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聖戦士コウタの物語


第一章 異世界召喚とスウェットの勇者


Ⅰ. 儀式の失敗とただ一人の追放


聖都アウローラの大聖堂。魔王の危険を前に、長老たちが異世界の勇者召喚の儀式を行った。


光の中から現れたのは、デブ、ハゲ、不潔そうに見える男、コウタだった。彼はまだチート装備を持っていないため、ただの無能な中年男としての力しか持っていなかった。


コウタが得意げに言う。

「デュフフフフ!ふむ、召喚に成功でござるな!拙者こそ、この世界を救う聖戦士コウタでござるよ!」


長老Aが魔力測定の結果を見て、悲鳴を上げる。

「(魔力測定の結果を見て、絶叫)何というバグだ!魔力は一般人以下、身体能力もふつう!そしてこの不潔な外見!聖戦士の尊厳を汚すにもほどがある!」


同時に召喚されたイケメン勇者クロードは、理想の仲間たちと共に聖都の希望となっていた。


コウタはすぐに「儀式の不純物」として追放が決まった。


長老Bが怒って言う。

「貴様、我々の聖なる儀式を汚した罪は重い!だが、異世界の者ゆえ、殺しはせぬ。すぐに聖都から立ち去れ!」


コウタが肩をすくめる。

「(肩をすくめ)デュフフ。追放とは、テンプレ通りの展開でござるな。だが、拙者のチート能力は『異世界の神器』をそろえねば発動しないのでござるよ!拙者の最強の装備さえあれば、魔王など一瞬でデリートでござる!」


長老Cが笑う。

「笑止!貴様はただの裸一貫のデブではないか!」


Ⅱ. スウェットの勇者、旅立つ


長老たちに押され、コウタは召喚された時のそのままの姿で大聖堂から追い出される。


彼が身につけていたのは、薄汚れたスウェット上下だけだった。もちろん、チート発動の必須装備であるチェックシャツもビン底メガネも持っていない。


コウタが聖都の裏門に立ち、空を見上げる。

「(聖都の裏門に立ち、空を見上げる)フム。これが、聖戦士コウタの波乱に満ちた旅立ちでござるな。召喚バグ、無能扱い、そしてこのスウェット一丁という、あまりにもハードコアな初期装備……最高でござる!」


「だが、拙者の真のチートは、この異世界の神器を自分の力で集めることこそにある!まずは、召喚時に落としたと思われる『ビン底メガネ』の捜索から始めるでござるよ!」


しかし、彼はまだチート能力を出していないため、単なるデブの中年男だ。空腹と疲れが彼を襲う。


「くっ……!魔力がなければ、こんな少しの空腹すら満たせぬとは……!悔しいでござる!」


Ⅲ. 最初の試練:食料調達


コウタは、聖都の城下町をさまよう。


そのデブ、ハゲ、不潔な外見とスウェットという異世界の奇妙な服は、周りの人から不思議そうな目と嫌な目を向けられる。


町人Aが言う。

「なんだあの汚いデブは。変な服を着やがって。」


町人Bが続ける。

「気持ち悪い。聖都の衛兵はあんなのを野放しにするのか?」


コウタが内心で考える。

「(内心)デュフフ。流石はファンタジー世界。拙者の『異世界のオーラ』に、こわがっておるでござるな。だが、まずは腹ごしらえでござる。」


彼は屋台のパン屋に近づくが、店主はコウタの不潔な外見に顔をゆがめ、相手にしない。


パン屋の店主が言う。

「なんだい、お前さん。ツラと服装に似合わず、妙な喋り方をするね。汚い手でパンに触るんじゃないよ!」


コウタがプライドを刺激される。

「(プライドを刺激され)フム!拙者は聖戦士でござるぞ!この程度の『施し』、差し出すが礼儀というものでござる!」


パン屋の店主が笑う。

「へっ!聖戦士様がスウェット一丁でパンをたかるのかい?衛兵を呼ぶぞ!」


コウタは、チート能力がなければただの無力なオタクであるという現実を痛感する。しかし、彼はあきらめない。


「ふっ……。よろしいでござる。拙者は破天荒な漢でござる!拙者の『尊厳』は、この程度の屈辱でゆるがぬでござる!」


コウタはパン屋から離れ、人目につかない場所で、自力で食料を探すという、地味で屈辱的な旅の最初の一歩を踏み出す。


スウェット一丁の聖戦士コウタの、「無能からの逆襲」**が、ここから始まるのだった。


戦士コウタの物語


第二章 絶望のダンジョンと拳の聖戦士


Ⅰ. ダンジョンへの道


聖都から追放され、空腹に耐えながらさまよっていたコウタは、町の片隅で休憩している衛兵を見つけた。


彼はスウェット一丁、デブ、ハゲという姿のまま、衛兵に声をかけた。


「デュフフ。衛兵殿、お尋ねしたいでござる。拙者は今、レベル上げに最適な『初心者用ダンジョン』を探しているでござるが、この近辺に『チュートリアルエリア』は存在するかでござるか?」


