第一話 プロローグ
ふと気が付けば、私は一面の暗闇の中にいることに気が付いた。
何かないかと周りを見渡してみても、深い闇が広がっているばかりで先がどうなっているのかはうかがえそうにない。
地面に手を当ててみると、そこはなめらかで平坦であった。 ……少なくともつまずく心配はせずにすみそうだ。
「ここはどこなのだろう。」
私は首を傾げた。なぜここにいるのかわからなかった。
ただ、この場所にいると心がざわつく。
私は前に進まなければと感じた。
私は歩き始めることにした。
……どれほどの時が流れたのだろう。私は暗闇の先に光を見つけた。強い光だ。
思わず目を細めつつ、歩調は軽やかに、より速くなってゆく。
光は近づくにつれより大きく、より眩しくなった。
私はあまりの眩しさに目をつむったが、瞼越しであってもその眩しさが目に刺さってゆくのを感じたので、手で覆いながら進んだ。
私は全身が熱くなってゆくのが分かった。光に向かって、進めば進むほど身体は熱くなった。熱い。痛い。苦しい。
遂には燃えているのではないかと錯覚するほどの熱さになった。
だが、私は進んだ。進まなければ……
全身の熱さに耐えながら進んでゆけば、気づけば熱さはきれいさっぱり無くなっていた。
恐る恐る目を開ければ、目の前には大きな木が生えていた。足元にはくるぶしの辺りまで草が茂っていた。左右には木が幾多も生えており、奥は暗くて深い闇にさえぎられて良く見えない。私は森の中にいるのだと理解した。
後ろを振り返れば、そこには洞窟があった。だが、その洞窟の奥行きは5mほどだったので洞窟と呼ぶより、横穴と呼んだほうが正しいかもしれない。
私が歩いていた場所は何処にいってしまったのだろう。神隠しにでもあってしまったのだろうか。
そのように考えていると、ふと空が暗くなった。
なんだ、なんだと見上げてみれば、そこには怪物がいた。
全長はゆうに100m以上、太陽も遮る大きな翼、全身を覆う堅牢な鱗、象すら飲み込めそうな大きな口、ナイフよりも鋭そうな牙、鞭のようにしなやかな尻尾をもつ怪物が見えた。
私は驚愕と恐怖で逃げだしたかった。だが、脚が地面に刺さっていると錯覚するほど動かず、私はその怪物の動きを見ているしかない。怪物の動きをまるで時の流れがゆっくりになったかのようにはっきり見えた。
……幸運なことに、怪物は私のはるか上空を通りすぎていった。
私はあまりのショックに絶句していた。恐怖と興奮で心臓が爆発しそうだった。
心を落ち着かせるために深呼吸をした。
一回、二回、三回と深呼吸をすれば、バクバクと煩かった鼓動も幾分か収まってきた。私は先ほどの光景を頭の中で整理しようと試みた。
まず私が思ったのは、あんな生き物見たことがないといったものだ。まるで伝説のドラゴンではないか。あの大きな姿を思い出していると、収まってきていた鼓動が強くなってきた。
あの生き物を知りたい。あの生き物を知りたい。
「あの生き物を知りたい」
思わず口に出るほど私の頭は怪物のことでいっぱいになっていた。