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# 第六十話:異空間の目覚めと、絶望の玉座


## 1. 塵の向こう側での意識の継続


凄まじい魔王の破壊魔力の直撃を受け、塵一つ残さずデリートされたはずのコウタの意識は、途切れることなく続いていた。


彼は、時間も空間も意味をなさない、完全な『真っ暗な闇』の中で、自分の意識が、汚いTシャツ姿のまま漂っているのを感じた。


自己嫌悪と、仲間を守れなかったという絶望的な敗北感が、コウタの魂を襲う。


「ああ、なんてザマでござるか……」


彼の意識が、闇の中で震える。


「拙者の『汚い美学』は、最高の結末どころか、最悪の敗北で終わった。ゴブリン助も、ハルボウ殿も、クロード殿たちも……全て、拙者の『無能』ゆえに……」


## 2. 謎の美女との邂逅と『法則の光』


その時、意識の中で柔らかな光と必死な声を感じた。


「コウタ様! コウタ様、目を覚ましてください!」


コウタは、その声に導かれるように、意識の焦点を合わせた。


彼の傍には、夜空のような深みを持つ長い黒髪と、星々のような輝きを持つ瞳を持つ、一人の美しい女性が跪いていた。


彼女の身に纏うローブは、この世界のものとは異なる、純粋な『法則』のような光沢を帯びていた。


「……ここは? そなたは……?」


彼の意識が、混乱する。


「そ、それがしは負けたのか? ゴブリン助を、仲間を、守れなかったでござるか……」


女性は、その瞳に強い決意を宿し、コウタの意識体に向けて両手をかざした。


「いいえ! まだ! まだ負けてない!」


彼女の声が、力強い。


「貴方の『魂』は、魔王の『破壊』によって肉体を失いましたが、この『世界を超えた領域』に、私が辛うじて引き止めました!」


## 3. 魔王城、絶望の玉座の間


場面は、魔王城の玉座の間へと切り替わる。


コウタの消滅により、聖戦連合は完全に精神的支柱を失っていた。


クロードは膝をつき、フィオナは声もなく泣き崩れている。


魔王は、コウタの消滅を確認し、嘲笑する。


「『聖戦士』はデリートされた」


彼の声が、勝利の確信に満ちている。


「これで、この世界を縛る『物語』の楔は消えた。貴様ら『脇役』に、抵抗する『力』も『理由』もない!」


魔王は、絶望に打ちひしがれる彼らを見下ろし、容赦なく絶対的な破壊の魔力を練り上げる。


その力は、先ほどコウタを塵にした破壊力を上回っていた。


クロードは立ち上がろうとするが、その足は震え、動けない。


ゼノスの握る剣が、恐怖で床に落ちる。


ユリナは、『魔王討伐の成功確率:0.000%』という絶望的な計算結果を、頭の中で何度も繰り返していた。


「貴様らの『聖戦』は、ここで終わりだ」


彼の掌に、闇の魔力が凝縮されていく。


「そして、『希望』などという無価値な妄執を、この世界から永遠にデリートしてやる!」


絶対的な破壊が、聖戦連合へと向けられる。


## 4. ハルボウとユリナ、最後の防壁


その瞬間、ハルボウが震える足で立ち上がった。


彼女の小さな体が、クロードたちの前に立ちはだかる。


「……っ、待って!」


彼女の声は震えていた。


だが、その瞳には、コウタから受け取った『希望』が宿っている。


「コウタしゃまが……コウタしゃまが、私たちに遺してくれたものを……無駄にしたくない!」


彼女は、胸に抱いていたコウタのチェックシャツを、きつく握りしめた。


「これは……コウタしゃまの『絶対防御』! 私が……私が、みんなを守る!」


ハルボウの小さな体から、虹色の光が溢れ出す。


それは、コウタがガラマード戦で彼女に託した『絶対防御チート』の力だった。


「絶対防御、展開!」


虹色の光が、聖戦連合全体を包み込む防壁を形成した。


魔王の放った破壊の魔力が、その防壁に直撃する。


ドガァァァァン!!


