流転5
どうやら危険なのは渡り廊下だけのようだ。
校舎の方は、廊下のガラスが割れ散乱はしているが、崩れるような問題は無いようだ。
とはいえどうするか。
運ばなければいけないと思われる、怪我人はおよそ10人以上はいる。
怪我人を運んだとしてガラスが散乱している地面に寝かせるわけにはいかない。
かといって一人一人校舎の外まで運んでたらきりが無い。最悪間に合わない可能性もある。
そんな思考を巡らせるなか、羽山は校舎側にいる生徒を4人捕まえて、指示を出す。
俺を含め、声をかけられた生徒は真剣なまなざしで羽山の指示を聞く。
そしてすぐに、俺たちは羽山の指示に従い行動に出る。
―――生徒を呼びとめ、指示をだし、行動に移すまでおそらく30秒とかかっていない。
俺と羽山が重傷者の運搬、他に羽山の支持を聞いた3名が軽症者の避難・誘導のため渡り廊下に再度突入する。
俺はすぐさま倒れている生徒に駆け寄り、声をかけようとする。だが、羽山がすぐに俺に声をかける。
「篠宮、まずは現状の把握だ一度中央まで行くぞ」
俺はすぐに自分の間違いに気づいた。この生徒は無事なのだ、意識は無いかもしれないが外傷は見当たらない。
俺と羽山の仕事は『重傷者』の運搬であり、『軽症者』の運搬ではないのだ。
自分で言うのもなんだが俺はこの災害下の中『冷静』だったと思う、普段と変わらない思考と判断ができる。
だがそれは、BetterでありBestではなかったのだ。
俺は羽山と同じように『理解』しなければならなかったのだ。
一つの判断ミスで失われる命があるかもしれないというこの状況を。
俺は自分の浅はかさを後悔した後、すぐに思考を切替える。
そして、羽山の後を追うために走り出した。