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第二十四章:勇者の休息と聖戦の再開


玉座の間の豪華な寝台で、ハルボウとユリナの団扇の風を受けながら、コウタは束の間の休息を楽しんでいた。彼の心は「最近忙しかった」という純粋な疲労感で満たされていた。


「デュフフ……気持ちいいでござる。やはりロールプレイには休息が必要でござるな」


コウタはゆっくりと目を開け、ビン底メガネを光らせた。


「……ところで、ユリナ殿(仮)」


「はい、ご主人様。何かお望みでございますか?このメスブタ奴隷の全てを、どうぞお使いくださいませ」


ユリナが恭しく頭を下げる。コウタは満足げにうなずき、『超・鑑定チート』を発動させた。視界に青白い文字が浮かび上がる。


周辺諸国分析:

侵攻危険度:急上昇中(78% → 92%)

特に西方からの脅威:魔王軍主力部隊確認

推定目標:聖都アウローラ

内政安定度:Sランク(チート効果持続中)


コウタの口元に笑みが浮かんだ。


「超・鑑定チートによると、このハルジオン王国は周辺国からの侵攻危険度が急上昇しているでござる。拙者が内政チートで最高の国を創っても、外敵の侵入があればロールプレイが台無しでござるよ!」


ハルボウが驚いて飛び上がった。


「な、なんですって!?コウタ様の清らかな王国を汚そうなどと、許せません!私が最前線で……」


「フンッ!」


コウタが竹刀を床にトンと突き立てる。


「敵の主力を叩くのが、最強の聖戦士の戦略でござる!魔王軍の最も大きな脅威は、この国の西側、『聖都アウローラ』に集中しているでござるな。魔王軍の最終目標は、そちらでござる!」


コウタは再び超・鑑定チートを発動させ、外交的な評価を確認した。


戦略評価:

純粋な武力コウタ:SSS

外交的信用ゼロ:D

結論:外交役が形式的なロールプレイのために必要。武力制圧だけでは物語の「味」が薄れる。


「デュフフフ。決定でござる!」


コウタは立ち上がり、三人を見渡した。


「ハルボウ、ユリナ。貴殿たちには、拙者の遠征に同行することを命ずる!ただし、戦闘は一切不要でござる!」


ハルボウは困惑した様子で首をかしげた。


「えっ!?コ、コウタ様の壮大な遠征に、この戦闘力のない私が同行しても……」


「足手まとい?とんでもない!」


コウタの目がキラリと光った。


「ユリナ殿の『エルフの血統』は、アウローラのエルフ族との外交チートに不可欠な『鍵』でござる!そして、ハルボウは、ハルジオン王国の正統な代表として、同盟の儀式的なロールプレイに必要でござる!貴殿たちは、拙者の外交チートの補佐役でござるよ!」


ユリナの目に涙が浮かんだ。


「わ、私の血統が……外交の鍵に……!ご主人様、この栄誉、メスブタ奴隷として全力で全ういたします!」


ハルボウも感動で震えていた。


「コウタ様の壮大な外交戦略に、この私が……!命に代えても、コウタ様のロールプレイの証人となりましょう!」


コウタは満足げに頷き、部屋の隅でじっと立っている黒ローブの姿に目をやった。


「そして、もう一人!最強の魔導士、ゴブリン助!貴殿も同行でござる!貴殿は、拙者の絶対的な護衛でござる!」


ゴブリン助は無言でコウタの傍らに移動した。全身を覆う黒いローブと仮面が、謎めいた威圧感を放っている。コウタは超・鑑定チートでその外見を確認し、完璧な「謎の強力な魔導士」としての『格』を演出していることに満足した。


「デュフフフ。貴殿たちは『聖戦士コウタの絶対守護チート』のもと、戦闘の心配は一切無用でござる!しかも、道中の煩わしい行軍は、全て『次元転移ゲートチート』でスキップでござるよ!」


コウタは竹刀を高く掲げた。


「フンッ!ハルジオン王国は、アシュレイ殿に内政チートを任せる!拙者の聖戦は、今、再開でござる!」


ビン底メガネが強く光り、玉座の間に青白い光を放つ円形の巨大なポータルが出現した。渦巻くようなエネルギーの流れが、空気を震わせる。


コウタは迷うことなく、三人の補佐役を伴ってポータルへと足を踏み入れた。光に飲み込まれていく彼らの背後で、アシュレイが深々と頭を下げているのが見えた。


---


第二十五章:転移ポータルと因縁の衛兵


ポータルを潜り抜けたコウタ一行が降り立ったのは、聖都アウローラの外壁から数百メートル離れた、鬱蒼とした森の中の小さな空き地であった。転移のエネルギーが静まり、周囲の風景がはっきりと見えてきた。


