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序章

 東の聖女が死んだ。



 そのニュースは神聖王国中に瞬く間に広がった。

 それと同時に、東の都市が壊滅した、という話も広まっていった。

 この国で最も賢く、聡明な東の聖女はなぜ死んだのか。

 東の聖女が死んだから、東の都市は壊滅したのか。それとも東の都市が壊滅したから、東の聖女が死んだのか。

 様々な噂が国中で広まっていった。


 それらの事実を知るべく、テオグリフ山の山頂には多くの人々が集まっている。




 国の中央に高くそびえるテオグリフ山。その麓の東西南北に四つの都市が存在している。

 それぞれの都市には、テオグリフ山の山頂にある大聖堂から聖女が使わされている。

 都市と都市の間には、険しい山脈や数多くの獣道が存在しているため、都市同士の交流は皆無に近い。しかし、それぞれの都市と大聖堂は太く安全な道でつながっている。そのため、自然と大聖堂の周りは栄え、人々は大聖堂の周辺を「首都」と呼ぶようになった。


 今日は大聖堂に聖女たちが集まり、東の聖女について大司教から国民へ向けて話をする日だった。

 いつもは行商人が出入りする賑やかな首都に、今日は張り詰めた糸のような緊張感が漂っている。

 大聖堂も普段のような静けさはなく、様々な表情の人でごった返している。


 大聖堂の前方には、聖女見習いが並んでいる。そして、人々と相対するように五つの椅子が並べられている。

 大司教を先頭に、聖女たちが入ってきた。

 真ん中に大司教が座り、大司教の左右には二つずつ椅子が置かれ、そこに聖女達が座った。

 西の聖女はその活発そうな瞳が伏せられ、意気消沈としており、北の聖女は普段通りの静けさを保っている。最も幼い南の聖女は、いつもと異なる雰囲気からか、大きな瞳をキョロキョロと動かし、地面につかない足をパタパタとさせている。


 ただ一つ、東の聖女の椅子だけ誰も座らず、その異質さを醸し出している。


 人々はその光景を見て、噂が事実であることを理解する。中には、東の聖女の不在に衝撃を受け、泣き出してしまう人もいた。


 大司教が立ち上がった。人々の注目は大司教に集まり、大聖堂は静寂に包まれる。



「東の聖女は――――」



 大司教は話し始めた。



「東の聖女は、死んだ」



 続けて大司教は続ける。



「東の聖女、そして東の都市は、神への祈りが不十分だった。それに対して神は怒りを覚え、彼の地に呪いを授けた。」


 聖女たちは何も反応することなく、大司教の話を聞いている。


「そのため、東の聖女は死に、東の都市は崩壊した。今後十年、呪われた東の都市へ誰であっても行くことを許さない。」







 それから一年後、人々は東の都市のことを口にしなくなった。

 東の都市へ向かう一本道は、草が伸び、荒れ放題になっている。


 真実を知るただ一人だけ、東の都市の方角を寂しげに見つめていた。

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