21
## 第五十七話:玉座の間、魔王降臨
---
## **1. 螺旋回廊の突破**
無限収納リュックの自滅的なチート利用により、魔王城の結界は破壊された。
コウタ一行は最上階の玉座の間へと続く、最後の螺旋回廊を駆け上がった。
クロード、ゼノス、アリエルの三人が先頭に立ち、コウタとユリナ、ハルボウを厳重に守る。
ユリナは回復した魔力で周囲の魔族の残党を牽制し、オズワルドは常に魔力の流れを解析し、罠を回避した。
コウタは、神器を全て失い、身体チートも機能停止したため、その体力はもはや常人以下だった。
だが、彼の『汚い美学』という精神的な光は、一切揺らぐことはなかった。
コウタ(内心)
(フム。これで『五大神器デリート』は完全に完結でござる)
彼の口角が、僅かに上がる。
コウタ(内心)
(『究極の無能』となった主人公が、『ラスボス』と対峙する……これほど美しい『最終決戦ロールプレイ』があろうか!)
---
## **2. 玉座の間、魔王の威圧**
ついに、螺旋回廊を抜けたコウタ一行は、魔王城の最奥、玉座の間へと到達した。
玉座の間は、天井が高く、空間全体が魔王の濃密な魔力で満たされている。
その中央、巨大な玉座に腰掛けていたのは、この世界の闇の支配者、魔王だった。
魔王は、四天王の誰とも異なる、静かで絶対的な威厳を放っている。
その目は、コウタたちを単なる「塵芥」として見下ろしていた。
魔王「随分と、騒がしい客人たちだ」
その声は、低く、禍々しい。
魔王「そして、我が『四つの力(四天王)』を、全て塵にしたのは貴様か、異世界の汚い人間よ」
魔王が静かに問いかけるだけで、その場の魔力濃度が上がる。
クロードたちは膝をつきそうになるほどの重圧を感じた。
クロード「魔王! 貴様の野望は、ここで終わりだ!」
---
## **3. 魔王の核心と、コウタへの問い**
魔王はクロードを一瞥し、その視線をコウタの汚いTシャツと破れたGパンの残骸、そして盲目の顔に固定した。
魔王「フム。貴様は、私と対峙するすべての『力』を失っている」
彼の目が、コウタを値踏みする。
魔王「神器も、身体の規格外な力も、全てだ。私の部下を討伐するために、自らの『全て』を削り取ったか。哀れな道化よ」
魔王は、コウタが捨てた『汚い美学』の最終的な結果を、正確に理解していた。
魔王「貴様の行動は、『自己犠牲』としては完璧だ。だが、貴様が失ったものは、『力』そのものだ」
彼の声が、玉座の間に響く。
魔王「貴様は何故、その醜い命を懸けて、『無力』になることを選んだ? 貴様が守ろうとした『美学』とは、一体何なのだ」
魔王の問いは、コウタの存在意義、そして彼が選んだ『汚い美学』の核心を問うものだった。
コウタは、神器なき身、盲目、無力という究極の状態に立たされながら、静かに、そして自信に満ちた声で答えた。
コウタ「デュフフフフフ! 『純粋な破壊』の魔王殿には、理解できぬでござるよ!」
彼のビン底メガネのない顔が、狂気に満ちた笑みを浮かべる。
コウタ「拙者の『美学』は、『最強のチート』を振るうことではない。『最高の物語のエンディング』を迎えることでござる!」
コウタは、ぼやけた視界で魔王を見据えた。
コウタ「『汚い手段で得たチート』を、『清廉な仲間』のために全て捧げ、『裸一貫の無能な主人公』が『ラスボス』に挑む……これこそが、『究極の救済ロールプレイ』でござる!」
魔王は、コウタの答えを聞き、初めて玉座から立ち上がった。
