第5回 「ソナタ=永遠」
第5回 「ソナタ=永遠」
日常は脆く、簡単に壊れてしまう。
それは一瞬にして、そこから消えてしまった。
最近、眠くなる事がなくなった。
寝てる事は寝てる、だけどそれを体で感じて、横になる事はなかった。
自然に意識が深い海に沈み、起きるとまるで死から生還したような。
そんな気分だ。
ここに来て、俺も鬱になったのかな?
明日は休日で、今日は金曜日だ。華の金曜日とは良く言ったものだ。
俺が一番好きな曜日は、水曜日だ。
水という響きもいいし、なにより妙に落ち着く曜日なんだ。
学校に行こうか、休もうか・・・。
これほどに、迷う事はあまりない。俺はこれからの事を考える。
このままでいいのか?
駄目だ。もちろん、それは駄目だ。
だからと言って、何が出来る訳でもない。
俺は惨めなものだ。脆く弱く、力を使おうとしなかった。
情けない。俺なんて、ただの馬鹿だ。
いじめに負けて、いじめられているんだ。
人生の分岐路。それは今なのかもしれない、違っていても。
俺はここから、変われるのか?
俺はいつの日も、ここにいる。
錆びれた屋上。学校の敷地内に在って、綺麗とは冗談でも言えない。
まるで、俺の心を映し出したようなそれは、俺に安息と孤独を与えていた。
誰も来ない。それが唯一の救いで、何より嬉しい。
俺は日常から、遠く離れた非日常にいる。
教室に俺の机があっても、そこに俺の居場所はない。
卑猥中傷の落書きだらけの机は、あいつらにとってのストレスの吐き出し口らしい。
いい迷惑だ。別に、そこに座って勉強する気なんてさらさらない。
席替えで、窓際の一番奥になった席は、先生が現実逃避の為にした事だろう。
いじめを認めれば、学校の問題になる。
元々真面目じゃなかった俺だ。学校側の対応なんて、見え透いている。
「お前が悪いんだ。」と真正面から言わなくても、面倒な奴だと言われている気分だ。
だからこそ、俺にとっての敵であって、一生許す事なんてないんだろう。
「負けへんぞ・・・・・・。」
強く胸に誓った。復讐ではなく、仕返しだ。
もうグダグダ言うのは止めよう。一人で考えるのも、全部止めだ。
確かに俺は、人生の分岐路に立ち「やり直し」の道を選んだ。
何があっても、もう俺は引き返さない。そして、全てにサヨナラだ。