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知らない男の子

 こんにちは!スーザンです。実はつい先日、7歳のお誕生日を迎えました。ぱちぱち!(え?毎回成長すんの早いって?……まあまあ)

 セントバールズ男爵家の愛娘である私のお誕生日会は、それはもう盛大なもので、お母様からは小さな赤い宝石の腕輪を(なんの宝石か知らない。でも厳重に包まれた箱の中に入っていた)、使用人代表のセバスからは、お出かけ用の可愛いフリルのついた水色のドレスを、料理長のアンリからは大きなケーキを貰った。

 

 それはそれは、とても満足のいく内容だったんだけど、ひとつ、あれって思うことがあった。

 実は、お父様からのプレゼントが、なかったのである。親戚や交流のある貴族から送られてきたプレゼントの群れの中に、紛れ込んでるのかな。なんて思っていたけれど、どれだけ探してもそれらしきものは見つからず。

 あの優しい、娘大好きパパからの贈り物がなかったことに、私は少なからずショックを受けた。

 もしこれが、本当に精神年齢も7歳のスーザン(私)だったなら、ひどくショックを受けていただろうと思う。子供にとって、プレゼントは、親の愛情が具現化された、とても重要なもの。普段、親から愛されていると分かっていても、幼さゆえに、やはり少し不安に感じてしまう。

 私はもう、精神年齢は年増だから、不安がったりすることはないけれど。……お父様、なにかあったの?  


***


 昨日はどこかに行っていたお父様も、朝までにはどうやら帰って来たらしい。朝食が終わると、私はお父様のお部屋に呼ばれた。

なんだろうと首を傾げながら、てくてくとお父様のお部屋に向かう。

今日は使用人のみんながお金を出して買ってくれたフリル付き水色ドレスを着ている。ちなみに、足元は茶色の編み上げブーツで飾っているんだけど、これは去年お母様から貰ったものだ。


 お父様のお部屋に到着する。変な緊張を味わいながらノックすると、返事が返ってきた。きい、とドアを開ける。

「…・・失礼します。お父様」

「ああ、よく来たね。スーザン。こちらへおいで」

 

ソファに腰かけていたお父様が腰を浮かす。

あれ?なんだかお父様いつも通り?内心首を傾げながらドアを閉め、振り返る。

 すると、そこで初めて、私はお父様の向かい側のソファに誰かがいるのに気が付いた。

 びっくりして凝視すると、くせの混じった茶色い髪の毛がふぁさりと揺れた。緑色の強い、青みのある瞳と目があう。


 ――うわあ。綺麗な男の子……!

切れ長の瞳に、思わず引き込まれそうになる。寡黙そうな形の良い唇が、真一文字にぎゅっと引き締められていて、表情全体で見ると、少し緊張しているような面持ちだった。


「紹介しよう、スーザン。この子は、ギルバート。従騎士学校を卒業したばかりで若いが、とても優秀な子でね。お前の侍従にどうかと思って連れて来たんだ。仲良くしなさい」

「……えっと」

 ばばっと一方的に喋ったお父様に、背中を軽く押される。仲良くしなさい、と突然言われても。

 従騎士学校って確か、騎士様になるために、騎士予備軍として、まだ小さい子供の内から入る学校のことだよね?すっごく大変な訓練を毎日するんだって、聞いたことがある。(もちろん前世で)

 その学校を卒業して、しかもお父様曰く、とても優秀らしいギルバートという、目の前の男の子。

 かたい表情をした彼に、なんて言葉をかければいいか分からずに、ただ沈黙する。お父様を見上げてみるけれど、にこにことほほ笑んでいるだけ。内心、オイとつっこみながら、しぶしぶギルバートに向き直った。


 すると、ギルバートがいきなり床に方膝をついた。

ええっ?なに、いったい何をしてるの?

 内心わちゃわちゃとなりながら、ギルバートを見守っていると、すっと手が伸びてきた。優しく左手を取られる。


「ギルバートと言います。庶民の出なので、苗字はありません。スーザンお嬢様が初めての主なので、何分至らない点などあると思いますが、誠心誠意お仕えさせていただく所存です」

「……よ、よろしく」

 手!!っていうか手!!私の左手をどうするつもりなの!

私がそう答えると、ギルバートの固く結ばれていた口元が、ゆるりと綻んだ。

わ、かわいい……

―――じゃなくて!!


「―――お嬢様に、我が不屈の忠誠を」 

 そう言ったギルバートが、左手を引きよせ、顔をそこに近付けた。

時が止まる。

「いついかなる時も、御前を離れず、命に背かず、我が唯一の主をお守りすると誓います」

 ちゅ、と柔らかな何かが手の甲に触れた。

伏せられていた長いまつ毛が震え、それに囲まれていた緑色の瞳が、私を見上げた。

「……・・お嬢様、私の誓いをお許しくださいますか?」

 ちらり、とお父様を見上げる。満面の笑みで頷かれた。ギルバートに向き直る。

「ゆ、許します……」

 蚊の鳴くような声でそう告げると、ギルバートがほっとしたように微笑んだ。

「ありがとうございます。お嬢様」

「……・・~っ」


 うわわわわ。絶対今、私顔が赤いよ!どうしよう。

こんなことされたの初めてで……(あ、なんか虚しい)もう、どうしていいか分からない。しかもこんな、綺麗な男の子に、騎士の忠誠を誓われるなんて……。あっていいものか。こんなことが!!


 ――ああ、私の人生。

やっぱり今回は、薔薇色かもしれない。



3日ぶりの更新となりました!毎度毎度すみませんm(__)m

 感想ありがとうございます*とても嬉しかったです!更新意欲がむくむくと上がりました(笑)現金なヤツですm(__)m

 今回はギルバートの容姿について、細かくアップしてみました。どうですか?予想されていた容姿でしたでしょうか?くせ毛、緑色の目、形の良い唇(薄い)。人それぞれイケメンポイントは違うと思うのですが、美しい者は誰が見たって美しいはず!とりあえずギルバートは、イケメンです。

 次回更新予定は、9月24日pm~25日pmです。

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