表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
空蝉の静寂  作者: anather R
4/5

第4回 「その先の自分」

第4回 「その先の自分」


桂木 竜。この世界に唯一無二であって、それが俺だ。


イジメは何故、俺を標的にしたんだろうか?

もうそれすらが、どうでも良くなってきた・・・。


たまたま、や。めぐり合わせ、自分の所為。

人はどうして、順位をつけなければ生きれないのか?

勝手な判断で勝手に結論付けて、俺はいじめられた。


いじめる奴の気持ちなんて、分かりたくもない。

そいつ一人に、何かされるなら・・・。それはまだ、俺の理解の範疇だ。


ただ、こいつらは集団で俺を殴り、集団で俺を省いた。


一人じゃ何も出来ない。それで、集団で俺を・・・。

だから、俺はこいつらに殺意を抱き、それがストレスに変わった。

憂鬱と言うべきか。それは空蝉のような、孤独を背負って回り続けた。


はるか前の話。俺がいじめられる前・・・。


東 駿佑、米田 慶吾、渡部 礼二、佐東 大樹、戸田 義夫、黒木 恭平。

元友達。5年以上の付き合いも、1日で・・・いや刹那の時間で幕を下ろした。


力で抑える分には、簡単なんだろうな。でも、それで解決する程、小さな傷でもなかった。

あいつら以上に、慣れ親しんだ空手。

怒りに身をまかせ、殴れば良かっただろうか?


後悔はない。復讐なんて、カッコイイ響きもない。


今の俺が、そうやって感じるか?

脱力感に包まれ、拳を地面に叩きつける。それしか、出来なかった。


一人孤独に考える程、闇に呑まれていく。


俺は気分を変える為、答えを見つける為に、道場に向かった。

俺が5歳の頃から通った道場。空手は中学に上がる時に止めた。


道場の前まで来ると、志気のある声が室外に漏れている。

考えてみれば、中学生になったと共に、俺は様々なものを失った。

道場の戸を開ける。かつての面影も少しあったが、ほとんどが変わってしまった。

だが、師範だけは相変わらずだった。


見た目の印象は、まさに優男だ。でもその拳の重さ、俺は知っている。


「やぁ。竜君じゃないか・・・。」

この人は、大阪の人間じゃない。確か関東出身と言っていた。


「・・・久々に、稽古お願いします!」


原点に戻ってみた。そこに、何かあるかと思ったから。

1時間程、体を動かした。昔みたいに、機敏な動きは出来なかった。

この道場は基本自由で、従来の空手でもスポーツ空手でも、関係無かった。


俺はステップが苦手で、腰に重心を置き重い突きを繰り出す、従来の空手を選考していた。

師範も俺と同じタイプで、ほとんどの稽古が俺と師範、と2、3人でやっていた。


久しぶりの道着は、新鮮そのものだ。

流れる汗もそのままに、俺はミットにひたすら打ち込んだ。

すぐに息が切れた。3年のブランク、大きいようだ。


稽古を終え、汗を拭いていると、師範から声を掛けられた。


「どうだい?久しぶりに試合でも・・。」

この笑顔は、お気に入りの新人でもいるんだろうか?

「いいっすね。やりましょ。」


対峙した瞬間、それは明らかな形となって、俺を押し付けた。

威圧感。その一言だ。


「最初に突きでも蹴りでも、決めた方が勝ちだ。」


そう言った瞬間、師範はすごいスピードで、俺の懐に入ってきた。

深い姿勢から、正拳突きが繰り出された。

まぁ、慣れたものだ。ここで防御に移れば、負けてしまう。


俺は左手で受け流し、有無を言わさず拳を突き立てる。

当たった。そう思った瞬間だった。


「残念。」


俺の足に、力の篭っていない蹴りを喰らった。

チョン、と。カッコ悪い擬音が似合うぐらいだ。


「・・・はぁ、負けました。」


俺の突きは見事に防御され、道着にさえ掠っていなかった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