「デュフフフ!これが『次元転移ゲートチート』でござる!ロールプレイの時短には、最適でござるな!」


コウタは超・鑑定チートを発動させ、周囲をスキャンした。


位置確認:聖都アウローラ外縁部

安全性:高(敵の巡回ルートから外れた位置)

隠密性:Aランク(茂みによる遮蔽効果あり)

聖都までの距離:約800m


「完璧なロケーションでござるな」


ハルボウは周囲を見渡し、目を丸くした。


「こ、ここがアウローラ……!一瞬で着いたなんて……!コウタ様、神の御業です!」


ユリナは目を閉じ、深く息を吸い込んだ。彼女のエルフとしての感覚が、故郷の空気を感じ取っている。


「(目を閉じ、周囲の空気の匂いを嗅ぎ)私の故郷の空気です。ご主人様、道中の困難を全て回避してくださり、感謝いたします」


ゴブリン助は無言でコウタの背後に立ち、周囲に警戒の目を光らせていた。その黒いローブが微かに揺れ、不気味な存在感を放っている。


一行がポータルの残光から完全に現れた瞬間、茂みの向こうから物音が聞こえた。


ガサガサ……と草を踏む音。


そして、疲れたようなため息。


「はあ……今日も巡回か。魔族の出没が増えてから、勤務時間が倍になったぜ……」


一人の衛兵が、よろよろと歩きながら現れた。彼の鎧は傷つき、顔には疲労の色が濃く出ている。目の下にはクマができ、数日間まともに眠っていないことがわかる。


衛兵は最初、コウタ一行に気づかなかった。ただ下を向いて、ぶつぶつと愚痴をこぼしながら歩いていた。


「あの汚いデブめ……奴隷市場をぶっ壊したせいで、俺たちの仕事が……」


その時、彼はふと顔を上げた。


そして、目の前に立つ異様な集団を見て、硬直した。


汚いチェックシャツ(前回はスウェットだったが、衛兵の記憶では「汚い服」として同一視されている)にビン底メガネ、異臭を放つ竹刀を持つ肥満体の男。


その隣には、かつての王女ユリナが、奴隷のような服を着て恭しく立っている。


更には、奇妙な黒ローブの人物と、貴族風の男が。


衛兵の脳裏に、あの忌まわしい日の光景がよみがえった。奴隷市場が破壊され、衛兵隊が蹴散らされ、王女が連れ去られる瞬間。


「お、おい!貴様は……!まさか、あの時の……!」


衛兵の声が震えた。疲れ切った体に、アドレナリンが一気に流れ込む。


彼は剣を抜き、コウタに向けた。手は震えているが、目には憎悪の炎が燃えていた。


「貴様!奴隷市場を破壊し、王女殿下を誘拐した、あの汚い聖戦士ではないか!よくもぬけぬけと戻ってきたな!」


コウタは衛兵をじっと見つめ、ゆっくりと笑みを浮かべた。


「デュフフ。貴殿は、以前拙者の『ロールプレイ』を邪魔しようとした『名もなきモブ衛兵』でござるな。まさか、ここで再会するとは!最高の演出でござるよ!」


ハルボウが前に出ようとした。


「コウタ様を『汚い』などと!この無礼者めが!跪け!」


ユリナも冷たい視線を衛兵に向ける。


「ご主人様に剣を向けるなど、世界の真理に対する反逆ですわ!」


「クギャア!(不敬なモブ敵でござる!)」


ゴブリン助が低くうなる。


衛兵はますます混乱した。王女がなぜ「ご主人様」などと呼んでいるのか、なぜあの汚い男に従順なのか。


だが、彼の怒りは収まらない。


「王女殿下!どうかあそこにいらっしゃい!この汚い男からお助けします!」


ユリナは冷笑した。


「愚かなる者。ご主人様こそが、この世界の真の救世主でございます。あなたのような目先の武力に頼る者が、何を理解できましょうか」


コウタはゆっくりと竹刀を構えた。


「デュフフフ。では、拙者が聖都アウローラでの新たなロールプレイを開始するにふさわしい、プロローグを飾らせていただくでござる」


衛兵はコウタの異様な自信に一瞬たじろいだが、すぐに気持ちを引き締めた。彼は剣をしっかりと握りしめ、突撃の構えを取った。


「くっ……覚悟しろ!」


コウタはビン底メガネを光らせ、ただ悠然と立ち尽くしていた。


聖都アウローラを背景に、因縁の再会が、新たな戦いの幕開けを告げようとしていた。

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