第1回 「今の自分」
第1回 「今の自分」
生きている事に価値がいるのか?生きている事に意味がいるのか?
人は「少し違う」ただ、それだけで人を傷つける。
俺の場合はこうだ。「髪の色が違う」たった、それだけだ。
醜いものだ。今俺を囲んでいる6人の鬼は、一人の俺に集団で殴りつけてくる。
殴られるのが痛い、とか蹴られるのが痛い、とかじゃない。
この6人を中心に、学校全体が俺の敵だ。
誰も味方がいない寂しさ。誰もが敵になる憎さ。
俺の中で、ストレスは殺意という刃物を作り続けている。
この鬱憤は、誰にぶつければいいのだろうか?
俺は元々、ケンカとか諍いが好きじゃなかった。
それが、今になってみれば「いじめられて」いる。
あいつらに「いじめられて」いる。
仕返しとか、復讐とかそんな事は思わなかった。
俺は俺だ。あいつらはあいつらだ。熱くなって殴ってしまえば、俺は負ける。
俺はもう中学3年だ。そろそろ大人にならないといけない。
そもそも、俺みたいな逸れ者が、いじめられる理由はよくわからない。
集団意識がそうさせるのか?ここがコンビニまで片道1時間かかる田舎だからか?
考えても、俺にはわからなかった。
ただ、今俺を襲っている疎外感や孤独感は、たぶん「いじめ」の副産物だろう。
もはや、先生や親でさえ俺は、信じられなくなった。
全てが、敵にしか見えなかった。
今日もまた、傷だらけで家に帰る。誰もいない我が家に「ただいま」と小さく言う。
もちろん返ってくる事はないが、そのかわりに俺の猫が二階から降りてきた。
全身が白に覆われた俺の猫。この家で唯一、世界で唯一俺の味方だ。
名前は付けていない。俺の親は「ミミ」なんて可愛い名前をつけているが、俺は知らない。
名前を付けないのは、面倒臭いからじゃない。名前があるから、苦しいんだ。
それを知っている俺は、こいつに名前なんてつけられなかった。
猫は俺の膝の上で、スヤスヤと眠っていた。
考えを深めれば深める程、俺は現実から逃避するように逃げていた。