魔王「なるほど……。貴様は、『物語』を完成させるために、私に挑むのか」
彼の巨大な体が、コウタを見下ろす。
魔王「よかろう。貴様の『美学』が、私の『破壊』に勝るか、試してやろう」
魔王は、その圧倒的な魔力を解放し、最終決戦の幕が切って落とされた。
---
# 第五十八話:無力の聖戦士と、聖戦連合の覚悟
---
## **1. 魔王の絶対的な力**
魔王が魔力を解放した瞬間、玉座の間は世界の終わりのような重圧に包まれた。
四天王の魔力とは次元が異なる。
それは存在そのものが「ルール」であり、「否定」であるかのような力だった。
クロードたちは、その絶対的な魔力の前に、武器を握る手が震え、一歩も前に出ることができなかった。
魔王「まずは、貴様の『脇役』たちをデリートしてやろう」
彼の掌に、闇の魔力が凝縮されていく。
魔王「『無力』になった貴様にとって、彼らがいる限り、『美しい自己犠牲』は成立しないだろう?」
魔王は、掌に凝縮させた闇の魔力を、クロードたちに向けて放とうとした。
---
## **2. チートなき聖戦士の防御**
その瞬間、コウタは動いた。
神器を全て失い、身体能力も常人以下、視界もないコウタは、闇の魔力の流れと空気の振動だけを頼りに、魔王とクロードたちの間に立ちふさがった。
汚いTシャツ姿の上半身を晒して。
彼は、もはや『絶対防御チート』を持たない。
彼の防御力はゼロだ。
コウタ「フンッ! 『ラスボス』たる魔王殿が、『主人公』よりも先に『脇役』に手を出すなど、『最高の物語の演出』として許されぬでござるよ!」
魔王は、コウタの無謀な行動を見て、嘲笑を浮かべた。
魔王「哀れな道化よ。貴様はもう、『無力な人間』にすぎない」
彼の掌から、魔力弾が放たれる。
魔王「その醜い肉体を、私の一撃で塵に変えてやろう」
魔王が放った魔力弾は、コウタのTシャツに直撃した。
---
## **3. 『仲間』という名の最後のチート**
ズガァァァン!
コウタは、凄まじい衝撃を受け、鮮血を吐きながら吹き飛ばされた。
彼の汚いTシャツは、一瞬で引き裂かれ、皮膚に深い火傷と裂傷を負った。
しかし、コウタは意識を失わなかった。
彼は、瓦礫の上で痙攣しながらも、魔王に向かって最後の力を振り絞って笑った。
コウタ「デュフフフフ……拙者の『無力な肉塊』は、貴殿の『純粋な破壊』の前で、一瞬でデリートでござるか……」
クロードたちは、コウタの『真の無力』と、『命を懸けた献身』を目の当たりにし、ついにその「正義」の定義を完全に塗り替えた。
クロード「コウタ殿……貴様は、本当に……!」
剣聖ゼノスは、コウタが自身の『命』を使って魔王の攻撃を受け止めたことに、武人としての魂を激しく揺さぶられた。
ゼノス「我々の『力』が、貴様の『美学』を裏切るものか!」
彼は聖剣を構え直した。
ゼノス「オズワルド、情報解析を続けろ! アリエル、結界を張れ! 総員、コウタ殿のために、盾となれ!」
ユリナとハルボウは、傷つきながらも立ち上がる。
魔王の絶対的な力の前に、コウタが築き上げた『聖戦連合』が、『無力の主人公』のために、『最後のチート』として立ち上がった。
コウタの『汚い美学』は、『全てを捧げることで、最高の仲間を得る』という、究極の『救済ロールプレイ』を完成させたのだ。
---
# 第五十九話:『無垢なる忠誠』のデリートと、魔王の勝利
---
## **1. 『無力』な主人公への裁き**
コウタは、全身から血を流しながらも、魔王の攻撃を受け止め続けた。