凄まじい衝撃が、玉座の間を揺るがした。


ハルボウの防壁は軋み、彼女の小さな体が震える。


「うっ……く、ぐぅっ……!」


「フン、小娘が。その程度の防御で、我が力を防げると思うか」


魔王は、さらに魔力を増幅させる。


防壁にヒビが入り始めた。


「あ、ああ……っ、もう、限界……!」


その時、ユリナが立ち上がった。


「ハルボウ様、一人で抱え込まないでください」


彼女の首には、もう奴隷の鎖はない。


フィオナの慈愛によって癒された心と、魔力が、今、解放される。


「私は……『エルフ王女』です」


彼女の体から、深緑の光が溢れ出す。


それは、エルフの血統に眠る『古代精霊魔法』の力だった。


「エルフの血統に眠る力よ、目覚めなさい。『光の精霊術・極大結界(エルヴンシールド・マキシマ)』!」


深緑の光が、ハルボウの虹色の防壁を内側から支え始める。


二つの光が絡み合い、二重の防壁を形成した。


「ご主人様が……いえ、コウタ様が私たちに託してくれた『希望』を、こんなところで潰させるわけにはいきません!」


二重の防壁が、魔王の破壊魔力を辛うじて防ぎ続ける。


「……フン、小賢しい」


彼の目が、僅かに細まる。


「だが、時間稼ぎにしかならぬ。貴様らの防御が崩壊するのは、時間の問題だ」


ハルボウとユリナは、全身から汗を流しながら、必死に防壁を維持し続けた。


クロードは、二人の背中を見て、握りしめた拳を震わせた。


「……コウタ殿。貴殿が遺したものは、こんなにも……」


フィオナは涙を拭い、立ち上がる。


「私たちも……立ち上がらなければ!」


オズワルドは、震える手で杖を握り直した。


「そうだ……コウタ殿の『美学』を、無駄にするわけにはいかない!」


ゼノスは、床に落とした剣を拾い上げた。


「まだだ……まだ終わっていない!」


聖戦連合は、ハルボウとユリナが命を懸けて守る防壁の内側で、再び立ち上がり始めた。


その時、コウタの身体があった場所から、極めて微弱な、しかし、熱い意志を持つような光が放たれた。


---


# 第六十一話:『知恵』と『慈愛』の究極覚醒


## 1. 賢者オズワルドの『鑑定チート』継承


ユリナとハルボウが形成した二重の最終防壁が、魔王の攻撃を辛うじて防ぎ続ける中、賢者オズワルドは自らの役割――コウタが失った『超・鑑定チート』の代役――を果たすべく、極限の状態にあった。


オズワルドは、コウタの『無力』によるデリートという絶望的な情報を受け入れながら、その瞳を魔王城の魔力コアの残骸に集中させた。


(コウタ殿の『美学』は、『知恵』を以て『力』を凌駕すること! 私はコウタ殿の『メガネ(鑑定)』を失ったが、私の『知恵』はまだ失っていない!)


オズワルドは、自身の『解析チート』を限界までブーストさせた。その瞬間、彼の脳裏に、コウタが『超・鑑定チート』で見ていたであろう、世界の法則を支配する純粋な数式と情報が、一瞬だけ再現された。


究極解析(アルティメット・デコード)!」


オズワルドの身体から、青白い光が放たれ、彼の解析能力はコウタの『超・鑑定チート』に匹敵するレベルへと覚醒した。彼は、魔王城の玉座の間にある魔王の魔力の循環システムの、目に見えない微細な亀裂を発見した。


「クロード様! 魔王の魔力は、左側の柱を媒介に、外部から強制的に供給されています! その柱を破壊すれば、魔王は『絶対的な破壊』の力を維持できない!」


オズワルドは、コウタの『知恵』を継承し、魔王を打ち破るための具体的な『弱点』を、仲間たちに提供した。


## 2. 聖女フィオナの『慈愛の絶対防御』


一方、聖女フィオナは、コウタがデリートされた瓦礫の上に静かに立ち、回復魔法を絶え間なく仲間たちに供給していた。彼女の役割は『ヒーラー』だが、魔王の攻撃はもはや、『回復』が追いつかないほどの次元の破壊力を持っていた。


(コウタ殿は、『絶対防御チート』を私ではなく、ハルボウ様に『希望』として譲渡された。私の『慈愛』は、『絶対的な破壊』の前で、何の力にもなれないのか……!)


フィオナは、コウタの『汚い美学』の核心を思い出した。それは、『自己の全てを捧げる献身』。


フィオナは、自らの『聖女の力』の源である『純粋な慈愛』を、回復のためではなく、『仲間を絶対的に守る』ために捧げることを決意した。


「神よ! この『慈愛』を、『絶対的な盾』として捧げます! 慈愛の最終防御(アガペー・プロテクト)!」


フィオナの全身から、白銀の光が溢れ出し、彼女自身が巨大な光の柱となった。彼女の魔法は、『回復』の法則を越えて、『慈愛』を具現化するという、究極の防御魔法として覚醒した。


