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犯罪者の親として

作者: テンコウ

平成24年7月12日

私はこの日付を忘れることはないだろう。


その日、私の息子が犯罪者になった。


なぜ息子がそんなことをしたのか?

誰もが疑問に思った。


成績は決してよくない。

勉強も嫌いだ。

スポーツも特別人より秀でているわけでもない。

でも、友人は多かった。


本当にごくあたりまえの少年だった。


しかし、彼は罪を犯した。

被害者となったのは彼の幼馴染の家だった。


被害者は幼い頃から彼を実の子のように扱ってくれた。

それだけに被害者の怒りは裏切られたという「絶望感」となって現れていた。


妻と長女を前に私は口を開いた。


「息子が帰ってきてからが本当の始まりだよ。」


おそらく彼の人生は大きく狂ってしまった。

しかし、彼の行為は被害者にそれ以上の苦しみと哀しみを与えたのだ。


その償いは彼の余生、全てをかけてしていかなければならない。

決して許されることはない。

そして、彼が二度と同じあやまちを繰り返さないように更生させなければならない。


彼はまだ未成年だ。

そして人を殺めたわけではない。

反省の弁も聞いた。


だからこそ、私は心に決めたのだ。

息子と二人で罪を背負っていこうと。


綺麗事ではない。

私も同じように母や祖母、兄弟や友人に助けられて生きてきた。

だから、今度は私が彼に同じ事をしたいのだ。


私と彼は血は繋がっていない。

再婚した妻の子だ。

私は決めたはずだった。

幸せな家庭を築くのだと。

妻と血は繋がっていないが、私の大切な娘と息子を幸せにするのだと。


しかし、事件は起こってしまった。


私の至らなさで被害者の方には本当に申し訳ない事をしたと思っている。

被害者の方のお怒りと失望感を真摯に受け止めて、私も償っていこうと思う。


終わることのない償いの日々は始まったばかりだ。

この先、私を含め家族全員が罪を背負っていくのだ。


被害者の方に弁済を終え、彼が罪の代償を法的に済ませてからが本当の償いの始まりだ。

私はここに記した事を決して忘れずに生きていこうと思う。


犯した罪は一生消えない。

彼は当然として私を含めた家族にも、そしてなにより何の罪のない被害者の方が一生、その痛みを負い続けるのだということを彼は知らなければならない。


私は加害者の親なのだ。

息子の罪は私の罪なのだ。

私も息子と同じく罪を背負って生きていくのだ。


でもいつか償いを終えることができたのなら、私は息子にこう言うつもりだ。


「おかえり」


その日がいつか来ることを信じて・・・

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