彼の『汚い美学』は、『全ての力を捨て、無力になることで、最高の仲間を得る』という究極の『救済ロールプレイ』を完成させた。
だが、その肉体は限界を超えていた。
魔王は、コウタの無力な肉塊が、『物語の結末』を押し付けようとしていることに激しい憎悪を抱いていた。
コウタは、クロードに投げつけを要求し、玉座の背後にある『魔力コア』への特攻を試みた。
クロードは涙を堪え、最後の力でコウタを魔王の玉座へと投げつけた。
魔王「愚かな道化よ」
彼の声が、怒りで震える。
魔王「貴様が『全てを失った無価値な肉塊』であることは事実。だが、貴様の『美学』に、私が『敗北』という結末を与えるつもりはない!」
魔王は、コウタの特攻を阻止するため、玉座の間に凝縮されていた全ての闇の魔力を、コウタの身体へと一点集中させた。
---
## **2. 『無垢なる忠誠』の盾**
その瞬間、聖戦連合の仲間たちの防御網の隙間から、ゴブリン助が、コウタが投げられた軌道の真下へと、必死に走り込んだ。
ゴブリン助の麻袋には、コウタが失った神器の破片が収められている。
彼は、『言葉』を持たなかった。
だが、『最も無垢な忠誠』を持っていた。
彼は、主人が『無力な肉塊』として消滅することを、本能的に許せなかったのだ。
ゴブリン助は、魔王の放った闇の魔力が、コウタに直撃する一瞬前に、コウタの瓦礫の上へと飛び乗った。
そして、コウタの身体を小さな背中で庇った。
コウタは、盲目のまま、自分の背中にぶつかった小さな衝撃を感じた。
コウタ「ゴブリン助……! 何を、して……!」
---
## **3. ゴブリン助、デリート**
ドガァァァァァァン!!
魔王の放った闇の魔力は、ゴブリン助の『無垢なる忠誠』と『無力な肉体』を、一切の容赦なく直撃した。
ゴブリン助は、コウタの『汚い美学』の象徴であった神器の破片が入った麻袋もろとも、塵一つ残さず、完全に闇の魔力によってデリートされた。
ゴブリン助の死と引き換えに、コウタの身体に直撃するはずだった魔力は、一瞬だけ減衰した。
コウタは、その減衰した魔力の直撃を受け、全身に甚大なダメージを負い、再び鮮血を吐きながら瓦礫の上に叩きつけられた。
しかし、ゴブリン助の犠牲によって、コウタの『特異点』は一瞬だけ守られた。
---
## **4. 主人公の絶望的な敗北**
魔王は、『無力なゴブリン』の犠牲など眼中になかったが、コウタがまだ生きていることに苛立った。
魔王「まだ生きているか、しぶとい道化め!」
彼の怒りが、魔力となって溢れ出す。
魔王「しかし、貴様の『忠誠』も、もはや塵となった! 貴様の『美学』は、『最も無垢な仲間を死なせる』という、『最悪の結末』で終わるのだ!」
魔王は、二度目の、そして完全な破壊を意図した闇の魔力をコウタへと放った。
コウタは、盲目のまま、ゴブリン助が消滅した場所に向けて、言葉にならない絶叫を上げた。
彼は、自分の『汚い美学』が、最も無垢な仲間を殺したという事実に、最高の自己犠牲の達成感ではなく、絶望的な敗北を感じていた。
コウタが『無力な肉塊』として魔王の第二撃の直撃を受ける瞬間、彼の脳裏には、『全ての神器を失い、最後に最も大切なものを失う』という、『最悪のエンディング』のテロップが流れた。
ドガァァァァァァン!!
コウタの身体は、魔王の第二撃を受け、塵一つ残さず、完全に闇の魔力によってデリートされた。
聖戦連合の仲間たちの絶望と、コウタの『汚い美学』が魔王の力によって完膚なきまでに打ち砕かれた瞬間だった。