フィオナの『慈愛の最終防御』は、ユリナとハルボウが張る二重の防壁をさらに内側から支え、聖戦連合全体を、絶対的な破壊から守り抜く、三重の守護結界を完成させた。


## 3. 『美学』を継いだ聖戦連合の反撃


これで、聖戦連合は、コウタの失われた全ての神器の役割を、自らの『覚醒した力』によって完全に補完した。


* ハルボウ:コウタから継承した『絶対防御』

* ユリナ:『魔力制御』と『防御』の代替となる『光の精霊術』

* オズワルド:『超・鑑定チート』の代替となる『究極解析』

* フィオナ:『回復』と、防御の補完となる『慈愛の最終防御』

* ゼノスとクロード:『規格外身体チート』と『攻撃チート』の代役


クロードは、オズワルドの指示を受け、ゼノスと共に、魔王の『魔力の供給源』である左側の柱へと突撃した。


「コウタ殿! 貴殿の『美学』は、我々が受け継いだ! ここからは、我々の『正義』の物語だ!」


魔王は、コウタの消滅で終わるはずだった『物語』が、彼の『無力な仲間たち』によって、『絶対的な破壊』に逆らって続いていることに、激しい怒りを覚えた。


「許さぬ! この『無価値な抵抗』を、私が全てデリートしてくれる!」


---


# 第六十二話:『絶対破壊』の破綻と、仲間たちの勝利


## 1. 魔王の供給源、破壊


オズワルドの『究極解析』が指し示した魔王の弱点――左側の柱――に向けて、クロードとゼノスは突進した。


魔王は、ユリナ、ハルボウ、フィオナが三重に張った防御結界を突破しようと、絶対的な破壊の魔力を継続的に放つ。結界は軋み、今にも崩壊しそうだったが、コウタの『汚い美学』から継承された『献身の意志』が、それを支え続けた。


ゼノスは、『規格外身体チート』を失ったコウタの代役として、魔王の魔力の奔流の中を突き進む。


「コウタ殿の『命をかけた隙』を、無駄にはせぬ!」


クロードは聖剣に全ての浄化魔力を込め、ゼノスが切り開いたルートを一気に駆け抜けた。そして、魔王の視線が集中していない左側の柱へと、渾身の一撃を叩き込んだ。


ゴオォォォン!! ガキャアアアン!!


柱は、魔王の力の供給源として機能していたため、その破壊は玉座の間全体を揺るがすほどの衝撃だった。


## 2. 魔王の力の破綻


柱が崩壊した瞬間、魔王の体から溢れ出ていた絶対的な魔力が一気に不安定になった。魔王の力は、『魔王城の無限供給』によって成り立っており、そのシステムが破壊されたのだ。


「ぐぅっ……! 馬鹿な! この『力』が、こんな『些細な手段』によって……!」


力が破綻した魔王は、もはや『絶対的な破壊』を維持できなくなり、ユリナたちの防御結界に対する圧力が急激に低下した。


「今です! 魔王の魔力が安定していません! 攻撃の好機です!」


「魔王本体の防御システムは、供給源喪失により極端に低下! 弱点は、右胸のコア!」


## 3. 『正義』と『希望』の最終連携


クロードとゼノスは、すぐに魔王本体へと向き直った。しかし、魔王は最後の力を振り絞り、自身の身を守るための闇の波動を放つ。


その波動は、物理的な攻撃ではなかったが、『精神的な絶望』を植え付ける効果を持っていた。


ハルボウは、コウタから継承した『絶対防御』の覚醒により、その波動の影響を受けなかった。彼女は、『王国の希望』として、最後の役割を果たす。


「みんな! 希望を忘れないで! コウタ様が、私たちのために全てを捨てたことを!」


ハルボウの『無垢な希望』の叫びが、クロードたちの精神的な混乱を打ち破った。


ユリナは、『光の精霊術』で魔王の放った闇の波動の進路を逸らし、クロードとゼノスへと続く光の道を作った。


クロードとゼノスは、最後の力を込め、魔王の右胸のコアへと向けて、二つの刃を突き立てた。


ギャァァァァァ!!


魔王の絶叫と共に、その闇のコアは貫かれ、魔王の身体は急速に光の粒子となって崩壊し始めた。


## 4. 勝利と、美学の証明


魔王が完全に消滅したことで、玉座の間は静まり返った。聖戦連合は、『無力な主人公』を失いながらも、その『美学』が遺した『知恵、忠誠、希望、慈愛』という名のチートの継承によって、勝利を掴み取った。


クロードは、膝をつき、聖剣を杖にして息を整えた。


「我々は……勝った。コウタ殿の『美学』が、我々の『力』と『正義』を完成させたのだ……」


玉座の間には、勝利の光が満ち溢れていたが、その光の届かない場所――コウタが消滅した場所――には、虚無が残されていた。


聖戦連合は、コウタの『汚い美学』が『最高のエンディング』ではなく、『最も悲劇的な敗北』で終わったことを、まだ知らない。

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