流転7
「羽山大丈夫か?」
「・・・ああ、問題ないよ。日頃の運動不足だな」
苦笑いをする羽山。
もうすでに7回目の往復。羽山の体力は予想以上に削られていた。
生徒の体重が50kgとしても、肩側を持つ羽山は35kg以上の重量がかかっているのではないだろうか。
それを7往復、1.5Lのペットボトル23本抱えているようなものなのだ。考えただけで気が滅入る。
しかし、羽山の疲労を蓄積させているのは体力だけではなく、精神的なものも大きいだろう。
今や、本当に人の命がその肩に掛かっているのだ。半端な精神的負担ではないはずだ。
「俺が肩側を持とうか?」
「篠宮には危険を承知で手伝ってもらってるのに、そこまでしてもらったら立場がなくなるわ」
まぁ、断られるとは思っていた。残りあと3往復すればこの救助作業も終わりだろう。
それくらいなら、気合で何とかするそんなヤツだ。だが、
「―――と思ったけど、前言撤回だ。交代お願いするよ。」
俺は少し焦った、ここで交代を言い出すとは思っていなかった。
自分の疲労を考えて、効率を重視したのだろうが、それだけ体力に余裕がないということなのだ。
位置を入替えて重傷者を運ぶ、―――重い。そんなことを言ってる状況ではないのだが、確かにこれはキツイ。
重傷者を運び少ししたところで、
「パンツ見放題と思ったけど、全然見えないねこれ」
と羽山が言う。
そう、そうなのだ。最初に運んだ女生徒は太ももに深い切傷だったため、足を上げて運んだためスカートが捲れ、結果見えたのだが。
打撲や骨折、ただ単に意識が無いだけの場合は、普通に運ぶため見放題とはならない。
とはいえまったく見えないわけではない、運んでいるので見える場合もあるが。
さすがにこの状況下だ、下着を見るために集中してる場合ではない。
「というかさ、かわいい娘とか好きな娘以外のパンツ見てもうれしくないんだけど。」
真理だと思う。