表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私の旦那様は先生  作者: マーたん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/13

第4話 「何故、私たちは結婚出来たのか? ― はちゃめちゃデートと婚約の夜 ―」

先生と私の関係は、ただの“教師と生徒”じゃない。

けれど――どうして、私たちはこんなにも特別な関係になったんだろう?

少し昔の話をしよう。

笑って、泣いて、そして少しだけドタバタだった、あの“婚約の日”の物語を…

あらすじ


休日、先生との久しぶりのデート。

だが予定は次々に狂い、映画館ではチケット紛失、レストランでは予約ミス、そして雨に降られる大騒動。

それでも二人は、笑いながら手を取り合い、傘の下で寄り添って歩く。


夜――落ち着いたカフェで、先生がぎこちなく差し出したのは、小さな指輪。

「俺、きっと教師としては最低かもしれない。でも、一人の男として、君を守りたい」

涙があふれた夜。

その夜から、私の“先生”は、“旦那様”になった。








「今日は……ほんとに、デートですよね?」

私が問いかけると、斎藤先生――いや、当時はまだ“先生”だった彼が、少し照れたように笑った。


「デート、って言葉を君から聞くと変な感じだな」

「だって……先生、いつも教壇に立ってばかりなんだもん」


あの日は、春の始まり。

桜がまだ少し残る公園を歩きながら、私は小さなワンピースの裾を押さえた。

先生はジャケットのポケットに手を突っ込んで、少しだけよそ行きの顔をしていた。

私たちの関係はまだ“秘密”。

でも、互いの想いはもう止められなかった。



最初の目的地は映画館。

ところが、チケットを確認しようとした瞬間――。


「……あれ?」

「どうしたんです?」

「チケット、ない」


え? まさか、と思って先生のバッグを覗くと、見事に空っぽ。

さっきコンビニで飲み物を買ったとき、どうやら財布と一緒に置き忘れたらしい。


「先生……」

「いや、違う、これは……えーと、授業の癖で整理整頓してしまって……」

「それ整理じゃなくて、置き去りです!」


私が半ば呆れ顔で笑うと、先生もつられて笑った。

結局、映画は見れず。代わりにカフェで作戦会議を開くことに。



カフェでもまた事件が起きた。

店内に入ると、先生が一言。


「えっと……予約してた“サイトウ”ですが」

「“サイトウ”様は……キャンセルされてますが?」


店員の声に二人で固まる。

どうやら先生、予約サイトで“明日”の日付を押していたらしい。


「先生、まさかと思ったけど……」

「……授業準備の時も、日付ずらして提出してたかもしれん」

「もう、それ完全に先生あるあるですよ!」


笑いながら、空いたテラス席に通される。

風が少し冷たくて、先生が自分の上着をそっと私の肩に掛けてくれた。


「ほら、風邪ひくなよ」

「……先生って、こういう時だけ大人ですね」

「こういう時“だけ”か?」


その言葉に、思わず笑ってしまった。

ふと、テーブルの影で彼の指先に触れた。

彼は驚いたように瞬きし、それでも逃げなかった。



夕方、帰り道。

空が淡く染まり、雨粒がぽつ、ぽつと降り始めた。

「傘……持ってないですよね?」

「うん、持ってない」

「はぁ……もう完璧ですね、今日」


仕方なく、コンビニの透明傘を一本買って、二人で肩を寄せ合って歩いた。

傘の中は狭くて、距離が近すぎて、呼吸が重なる。

先生の肩に頬が触れた。

雨の音が静かに包み込んで、世界が少しだけ優しくなった。


「……ごめんな」

「え?」

「全部、予定通りにできなくて。デートも、俺らしくないし」


その声に、私は首を振った。

「でも、楽しかったです。全部ドタバタで、でも……私、笑ってばっかりでした」

「……そうか」

「先生と一緒にいると、いつも何か起きる。でも、嫌じゃないです」


その言葉に、彼の目が少しだけ潤んだ気がした。



夜。

小さなカフェの個室。

雨音の中で、先生はぎこちなくポケットを探っていた。


「……どうしたんですか?」

「いや、ちょっと……」


出てきたのは、小さな箱。

白くて、少し手に汗がついていた。

彼は深呼吸をして、私を見つめた。


「俺……教師としては、失格かもしれない」

「そんなこと――」

「でも、一人の男として、君を守りたい」


箱の中には、小さな銀のリングが入っていた。

照明の光が反射して、彼の手の震えまで照らしている。


「……俺と、結婚してくれ」


世界が止まった。

外の雨音も、心臓の音も、全部遠くに消えた気がした。

気づけば、涙が頬を伝っていた。


「……はい」

ただ、それだけ言った。


先生――いや、“私の旦那様”は、安心したように笑った。

その笑顔を見て、私は心の底から思った。

――この人となら、どんなハプニングでも乗り越えられる。



あの日の夜から、私たちの秘密の毎日が始まった。

教師と生徒であり、夫婦でもある奇妙な関係。

でも、どんなに笑っても、泣いても、すれ違っても、

私の心はいつも、あの春の夜に戻っていく。


あの、雨の音と指輪の光を、今も覚えている。

思えば、あの日のデートは本当に散々だった。

でも、あんなに笑って、あんなに泣いた日も、あれ以来なかった気がする。

どんなトラブルも、二人で乗り越えられる――そう信じさせてくれた日。

だから、今も私たちは笑い合える。

秘密の夫婦生活はまだまだ続くけど、あの夜の言葉だけは今も胸の中で輝いている……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