見つけた使命1
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朝陽を見て、涙を流し続けた私に、王子様とギルはなぜかオロオロとして、そしてなぜか二人のどちらかがスーザンが泣いている原因だという事になった。
「殿下が無理矢理エンリケ様に乗せて、あり得ない速度で走りになったから……」
「あり得ない速度じゃない。別に。しかもスーザンも僕と乗りたいと言った」
「いえ、あり得ていましたが、アレはあり得ない速度でした。
乗りたい……乗りたいと仰りましたか?お嬢様」
「え、どうだったか」「なんだ。ギル何が言いたい?」
「私からすればお嬢様は無理矢理頷かれたように見えました」
「そんなことない。ね、スーザン。スーザンは僕にしがみつきながら、馬で駆ける歓喜に震えていたくらいだ」
「いや、それはちが」「私が見た時は笑顔でこちらへ近付いてくるトロールを見てしまった後のような顔でした」
「…例えがわかりにくい。それにスーザン?トロールなんていう怪物はおとぎ話の中にしかいないから大丈夫だ」
「分かりませんよ、そんなこと」
「いないに決まってる。スーザンはどちらだと思う?」
もはやなんでもいい。
今までにないほどの固い決意と、新たな使命に燃え出した私の勢いは、二人のどうでもいいような争いの前で、鎮火されつつあった。
いや、どうでもよくはないのだ。私がポロポロと情けなくも人前で泣いてしまったのがいけない。
私は、なぜか私が原因で燃えだしてしまった二人の手を取るとその手をぎゅっと握り締めた。
「スーザン?」
「お、お嬢様……っ?」
目を見開く王子様と、途端に赤くなったギルバートの手を重ね合わせると、にこりと笑って言った。
「はい、仲直りっ」
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城に戻ると、私はさっそく王子様に決意のことを話すことにした。
人払いしたいと言って、ギルバートにも退出して貰うと、ギルはあからさまに顔をしかめていた。
そんなギルバートに、なぜか王子様は口角を上げて面白そうに見ていた。
「さて……ところで話って何かな。スーザン」
「はい……あの…」
今から私が話すことは、人の常識を飛び越えるものだ。
もはや神の域さえ越えているのかもしれない。
聖書の神は魂は救済しても、もう一度その魂に命を与えるということは、していなかったはずだから。
……そう。私はレイス王子に、私の人生でおそらく最大の秘密を打ち明けようとしている。
最悪、死刑になることも考えた。異分子は忌避されて排除されるのが世の常だから。
けれど、目の前で優しく微笑む王子様は、どこからともなく現れた誰かが「大丈夫」だと私の耳に囁いていた。
両親にもギルバートにも打ち明けたことのない秘密を、私は出会って二日目の、しかも一国の王子様に打ち明けようとしている。
馬鹿かもしれない。
信じても王子様は、数分後には私を軽蔑した目で見ているかもしれない。
だけど、いずれは必要になる吐露を今にしても後にしても同じことだ。
遅かれ早かれ、私は必ず自身の「決意」の根源たる理由を打ち明けなくてはいけなくなる。
私は、深く息を吸い込むと、青い瞳を真っ直ぐ見つめて、唇を開いた。