3話 飛べない竜
ーへえ〜。これがイサン君のミノウチ竜なんだ。
珍しく興奮した様子のリフカは、全体を見渡すようにイサン竜を観察した。
ー噂には聞いていたけど、初めて見たよ。
イサン竜は小柄で緋色の鱗に覆われていた。
歩行はまだ不慣れなのか、バランスをとるために身体全体がやや前傾姿勢だった。
イサン竜は歩いた。ぎこちない足取りだった。
そして、釜戸の前に立った。体勢を少し屈めると、釜戸の下へ、口から火焔を吐いた。
リフカは、あまりの火力の激しさに、思わず顔を両手で覆った。
けれど火事にはならなかった。炎は飛び火せず、釜戸のなかへ上手く着火した。
リフカは炎を見ていた。化学反応が強すぎるのか、釜戸からは強烈な炭火の匂いがしていた。
イサン竜が崩れた。上半身から徐々に、村澤勇参の姿に戻っていった。勇参は平然と立っていた。
ーイサンくん、竜化しても、頭とか痛くならない?
ー・・・うん。もう慣れた。
ー凄いじゃない。ウィズは人間に戻ったら、いつも頭を抱えながら倒れ込んでいたのに。
ー僕は兄さんたちより身体への負担が少ないから。早熟なんだ。
ーそっか。
ー・・・リフカちゃん。
ーうん?
ー僕、翼がないんだ。これは生まれつきで決まるらしいんだ。
ーへえ、そうなんだ。でも翼なんか無くたって・・・。
そこまでいって、リフカは言うのを止めた。
ーイサン君・・・。
ー・・・。
ー泣いてるの?
リフカは勇参の肩に手を置いた。




