流転4
最初は何が起きたのか分からなかった。
気がついたら倒れていた。
が、すぐに状況を理解する。何かが起こったのだと。
俺は重なる生徒を押しのけ立ち上がり、辺りを見回す。
阿鼻叫喚、その言葉がまさに正しいだろう。渡り廊下は半壊していたのだ。
天井の一部が崩落し、壁が崩れている。どうやら足元が崩れているところもあり、穴が開き1階の地面が見える箇所もある。
廊下の窓ガラスは全て割れ、窓側の生徒は割れた窓ガラスを浴びて出血している。
生徒は折り重なり倒れ、中には崩れた壁や穴から1Fに落下した生徒もいる。
この状況だ。あとはもうパニックになるだけだった。
意識を取り戻した生徒から、叫び悲鳴を上げる。中には友達の名前を呼ぶ声も聞こえる。
泣き叫び、蹲る生徒もいる。だが、その状況も長くは続かなかった。
一部の生徒は理解したのだ。
この渡り廊下は長くは持たないということに。
更なるパニック、我先にと渡り廊下から逃げていく。
そうなれば、残りの生徒も理解する。このまま逃げなければ崩落に巻き込まれると。
そして始まる避難とは程遠い、生きるために、必死に邪魔な生徒を押しのけ、倒れてる生徒を足蹴に、
散乱したガラスが足に刺さろうとも、一心不乱に自分が助かろうと逃げていく。
『自分が生き残るために他人を見捨てる』生物としてはおそらくそれが正しいのだろう。
少なくとも俺みたいに、この状況でも冷静でいるのは生物としておかしいと思う。
ましてこの状況で他人を気遣うのは生物としてどこかが壊れているのも理解している。
だから、誰も彼らを非難できない。神であっても、生きようとする意志を否定するのはきっとやってはいけないことだと思う。
ただ・・・生物として間違っていたとしても・・・、人としては・・・
「よう篠宮やっぱり無事だったか、ところで何ボーっとしてんだ。避難しないんなら怪我人運ぶの手伝ってくれよ。一人じゃ運べなくてよ、この際お前が足のほう持っていいからちょっと手伝えよ。今なら特典としてパンツ覗き放題だぞ。」
訂正だ。人として、正しいのだろうと思ったが、人としてもやはり壊れている。
―――が、正しいヤツより、そんな壊れたヤツのほうが俺は好きだ。