流転6
渡り廊下の中央付近が一番被害が大きい、壁は崩れ床には3m程の穴があいていた。
飛んで届かない距離ではないし、むき出しになった鉄骨を渡って向こう側に行けなくはない、だが怪我人を運んで戻ってくるのは不可能だ。
すぐさま現状を理解すると。羽山と二人で近くの重傷者のもとへ向かう。
「おい大丈夫か」
声をかけるが女生徒の反応は無い。
ガラスできったのだろうか、太ももの内側がザックリと切れ地面に血溜まりをつくっている。
羽山は傷口の止血に入っていた。
女生徒のスカーフを外し、そのスカーフで傷口を強く縛る。そして他の外傷を探している。
そこら辺はさすがに医者の息子だと感心する。
羽山が止血している間、辺りを伺う。他の重傷者を探すため、さらに助ける順番を決めておかなければならない。
すると、向こう岸の校舎に先生の姿が見えた。
体育教師の温田先生だ。
「先生こちら側の怪我人は僕らが運びます、そちら側の怪我人は先生にお任せします!!」
どうやら、状況を理解してくれたようだ。
職員室は1階にある。逃げ惑う生徒の波を逆流しなければ2階に登れないためだろう、残念ながら他の先生は見当たらない。
「篠宮運ぶぞ」
羽山の声が飛ぶ。
「他に外傷はないようだが、出血が思ったよりも酷い。太ももの内側なんで横にして運ぶのもあまりよくない、足を心臓より上げて運ぼう。」
「ああ、了解した」
当初の提案どおり俺が足側を、太ももを両脇に抱え、羽山が肩を抱え腰を落としながら運ぶ。
必然なのだが足側を高くしているため女生徒のスカートが少しずつめくれていく。
白い肌、左側の太ももは綺麗な鮮血で真っ赤になっている。少し進んだところで、スカートは完全にめくれ上がり下着があらわになる。
劣情を抱かなかったといえば嘘になる。この状況下といえど女子高生。白い肌に肉付きの良い太もも、下着が眼前に広がっているのだ。
それに、生物は命の危険に晒されると子孫を残すために性欲が沸くとも言われている。
俺はそんな自分に呆れながら、彼女を運んだ。
校舎に辿りつく、羽山の指示を受けた生徒が用意したのだろう。男子の上着の制服が並べられていた。
俺と羽山は彼女をその制服の上に寝かせる。
また、校舎側に残った生徒が確保したのだろう、新たな人員。
彼らの役目は、グラウンドに避難するときに怪我人を一緒に運んでいくことだ。
羽山は俺に指示したように、校舎の外に運ぶ役目の生徒に指示を出す。
俺は羽山を待たずに、渡り廊下に走り出す。