え出すと止まらない。

考えている内に寝ていたのだろうか、サムが気がついた時には明かりが付いていた、この部屋には自分しかいない。


「……もう朝か、地下だからよく分かんねーな」


水晶に触れて明かりを消し、1階のダイニングに向かう。窓から見える空は青く、ルナとヴァイティーは既にそこにいた。


「おはようサム君」

「遅かったね、何してたの?」

「俺はずっと寝てたが……」

「えっ……じゃあアレは、寝言?」


2人が座っているので、サムも席につく。朝食は用意されていなかった。


「俺が何か言ってたのか」

「うん、確か『何言ってんだ、お前が誰かも分からないのに信じられるか』って」

「夢の中で誰かと話していたのかな」

「そんな夢を見た記憶は全くない……不気味だな」


不可解な出来事だが、まだ重要ではない。3人は訳の分からない寝言よりも明確な目標を優先した。


「とりあえずサム君の寝言については置いておこう。まずはこの町を解放するための準備からかな」

「解放……よく考えてなかったが、つまり町にいるFOCを全員倒すって事なのか」

「あっちはかなりの数がいますよね、3人で戦えるんですか?」


質問に対し、ヴァイティーはテーブルに紙の巻物を広げる。描かれているのはこの町の地図だ。


「この袋小路に誘い込んで戦うんだ。そうすれば一度に相手取る数を減らせるし、攻められる方向も分かって奇襲されない」

「だが逃げ場もないぞ。避けられない攻撃を仕掛けられたら3人まとめてやられちまうし、一網打尽にできる魔法だってそう撃てる訳じゃない」

「ふむ……」


別の作戦を考え始める3人。しばらく沈黙の時間が続いた後、会話を再開したのはルナだった。


「逆に、町を駆け回って少しずつ倒していくのはどうですか?」

「なるほど。逃げながら戦えるから相手の戦力も散らせるし、隠れて奇襲や待ち伏せもできるね」

「ゲリラ戦術ってやつだな。しかし俺はどうすっか、派手な魔法で戦うのは作戦に合わない」

「そんな時のためにね、ちょっとだけ用意があるんだ」


ヴァイティーは地図をしまい、席を立って地下に向かって行く、2人もそれを追って地下室に入った。

相変わらず雑に並んでいるベッドの間に、起きた時には無かった扉がある。


「こんな所にドアなんてあったか?」

「隠し扉ね、この先にいるんじゃない?」


躊躇いもなく隠し部屋に入って行ったルナに続いて、サムも足を踏み入れた。

ベッドのある部屋と同じような灰色の床や天井、中央に大きめのテーブルが置かれている。壁際には剣や槍などの武器が並んでいた。


「これは確かに隠さないと大変……」

「基本的な武器は一通りあると思うから、好きなのを選んで使うといいよ」

「そうだな、じゃあ……」


サムは立て掛けてあった弓を持った。木や動物の革を組み合わせた複合弓だ。壁に向かって構え、弦を引いてイメージしてみた後、元の場所に戻す。


「狙える自信が無い……近接武器にしとこう」


次に1振りの剣を手に取って鞘から抜く。柳葉刀やカットラスに似ている、幅広で斬る事に特化した片手剣。その銀色に輝く刀身をしばらく眺めた後、軽く素振りしてみた。


「コレは丁度良い重さだな、使いやすそうだ」


鞘をベルトに装着し、そこに剣を納める。その後もいくつか武器を手に取ったが、元に戻して2人を見た。


「得物は決まった」

「よし、じゃあ行こうか」


3人は階段を上がり、1階に着く。

そしてサムが玄関の扉を素早く開け放ち、町へと繰り出して行った。

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