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ラスト

25

# 聖戦士コウタの物語  エピローグ:彼らの継承——美学が紡いだ新たな日常**


魔王討伐から数年。世界は、「汚い聖戦士」コウタという名の特異点が消滅した後、彼が命を懸けて繋いだ聖戦連合の手によって、新たな平和の時代を歩み始めていた。コウタの肉体は塵となったが、彼の汚い美学は、彼らの心の中で最高のチートとして生き続けていた。


### **元・勇者 クロード:美学の執事として**


かつて高潔な勇者であったクロードは、今やハルジオン王国の宰相代行という、コウタが最も嫌った内政の座に収まっていた。


執務室の机には、もはや魔力を持たないコウタの竹刀の握りが、鎮座している。


「高潔な正義など、無力だった。本当に世界を救うのは、あの男の、醜く、そして完璧な自己犠牲だったのだから」


彼は自らの聖剣を封印し、コウタが遺した脇役を輝かせるための物語を続けるべく、煩雑な政務に没頭する。「私は、あの男の汚い美学の、永遠の執事として仕えよう」。それは、クロードの新たな正義だった。


### **聖女 フィオナ:慈愛の最終防御の体現者**


聖都アウローラの信仰は、フィオナによって根底から覆された。彼女は、コウタの全てを捧げる献身にこそ神の愛を見た。


彼女の聖衣は質素になり、その手には、コウタの汚いチェックのシャツの切れ端を縫い込んだ小さな御守りが握られている。


「コウタ殿が教えてくださった。力とは、回復のためではなく、愛する者のために、自らを絶対的な盾とするためにある、と」


彼女の施す回復魔法は、もはや慈愛の最終防御の性質を帯びており、被災者や元・魔族の傷ついた心と体を包み込む。彼女は、無力の聖戦士が遺した、最も温かい光であり続けた。


### **剣聖 ゼノス:チートなき武人の誇り**


ゼノスは、聖戦連合軍の総司令官として、世界の防衛を担っていた。彼の剣は、もはや傲慢な最強の剣ではない。


「コウタ殿は、己の規格外の力を全て捨てて、魔王に挑んだ。その無謀さこそが、真の武人の誇りだった」


彼は、訓練兵に説く。「剣とは、守るべきものがなければ、ただの暴力だ。お前たちの剣は、希望のために振るえ」。彼は、コウタが身をもって示した献身のチートを、軍全体に浸透させていった。


### **賢者 オズワルド:メガネと解析の継承者**


オズワルドは、聖戦後の世界の法則を安定させるため、最高顧問として活動していた。彼はコウタが失ったビン底メガネと同じ形の眼鏡をかけ、常にデータと向き合っている。


「フム、解析完了。コウタ殿の超・鑑定チートは、彼の知恵という形で私に継承されたようだ」


彼は、最早チートに頼る必要はない。コウタの汚い知恵は、世界の平和を維持するための究極の解析システムへと昇華し、オズワルドの脳内で稼働し続けていた。


### **精霊剣 アリエル:絆と共存の橋渡し役**


エルフ王国を代表し、聖戦連合評議会の一員として活動するアリエルは、種族間の調和に尽力していた。


「彼は、最も汚い格好で、最も清廉な目的を貫いた。私たちが、種族の垣根を越えて手を取り合わなければ、彼の命に報いることはできない」


彼女は、コウタが命を懸けて築いた絆という名の強固な結界を維持し、無力な犠牲者がもたらした奇跡の平和を、次世代へと繋ぐ橋渡し役として活躍し続けていた。


---


## **大団円:異世界転生者たちの再会と、美学の最終章**


魔王を討伐し、世界に平和をもたらした後、コウタはオタク・チートの全てを使い果たし、肉体もろとも完全に消滅した。聖戦連合の仲間たちは彼の遺志を継ぎ、新たな世界を築き上げていった。


しかし、絶望から生まれた希望であるノア——かつてのゴブリン助——の力は、そこで終わりではなかった。コウタの消滅後、彼の無垢なる聖剣が砕け散った破片は、ノアの核となり、世界と世界を繋ぐ希望の力へと昇華していたのだ。


ノアは、コウタが最高の物語の結末として望んだであろう「元の世界への帰還と、愛する者との再会」を具現化するため、最後の力を使い始める。


---


日本のとある大都市の一角。


コウタは、かつて汚い聖戦士であった頃の記憶を全て失い、ごく普通の「異世界転生オタク男性」として、日常を謳歌していた。彼は、美学という名の信念だけを、無意識のうちに持ち続けていた。


コウタは、ネット通販の履歴を見ながら、ニヤニヤと口元を緩める。


「デュフフ……デュフフフフ……ついに手に入れた最強の育毛剤、ゴッドヘアボーンでござる!」


彼は、期待に胸を膨らませ、早速、鏡の前でその育毛剤を頭にフリフリフリ……。


「……やはり、詐欺でござったぁぁぁぁぁぁ!!」


鏡に映るのは、相変わらず薄毛に悩む、平凡な自分の姿。コウタは、膝から崩れ落ちた。


---


数日後。仕事帰り、コウタは筋トレジムで汗を流していた。


「デュフフフ。チートボディ、ゲットでござるよ!」


鏡に映るは、かつての規格外身体チートには程遠い、鍛え上げた平凡な肉体。しかし、その顔は満足げだ。


「男は、裸一貫でござるなァ!」


その瞬間、ジムの入り口に、三人の女性が立っている気配を感じた。


「えっ……その声は!」


コウタが振り返ると、そこにいたのは、信じられないほど美しい三人の女性だった。


一人は、金色の髪に大きな瞳を持つ、可憐な少女。もう一人は、紫色の長髪と知的な輝きを持つ、ミステリアスな美女。そして最後の一人は、透き通るような白銀の肌に光る瞳を持つ、神秘的な少女。


彼女たちは、コウタの姿を見て、それぞれの表情で語りかけた。


「見つけました!

 コウタ様……貴方様でございますか!」


「コウタしゃま、もう……もちもちじゃないんだね……」


ノア(元・ゴブリン助)は、静かにコウタの前に進み出た。


「ゴブリン助じゃないんです。私の名前は、ノア。ずっと伝えたかったことがあるの……」


そして、三人は声を揃え、コウタに向けて、心からの感謝を伝えた。


「「「ありがとう」」」


「ふぁ!!お、お、お、おたくら、どちらさまでこざるか?」


コウタの汚い美学は、異世界で全てを失い、デリートされたが、無垢なる希望の力によって、元の世界で最高の仲間たちとの再会という、最高の物語のエンディングを迎えたのだった。


**(聖戦士コウタの物語、完結)**



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