転校前日
今日でこの時代に来て6日が過ぎた。
家の周りは探探索出来たし、正直少し暇を持て余していたところだった。
だから、最初の目論見通り、明日には射太子さんが通う燈蜜学園の生徒になろう。
「ジンチ君を記憶操作モードにしてっと。えーっと、追尾用小型状態のまま射太子さんを追跡、学園に入り次第大人をサーチして記憶介入と義資料を作成する暗示をっと」
これで、ジンチ君が自動で処理してくれるから、安心だね。
「久しぶりに別の時代に来たけど、家の場所が変わってなかったのは、安心したなぁ」
本当に。いや、本当に切実に。
迷子スキルだけは高いせいで、未来ですら迷うのに、行き来してるとごちゃ混ぜになるから、家の場所が変わらないのは助かる。
とは言え、まだジンチ君が居ない時に外出すると帰ってこれないのは難点。
あ、ジンチ君帰って来た。射太子さんが学校に向かってから5分。案外早かった。
「えーーっと?なるほど。任務完了ね。今日一日の対象付近の記憶が曖昧になるようにしたから、学校で変なことやっても怒られないはず」
学校の授業中に、校内でふざけ回っても怒られない程度には効いている筈だから、ちょっと行ってみよ。
ジンチ君にナビ機能を使わせて学校に着く。時間にして10分そこそこの距離。
「うわっ。広そうな学校……。道に迷いそうだし、あ。そうだ。放送室にでも行ってみよ」
放送室に行く理由は、なんか楽しそうだから。道に迷わずに一日中学校で遊べそうだから。
「カギは……ジンチ君」
万能なカギ開けまで習得させてあるから便利な機能。電子ロックじゃなくても開けてくれるのがミソ。
「ん?あー授業が始まるんだ。チャイムが鳴ってる。あ、これさ、ずっと鳴らしておいたら面白いかな?音の対象をズラして、オートで鳴り続けるように細工してっと」
鳴り終わる前に細工をして、今日一日チャイムが鳴り止まないようにした。
他の人には聞こえないよう、ジンチ君で操作もしてある。
どんな技術でやってるのかは分からない。
キーンコーンカーンコーンと、鳴り終わる事のないチャイムが、ここ燈蜜学園に鳴り響く。
正直、未来でこんな事して、万が一敵に知られれば格好の的になってしまう。
というかずっとチャイムが鳴ってるのって、かなり面白い。授業の節目に聞こえるはずのものがずっと聞こえてたら迷惑だもんね。
さて、どうしようかな?あ。そうだ。本当に聞こえてないのか周りを見に行ってみよ。
……結論。概ね大丈夫だった。一部を除いて。
ごめんなさい射太子さん。貴方にはジンチ君の操作が効かないんでした。
犯人は私です。と名前入りの紙を机にジンチ君を使って渡しておいた。
まさかとは思ったけど、他の人は大丈夫だと思うことにした。何か一人怪しい人はいたけど。