衛兵は、その外見と口調に心底嫌悪感を覚え、はっきり顔をゆがめる。


「うげぇ……なんだ、この薄汚いオタクは。ああ、初心者用なら、この先の森を抜けた先に『絶望のダンジョン』ってのがあるぜ。そこなら雑魚ばかりだから、お前みたいなクズでも入れるだろ。さっさと行け。」


「デュフフフフ!『絶望のダンジョン』!初期段階のシナリオにしては、ネーミングセンスがすばらしいでござるな!衛兵殿、情報提供感謝でござる!魔王を倒したあかつきには、特別報酬を差し上げようぞ!」


コウタは得意げに胸を張り、衛兵の嫌な視線を背中に浴びながら、森へと足を踏み入れた。彼の腰には、チート能力の根源である異世界の神器は一つもない。


Ⅱ. 初心者ダンジョンの現実


森を抜け、コウタがダンジョンの入り口である洞窟に足を踏み入れると、その空気は一変した。


「ふむ。この湿気と生臭さ……これぞ『ダンジョンのにおい』でござるな!テンションが上がるでござるよ!」


しかし、進んでいくうちに、コウタの目の前に広がった光景は、彼の想像をはるかに超えていた。


· スケルトンの群れが床を埋め尽くし、

· ゴブリンがオークに踏みにじられ、

· 天井からは巨大な吸血コウモリがうなり声を上げ、

· そして、その中心には、体長3メートルを超え、禍々しい角と翼を持つ「凶悪な悪魔デーモン」が立っていた。


コウタが目を丸くする。

「(目を丸くする)デュフ……デュフフフフ!」


コウタは爆笑した。その場を埋め尽くす「魔物の海」、そして中央に立つ終盤のボス級の悪魔。これこそが、彼の求めていた「破天荒な展開」だった。


「おいおい、衛兵殿よ……初心者向けと聞いていたでござるが、これはあまりにもリアルすぎでござるよ!絶望のダンジョンってか、文字通りすぎて草でござる!」


悪魔がコウタの姿をとらえ、あざ笑うかのように低いうなり声を上げる。


周りのゴブリンやスケルトンも、一斉にコウタ目がけて襲いかかってきた。


Ⅲ. 拳とスウェットの聖戦士


コウタは、チェックシャツもメガネもなし、スウェット上下というあまりにも頼りない姿のまま、異世界の神器に頼らない「聖戦士」の真の力を出した。


それは、のろわれた外見の下に隠された、どちゃくそイケメンの真の肉体が持つ、純粋な格闘術と超人的な身体能力だった。


「デュフフ!『鑑定チート』なし、『異世界の知識』のみで、このダンジョンを攻略してみせるでござるよ!」


コウタは襲いかかるゴブリンの群れに向かって、オタク特有の猫背のまま突進した。その動きは、先ほどの長老たちの魔力測定で「平凡な中年男」と判断されたものとはかけ離れていた。


古武術とストリートファイトが混ざったような、変則的な戦闘スタイルだった。


· 「グフッ!」というオタク特有のうめき声を上げながら、高速の掌底でスケルトンの頭を粉砕!

· 「デュフ!」と叫び、汚れたスウェットのひざでゴブリンのあごを砕き、そのまま宙に舞う吸血コウモリを回し蹴りで叩き落とす!


