プロローグ
朝というのは苦手だ、そしてそれは大半の人も同じ考えだと思う。
学校や会社に行くのが嫌とか、低血圧だからということが考えられるが、俺の場合は学校が嫌いなわけではないし、低血圧でもない。
理由を上げるとすれば、世界に絶望しているからだろう。
何故か?
―――世界は姉を救わなかった。
社会の成立ちに諦めを抱き、姉の死に絶望し、そして世界を呪った。
理不尽だと。
だから、生きることに希望を持てない俺には、朝とは苦痛の始まりであり、得意なものになることは絶対にありえない。
姉は俺が15の時に病気で死んだ。姉は優しく明るい性格で、家族の中心だった。姉の笑顔には家族が癒されていた。
姉が死んでから家族の会話は無くなり、家庭は家庭として機能しなくなった。
よくある話だ。決して俺だけの不幸ではない、俺と同じ境遇やもっと酷い境遇もいくらでもあるだろう。多くの人は、それを受入れ生きている。仕方がないと、それが現実だと。よく言えば『達観』、悪く言えば『諦め』
夢があるわけではなく、ただ日々を消化していく毎日、そんな積み重ねで適当に大学に行って会社に入って、人を好きになり恋をして結婚し、子供を育てそして死んでいく。
たった一度の人生だけど、俺の人生はそんな人生だろうと思う。
・・・少なくとも俺が、姉の死んだ17歳になるまではそう思っていた。