scene1 それは、何かの物語
「掟破りの逆神頼み!」
「俺は神様じゃないけどね」
真っ白な部屋の中心に存在する泉、
その泉の傍らに、少年と男が向かい合って座っている。
男の容姿は空色の頭髪に日焼けした肌、そして青いアロハシャツとベージュの短パン。このような姿でも少年が生前暮らしていた世界、現実世界の神だ。
少年は現実世界で死亡し、あの世に向かう途中で神に呼ばれここにいる。
「で、神様が死人に何の用ですか」
「異世界に転生して、悪を倒してくれ!」
神は両手を合わせて頼み込むが、突拍子もない話を聞いた少年は困惑してしまう。
「……詳しく教えてください」
「悪の軍団が異世界を征服した。さらに奴らは直接排除を試みた異世界の女神を封印したんだ。神である私が直接手を下すと女神と同じ目に逢う可能性が高い、でも女神が封印されているから放っておくのもダメだ」
話を聞いた少年は事を理解した。
干渉が困難な神のため、異世界を解放して女神の封印を解くのが少年の役目であると。
「そこで俺か。なるほど、転生なら神様の干渉が間接的だから封印を回避できる」
「その通り!引き受けてくれるかな?」
「ああ、だがその前に」
二言目をいう間もなく、少年は泉に投げ入れられた。