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聖戦士コウタの物語


第十二話:イケメン勇者の空振り ~モンスターがいない奪還作戦~


1. 完璧なパーティーの進軍


聖都アウローラ。コウタと連絡が途絶えて数日後、イケメン勇者クロードのパーティー『聖なる光輪』は、ハルジオン王国が魔王軍四天王「破壊のバルザーク」の支配下にあるという情報を掴んだ。


クロードが堂々と宣言する。


「まさか、ハルジオンが既に魔王軍四天王に制圧されていたとは。コウタ殿がそちらに向かったという情報もあるが、彼の無能な力では戦力外だろう。我々が、完璧な作戦をもって、この最前線の拠点を奪還する!」


聖女フィオナが合掌する。


「はい、クロード様!私の聖なる加護で、皆様の安全をお守りします。」


賢者オズワルドが資料をめくりながら報告する。


「私の緻密な情報収集と魔力解析により、敵の配置は把握済みです。王城にいるバルザークを直接叩きます。」


剣聖ゼノスが短く言う。


「無駄な血は流させない。」


完璧な情報と準備を整えた『聖なる光輪』は、厳重な警護の元、緊急用の転移ポータルを利用し、ハルジオン王都の外縁に転移した。


2. 誰もいない王都


ハルジオン王都。クロード一行は転移直後から、緊張感を持って戦闘態勢に入った。


しかし、王都を覆うはずの魔王軍の威圧感も、魔物の咆哮も、一切聞こえてこない。


クロードが訝しげに尋ねる。


「……おかしい。敵の斥候はどこにいる?賢者オズワルド、情報に間違いはないか?」


賢者オズワルドが慌てて答える。


「い、いえ!転移直前まで、王都全体が魔王軍の強力な魔力に覆われていたはずですが……魔力が完全に消滅しています!まるで一晩にして蒸発したかのようです!」


一行は慎重に、そして訝しげに王都の門をくぐった。


彼らの目に入ったのは、破壊された王都と、大量の魔物の残骸だった。


聖女フィオナが驚く。


「これは……凄まじい戦闘の痕です。しかし、生きている魔物が一体もいません。まるで、掃除されたかのように……」


剣聖ゼノスが残骸を観察する。


「残骸の処理が雑だ。魔物同士の内部抗争か?だが、この戦闘痕は……超人的な単独戦闘によるものに見える。」


クロードは、汚れたスウェットとチェックシャツという、見覚えのある服装の男が、この地に向かったという情報を思い出したが、即座に否定した。


「まさか、あの無能が、これほどの戦果を上げられるはずがない。誰か別の英雄が、我々よりも先に到着したようだ。」


3. 王城の玉座と「ネコの骸」


警戒しながら王城に入ったクロード一行は、玉座の間へと続く廊下も、一切の抵抗なく突破した。


そして、玉座の間の中央で、彼らは四天王バルザークの残骸を発見する。


賢者オズワルドが叫ぶ。


「あれは……魔王軍四天王、破壊のバルザークの魔力残渣!しかし、その遺骸は……ネコ?」


玉座の前には、巨大な魔族だったバルザークが、なぜか一匹の小さなネコの骨になって転がっていた。


クロードが決断する。


「これは……奇妙な呪いの魔術か。バルザークは討伐された。我々の『ハルジオン奪還作戦』は、成功したようだ!」


聖女フィオナが安堵する。


「(安堵の息を漏らす)ああ、神の思し召しです。誰も傷つかずに済んで、よかった……!」


剣聖ゼノスが疑念を抱く。


「(周囲を見渡し)しかし、腑に落ちない。これほど完璧な戦闘を、我々が知らぬ誰かが成し遂げたというのか?」


クロードは勝利に満足しつつも、心の中で違和感を覚えていた。


彼は、最高のメンバーと最高の戦略で乗り込んできたにも関わらず、既に全ての敵が討伐され、作戦の目標が完了しているという状況に、不完全さを感じていた。


「ともあれ、ハルジオンは奪還された。残りの魔王軍の残党を掃討し、聖都へ報告しよう。フィオナ、回復魔法の準備を。ゼノス、周囲を警戒せよ。」


完璧なパーティーは、既に誰もいない王都で、存在しない敵の残党掃討という、空虚な任務を遂行することになった。