凶悪な悪魔が驚く。

「(驚愕)何だ、この動きは!その汚い肉体で、なぜこれほどの……!」


悪魔が炎の魔術を放とうとするが、コウタはすでに悪魔のふところに入り込んでいた。


彼の攻撃はチート能力ではない。それは17年間、誰にも頼らず、ただ生き残るためにみがき上げた、純粋な戦闘技術だった。


「フンッ!『デリート』してやるでござるよ!」


コウタは悪魔の腹部に、スウェットの腹をぶつけるような体当たりを敢行。


一見するとただのデブの突進だが、その衝撃は戦車の砲撃に等しかった。悪魔の強じんな外骨格が内側から砕ける音が響き渡る。


「ドチャクソ・イケメン・パンチ!(※口調はオタク古語のまま)」


コウタの汚れた拳が、悪魔の顔面にめり込む。悪魔は抵抗する間もなく、ダンジョンの壁に叩きつけられ、そのまま一撃で絶命した。


「デュフフフフ!ボスを先に倒すとは、最高の初見プレイでござるな!草、草でござる!」


コウタは大量の魔物の死体に囲まれながら、スウェット一丁で、誇らしげに立っていた。


彼の伝説は、この「絶望のダンジョン」のゴミだめのような場所から、幕を開けたのだった。


第三章 最初の神器と最初の仲間


Ⅰ. 一番奥での発見


凶悪な悪魔をスウェット一丁の拳で粉砕した後、コウタはダンジョンの奥へと進んだ。


彼はすでに大量の魔物を撃破しており、体中が魔物の返り血と汗と泥にまみれていたが、その顔は充実感に満ちていた。


「デュフフ。流石は『絶望のダンジョン』でござる。レベル上げの効率がぶっ壊れでござるよ。さて、この奥に、拙者の『ファースト・チート』が眠るはずでござるが……」


ダンジョンの一番奥、岩壁に囲まれた小さな広場にたどり着く。


そこに転がっていたのは、薄汚れた一枚のバンダナに丁寧に包まれた、分厚いレンズのメガネだった。


「これ、これこれ!デュフフフフ!見つけたでござるよ!『異世界の神器』、ビン底メガネでござる!」


コウタは歓喜し、バンダナごとメガネを拾い上げる。レンズには汚れがこびりついていたが、彼の心はすでに高揚していた。


Ⅱ. 鎖に繋がれた影


神器のすぐ横には、さびた鎖に繋がれた一匹のゴブリンがうずくまっていた。このゴブリンは、他の魔物とは明らかに異質な雰囲気を出していた。


「フム。このゴブリン、奴隷枠でござるか?……む?」


コウタがゴブリンに目を向けた瞬間、彼の視界に一瞬だけ、鎖に繋がれたゴブリンの姿が、ぼんやりと霞がかった人間の女性の姿となって映った。しかし、それはすぐに消え、元通りのゴブリンの姿に戻る。


「(目をこする)……まさか、召喚直後の影響で、視界にバグが発生したでござるか?拙者の目が、勝手に『真実を見よう』と暴走しおったでござるよ。」


ゴブリンは、「クギャギャ…!」と、ひどく悲しい声を上げて何かを訴えている。その目には涙が浮かんでいるようにも見えた。


コウタは拾い上げたビン底メガネを顔に当ててみたが、まだチートが発動しないため、正体はやはり「ゴブリン」としか分からなかった。


「チートがなければ正体不明でござるが……フム。このダンジョンのレベルと、このゴブリンの『弱さ』と『悲しみ』は、まるでつり合わぬでござる。ボスでもないのに、わざわざ鎖に繋がれているのも不自然でござるな。」


Ⅲ. 最初の決断


コウタはしばらく考えた後、腰のベルトに隠していた小さなナイフを取り出した。彼の「破天荒な漢」としての本能が、このゴブリンを見捨ててはいけないと告げていた。


「デュフフ。よろしいでござる。拙者は破天荒な漢でござる。理由もわからぬまま、困っている奴を助けるのが『聖戦士』のロールプレイでござるよ!」


コウタは鎖を切り離し、ゴブリンを解放した。


「さあ、お前は自由でござる。『初心者向けダンジョン』はすでにクリアでござる。拙者も、神器を手に入れたので、とりあえず町へ帰るでござる。」


ゴブリンは、開放されたとたん、クギャギャ、クギャギャと泣きながら、無理矢理コウタの太鼓腹に頭をこすり付けた。その行動は、明らかに人間的な感謝を示していた。


「お、おいおい!ベタベタと触れるでござるな!しかし……(内心)やはり、このゴブリン、正体は人間っぽいでござるな。まさか、誰かがのろいでゴブリンにされた、テンプレ王道展開でござるか?」


コウタが帰り道につこうとすると、ゴブリンはコウタのスウェットの裾をつかみ、離れようとしない。行く先々に、ゴブリンが無理矢理ついてくる。


「フム……拙者のカリスマ性にひかれたでござるか?よろしいでござる!」


「デュフフフフ!よし!お前は、拙者の『最初の仲間』でござる!名は……そう、『ゴブリン助』でござる!これから、拙者と共に魔王討伐の旅に出るでござるよ!」


こうして、聖戦士コウタの「最強のソロプレイ」は、ダンジョンを出た瞬間に終わりを告げ、「スウェットとゴブリン助の珍道中」として幕を開けたのだった。

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