scene5 レジスタンス
サムが目を覚ました時、ルナともう1人、女性が顔を覗いていた。
「サム!」
「気がついたかい?」
サムは起き上がって女性を見る、ルナよりも年上だろうか。
女性は白い髪で、揉み上げと前髪の一部が黒く変色している。服は七分袖のワンピースで少し濃い空色、腰にベルトを巻き、ワンショルダーのバッグを背負っている。ベルトには鍔から先の刃となる部分が無い不思議な剣が提げられていた。
さらに辺りを見回す。灰色の壁と床、雑に並べられたベッド、小さなテーブルに置かれた水晶が部屋を白く照らしている。窓が無いので、ここは地下室だろうか。
「ルナ……と、アンタが助けてくれたのか」
「そうだよ。私はヴァイティー、そしてここは私の隠れ家」
「ヴァイティーか、よろしく。俺はサムだ」
「こちらこそよろしくね」
ヴァイティーは握手を求めてきた。それに応じたサムは、そのまま手を引っ張られてベッドから降りる。
「ルナちゃんから話は聞いたよ。FOCのボスに喧嘩を売って、とんでもない目にあったって」
「俺のせいでルナを巻き込んじまった」
「いいのよサム。何度も死の世界を見せつけられて、死ぬのが怖くなったけどね、強くなれば死なないんだから平気よ!」
「俺もルナを守れるくらい強くならなきゃな」
「いいねぇ、お姉さんそういうの好きだよ」
「なっ、そういう意味じゃないぞ!?」
「んー?サム君は何を考えてるのかな?」
「……!!」
「あはは!からかうのはこの辺にして、夕飯にでもしようか」
そう言ってヴァイティーは2人を部屋から出し、水晶に触って光を消し自分も退室する。そのまま2人は1階の部屋に案内された。
そこは壁と床が白く、少し大きなテーブルと4つの椅子、奥にキッチンがあるダイニングルームだ。
「座ってて、あんまり良いのは出せないけど」
「食べ物を頂けるだけでもありがたいです」
2人は隣同士の席につく。ふとサムが窓を見ると、外はオレンジ色に染まり、1日の終わりを告げようとしていた。
「もうこんな時間か……」
「そうね、お昼に食べてないからお腹ペコペコよ」
「町に着いたら食べようかと思ってたが……あー!戦うんじゃなかった!」
「過ぎた事だし仕方ないよ、次から気をつけよ?」
「そうだな、もっとよく考えねーと」
話している内にテーブルの中心に料理が置かれた。スライスされたバゲットにハムやトマト、チーズ等を乗せてオーブンで焼いたものだ。
「出来たよ」
「美味しそうですね!」
「結構まともなもんだな」
ヴァイティーが椅子に座り、横にバッグを置く。
「それじゃあ、食べようか」
「はーい」
「いただきます」
サムは手を合わせて挨拶した後、ひとつ手に取って口にした。カリカリのバゲットにハムとチーズの味が染み込んで、トマトの酸味がアクセントになっている。
「なんか色々足りないピザみたいな味だな」
「ピッツァねぇ、確かに具は同じかもね」
「私は食べた事が無いのですが、ピッツァはこんな味なんですね」
「コレよりもっと美味しいよ、いつかみんなで食べたいね」
他愛もない話をしながら料理を全て食べ終わった。サムはごちそうさまと呟くように言い、ヴァイティーがキッチンで皿を洗い始める。
「……そういや、椅子が4つあるって事は他に誰かいるのか」
「いないよ。私がこの町に来たのも最近でね、空いてた家を貰ってそのまま使ってるだけさ」
「その話は聞いてませんでした、引っ越す前はどこにいたんですか?」
「王都セイリンだよ。レジスタンスという組織を作ってFOCに抵抗したんだけど、撤退せざるを得なくなってみんなバラバラになった」
「本当に世界征服されてるの……」
洗った皿を拭いて、食器棚に入れる。夕飯の片付けが終わった所でヴァイティーは話を続けた。
「私は散らばった仲間を探してレジスタンスを再結成したい。そしてFOCからセイリンを、この世界を取り戻す」
「FOCを倒したいのは俺も同じだ、レジスタンスに入って協力するぜ」
「私もレジスタンスに入ります!アイツに仕返ししてやるわっ!」
「やっぱり敵の敵は味方で間違い無かったようだね、改めてよろしく頼むよ」
「おう!早速レジスタンスとしてぶっ潰しに行きたい所だが、今動くと町をうろついてる奴に怪しまれるかもしれないな」
「そうだね、今日はもう寝よう」
「また地下室のベッドを使わせてもらいますね、おやすみなさーい」
ルナが階段を降りて行く。サムも続いて地下室に入り、手探りで適当なベッドを選んで寝転がった。