彼らは、この「誰かの残した成果」が、自分たちが無能と切り捨てたスウェット姿の聖戦士によるものだとは、夢にも思わなかった。


聖戦士コウタの物語


第十三話:完璧な作戦と行方不明の王女


1. エルフ王女奪還の至上命令


ハルジオン王都の状況を聖都に報告しに戻ったクロード一行は、休む間もなく、新たな至上命令を受け取った。


それは、魔王軍の残党に捕らえられた「エルフの王女」の救出だった。


クロードが指示を出す。


「エルフの王女は、魔王軍の『重要人質』だ。賢者オズワルド、情報収集を急いでくれたまえ。」


賢者オズワルドが報告する。


「はっ!彼女は、魔王軍が運営していた奴隷市場に囚われている可能性が高いです。我々は、奴隷市場を一斉強襲し、王女を速やかに奪還します!」


聖女フィオナが熱意を込めて言う。


「命を懸けて、無垢な王女様を救い出しましょう、クロード様!」


『聖なる光輪』は、完璧な強襲計画を練り上げ、即座に奴隷市場へと転移した。


クロードの心には、ハルジオンでの空虚な勝利の違和感を払拭し、自身の真価を示すという強い決意があった。


2. 奴隷市場の炎上と消失


クロード一行が奴隷市場の跡地に足を踏み入れたとき、彼らの目の前に広がったのは、火災の跡と、凄惨な破壊の光景だった。


クロードが叫ぶ。


「な……なんだ、これは!奴隷市場が、完全に破壊されているではないか!」


奴隷を管理していた建物は焼け落ち、檻は引きちぎられ、衛兵や魔物らしき者の残骸が転がっていた。


それは、周到な作戦ではなく、まるで単独の巨大な暴風が通過したかのような混沌とした破壊だった。


剣聖ゼノスが分析する。


「戦闘は終わっている。残骸を見る限り、尋常ではない蛮力で、瞬時に破壊された痕跡だ。我々よりも先に誰かが……」


賢者オズワルドが動揺する。


「バ、バルザーク討伐に続き、これもまた、情報にない事態……!敵の配置は無力化されていますが、王女奪還作戦は失敗です!」


クロードが拳を握りしめる。


「(拳を強く握りしめる)誰だ……!我々の作戦を、こんな形で邪魔する破天荒な者は!」


3. エルフたちの慟哭


クロードたちが混乱する中、市場の隅に身を潜めていた、救出を待っていたエルフの民の生き残りたちが、恐る恐る姿を現した。


彼らは、クロード一行の完璧な装備と威厳を見ても、一切の希望や安堵の表情を見せなかった。


彼らはただ、悲嘆に暮れていた。


エルフの長老が泣き叫ぶ。


「ああ……ああ……姫様……姫様はいらっしゃらない……!」


エルフの民Aが震えながら言う。


「誰かが……あの汚らしい人間が、姫様を連れ去ってしまった……!」


エルフたちは、地面に泣き崩れ、絶望の声を上げた。


彼らは、魔王軍の支配から逃れることよりも、行方不明になった王女ユリナの身を案じていた。


聖女フィオナが悲しむ。


「なんと……!王女様は、既に連れ去られたと……!?私の癒しの力が、この悲しみをどうすることもできません!」


クロードが茫然とする。


「(茫然自失)奪還作戦は、またも空振りか……。敵は潰されているのに、肝心の目的が達成できていない……。あの不潔なコウタが、ハルジオンから奴隷市場に向かったという情報があったが……まさか……」


クロードは、全てが完璧であるはずの自分の作戦が、連続して「誰か」の後の祭りになっているという現実に、深い苛立ちと混乱を覚えた。


彼には、なぜ敵が討伐されているのに、救出対象が連れ去られているのか、そしてなぜエルフたちが泣き崩れているのか、まったく理解できなかった。


「あの男が、王女を……?いや、あの無能なデブに、エルフの王女を連れ去るほどの力があるはずがない。だが、この混沌とした破壊は……どこかで見たような……!」


クロードは、コウタ様が「テンプレート奴隷」としてユリナを強制的に仲間に加え、五種の神器を揃えたことを知らず、彼の完璧な世界が、コウタ様の破天荒なチートによって、根底から揺さぶられ始めていた。


