冬の日のコーヒーカップ
自室で時限式の爆音装置でバッと目が覚めた。
いつもと変わらぬ最悪の目覚めだ。
だけど、アイツが死んでしまうのはもっと気分が悪い。
世界は無秩序だ、なんて事を最近、数多く考えてしまうのは例の事故の一件があったからであろう。
あの日は確か、快晴だったかな。天気は。
気分は雷雨なったけど。
あの事故は偶然だったのかも知れないけど、俺たちの部はそう思っちゃいなかった。
あれは偶然じゃなくて、裏で何かが起こっていた、そう勝手に結論づけた。
事故が起きたが部は存続する事になった、しかし俺が提案をしたせいで、ごっそりと人は消えていった。
それも仕方あるまい。
だけど、俺に賛同する仲間も少なからず居てくれた。
それが唯一の光、希望、道なんだ。
二階の自室を出て階段を降り、茶の間に行く。
茶の間の机には一つのコーヒーカップ。
料理も何もできない親父がしてくれるただひとつの家事だ。
コーヒーカップに口を付け、今から自分がやるべき事を脳内で冷静に何度も言い聞かせる。
一口飲み込むと、カフェインの苦味が脳に染み渡り神経が研ぎ澄まされていく気がした。
一旦カップを机に置き、クローゼットを開けてコートに着替える。
そしてまた、カップに手を付けた。
二口目、苦味に口が慣れていく。
俺にはやらなきゃならない事があるんだ。
三口目、四口目と慣れた口で飲んでいく。
五口目が胃に侵入する時、
「バンッ!」
遠くで銃声の様なものが聞こえた。
やはり、行動を起こしてきた。
相手は見えない敵、さながらHidden enemyという訳だ。
そろそろ、俺も行動を起こさないとダメらしい。
俺には、探査というこの人間にはやらなきゃならない事があるんだ。
幼馴染の女の子の未来を変えることと真実を知るという事を。
...これは夢じゃない現実だ。