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小さなナイト3

更新遅れました。

かなり悩み、やっと投稿完了。

ギルバートに決意表明をしてから、夜が明けた。



あれからギルバートは、大きく目を見開いて、ただ私を見つめた。



何も言わないギルバートに首を傾げていると、彼は突然糸が切れたようにベッドに倒れた。



どうやら高熱が出ているのに、気を使わせたあげく、難しいことを言って混乱させてしまったらしい。



すぐにセバスがやって来て私を部屋から追い出すと、ギルバートの看病を始めた。



お見舞いのつもりが、逆効果になってしまった。



私は反省しながらも、ギルバートに決意表明をしたことについて考えながら、一夜を明かしたのだった。



その翌朝。

ギルバートはまだ熱が引かず、ベッドに臥せっていたので、私はつまらなく感じながらも、真面目にお父様の講義を受けていた。



「じゃあ今日は、この国の王様の話をしようか」

「王様?」

「そうだよ。スーザンがいるこの王国には、王様という一番偉いお方がいて、国をまとめ上げていらっしゃるんだ」



3歳から始まった私のこの授業は、実はお父様が多忙なため、あまり実施されていなかった。

そのため、今でもあまり授業内容は進展していないのだが、お父様もこんな小さな子供にあれかこれやと話しても理解できないだろうと思っているらしく、核心的な話はまだ聞けていない


例えば、今の国の経済。

これはちょっと頭をつかえば、平民だって理解できるものだ。


むしろ理解できなければ過酷なあの世界では生きて行けない。


世界を変えたい。

そう思って、ギルバートにそのことを言った。



世界を変えてギルバートとの壁を壊す。ギルバートと私が何の心配もなく、手を取り合える世界。



かつて私はこの国が、理想郷だと思っていた。

アイリスよりも豊かで平和な国は、確かに今となっても良い国だと思う。



だけど、本当に良い国だったら、ギルバートと私は手を取り合えるんじゃないだろうか。

みんなが平等なら。

みんなが手を取り合えるんじゃないのだろうか。



もはや今の私にとっては、理想郷とはトワルブリッシュではなくなっていた。



私が目指す理想郷は、アイリスでもトワルブリッシュでもない。



手と手を取り合える国。

それが私の思い描く理想だ。




だが、それ自体が理想にすぎないことを、私は痛いほど理解していた。

理想と現実は違う。



私が思い描く理想郷が、簡単に許されるものならば、すでに完成していただろう。



それだけこの理想郷は、実現が難しいのだ。



私は早くも挫けそうになりながらお父様の講義に耳を傾けた。



「スーザンは今の国王さまのお名前は知っているかい?」

「ううん。知らないわ」

「ダルディ陛下と言ってね、お父様はそのダルディ陛下のご子息……つまり陛下の子供に物事を教える仕事をしているんだ」


それは知っていた。夕飯の時などにお父様がお母様に話をしているのを何度となく聞いていたし。

まだ私が赤ん坊の時に、ちょうど教育かかりになったところでお父様がそれをお母様に報告していた。



お父様が陛下のご子息、第一王子レイス様に教鞭を取っているというのは、私の誇りだ。


お父様すごい!



感心しながら頷くとお父様はそのままにこやかに話を続けた。



「レイス王子と言ってね、スーザンよりも7つ年上の方だから、今は14歳かな。

とても勤勉な方でね、よく社会制度について学ばれている」



社会制度を学ぶのは、王族として当然で……当然であって貰わねばならないのだが、お父様曰く勤勉な王子さまは、もしかしたら将来、今よりも善政を敷いてくれる王様になるかもしれない。

なにせ、お父様が娘以外のなにかを誉めるのは珍しいのだ。



「レイス様は特に、奴隷制度などに関心がおありなようだからな……そうだ今度、地下の書庫からあの本を……」



ぶつぶつと一人言を呟くお父様。

その傍らで私は、あまりの衝撃にただ身を固くした。



こんなにも早く、理想郷への道しるべができるとは。

少しそら恐ろしく感じながらも、私はこの機会を無駄にすまいとお父様の腕をがしりと掴んだ。



もしもその王子さまにお会いして、仲良くなれたら、目指すものを共有できるかもしれない。


奴隷制度に関心がある。

つまり、差別問題に関心があるということだ。



なんかパアッした光が見えた気がする。




「あの、お父様っ!」

「っわあ!なんだい、スーザン?びっくりしたぞお父様」

「ああ、ごめんなさい」



目を白黒させるお父様に、形だけの謝罪を述べると私は勢い込んで言った。



「あのね!その王子さまにあいたいの!」



なぜ、と聞かれれば本当の理由を言うわけにはいかないが、適当に「ただ会いたいから」とだけ言えばいい。

男爵とはいえ、お父様は王子さまの教育係なんだから。

多少の無理は効くだろう。



そう算段し、挑むようにお父様を見上げると、そこにはとってもうれしそうな顔をしたお父様が。


ん?



「もちろんさ、スーザン!

君がその気になってくれて嬉しいよ!

いつスーザンを連れていくか迷っていたが、明日にでも城へ行こう!

早く行こう!

ああでもそうなったら、少なくとも1年はここへ帰ってこれないからね。

お母様やケイト、セバスたちにきっちりお別れを言わないとね」


「……え?」




かくして、私の登城……理想郷への一歩はこのようにして、あっさり決定した。





次からは、二人目の美少年登場です!ギルバート危うし、の回です

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