聖戦士コウタの物語


第十四話:王都の混乱と「無能な聖戦士」の報告


1. 聖都アウローラでの緊急報告


エルフの王女が連れ去られたという、作戦の完全な失敗を抱え、クロード一行は聖都アウローラへと帰還した。


彼らはすぐに長老たちが集まる聖堂の緊急会議室に呼び出された。


長老Aが厳しい口調で尋ねる。


「クロード殿!ハルジオン王国奪還、そして四天王討伐は誠に感謝する!だが、なぜエルフの王女奪還作戦は失敗したのだ!?」


クロードが頭を下げて報告する。


「申し訳ございません、長老様方。我々が到着したとき、奴隷市場は既に破壊され炎上しておりました。そして、王女は何者かに連れ去られた後でした。王女の護衛をしていたと思われる魔物も、すべて殲滅されていました。」


長老Bが驚く。


「殲滅だと!?我々が知らぬ間に、この世界にそこまで強力な単独の英雄が存在するというのか?」


賢者オズワルドが分析結果を報告する。


「現場の魔力残渣を分析しましたが、その力の制御は極めて粗雑で、熟練の術士のものとは思えません。しかし、その破壊力は規格外でした。まるで暴走した巨大な獣が通過したようです。」


剣聖ゼノスが証言を伝える。


「しかも、王女を連れ去った犯人について、エルフの民は口々に『汚い人間』、『スウェットを着たデブ』と証言しております。」


会議室全体が、「スウェットを着たデブ」というキーワードに、一瞬で凍りついた。


2. 疑念とコウタの存在


長老Cが声を震わせる。


「ま、まさか……あの儀式の不純物か!?聖戦士コウタ!」


クロードが苛立ちを抑えながら答える。


「(苛立ちを抑えながら)はい。我々もその可能性を否定できません。しかし、我々はハルジオン王城でバルザークの残骸を目撃しましたが、彼にバルザークを討伐する力があるとは考えられません!」


聖女フィオナが同意する。


「彼の持つ魔力は、計測不能なほどに低かったはずです。もし彼がバルザークを倒したとすれば、それは運と偶然が重なった、ありえない奇跡です。」


クロードは、コウタの存在を「無能なトラブルメーカー」として報告せざるを得なかった。


彼は、自身の完璧な作戦が、この「無能なデブ」の破天荒で不可解な行動によって、次々と目標未達に終わっているという現実に、屈辱を感じていた。


「しかし、事実として、ハルジオンの敵は討伐され、奴隷市場の魔物も殲滅されました。そして、エルフの王女は、コウタに連れ去られた可能性が高い。彼は今、二人の女性ハルボウとユリナと、一匹のゴブリン(ゴブリン助)を連れているはずです。」


長老Aが怒りを露わにする。


「何という、醜聞だ!聖戦士が、魔王軍を討伐した裏で、王女を誘拐だと!?しかも、ゴブリンを連れているとは!直ちに、コウタの捜索と捕獲を命じる!彼の行動は、聖戦士の尊厳を汚すものだ!」


3. 聖戦士の追跡開始


クロードが静かに決意を固める。


「(静かに決意を固める)承知いたしました。彼の力は未知数ですが、必ず私が追跡し、王女たちを救出します。そして、彼の不可解な行動の真実を突き止めます。」


クロードは、コウタがハルジオン奪還と奴隷市場の殲滅という最大の功績を上げたにも関わらず、その醜悪な外見と不可解な行動ゆえに、「誘拐犯」として追われる立場になったという、皮肉な状況を理解した。


彼は、自分の完璧な戦略を乱すコウタの存在を、もはや無視できない脅威と見なしていた。


「コウタ殿……貴様は一体、何者なのだ。そして、なぜ『最強の神器』を持っているにもかかわらず、その不潔な外見を隠そうともしない……!」


こうして、五種の神器を揃え、「強靱無敵最強の聖戦士」となったコウタは、「汚い誘拐犯」という汚名を着せられ、イケメン勇者クロードの追跡を受けることになったのだった。

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