last 「秘密の恋、永遠に。」
どんなに隠しても、どんなに嘘をついても、
人の“想い”は、隠しきれない。
父の疑念、妹の笑み、そして学校での距離。
数えきれない困難を乗り越えて、
ようやく二人がたどり着いたのは――
嘘も隠しごともいらない、ただの“夫婦”としての時間だった。
春。
桜が散る音の中、めぐみは校舎の前に立っていた。
卒業式が終わり、教室には誰もいない。
黒板にはまだ「三年B組」と書かれたまま。
「……終わりましたね、先生」
振り向くと、そこにはいつもの穏やかな笑顔。
けれど、もう“担任”ではない。
“斉藤先生”ではなく、――“斉藤めぐみの夫”だった。
「ここで出会って、ここで隠して、ここで笑って……」
「そして、ここでやっと堂々と隣に立てるな」
二人は見つめ合い、少し照れくさそうに笑った。
あの日、父にも打ち明けた。
反対もあった。涙もあった。
けれど、最後は父が一言だけ言った。
「――あいつを信じるなら、俺も信じよう」
その言葉を胸に、二人は今日を迎えた。
外に出ると、校門の前に妹が待っていた。
「お姉ちゃん、やっと“公認”だね」
「うん……ありがと」
「先生、これからもちゃんとめぐみのこと、幸せにしてよ?」
「もちろん」
先生は真剣な表情で答え、妹は満足そうに笑った。
めぐみは桜の花びらをすくい上げ、そっと先生の掌に乗せる。
「先生――じゃなくて、斉藤さん」
「……何だ、急に」
「今日から、学校じゃなくても“夫婦”ですよ」
「知ってる。……でもその言い方、ちょっと照れるな」
二人の指が絡む。
花びらが風に舞い、まるで祝福するように空を染めた。
「めぐみ、約束しよう」
「約束?」
「これからは、隠すんじゃなくて――一緒に生きる」
「……はい」
桜並木の下で、めぐみは小さく頷いた。
その瞳には、どんな困難も恐れない強さが宿っていた。
「斉藤先生、これからもよろしくお願いします」
「めぐみ、こっちこそ――末永く、よろしく」
二人は見つめ合い、そしてそっと口づけを交わした。
秘密だった恋は、ようやく光の中へと歩き出す。
――これは、禁じられた恋から始まった、
“ほんとうの夫婦”の物語。
恋は時に、隠すことで輝き、
愛は時に、試されることで強くなる。
めぐみと先生が選んだ道は、決して楽ではなかった。
けれど、そのすべてを越えて辿り着いた“ふたり”の形は、
きっと誰よりも優しく、美しい。
この物語を読んでくださったあなたへ。
ありがとう。
そして、あなたにも――
“自分だけの大切な人”が、きっとどこかにいますように。




