第三話:始める
魔王が目を覚まして数週間。体の全治と、小学校へ通い出すまでの時間はあと1週間である。
鬼子は魔王の為のルールを決めた。
まず、人前で黒魔術などの魔法は使わないこと!これが第一に大切なのだ。この世界の人々は魔法なんざフィクションの域だと思っているし、実際使える者はいるはずがない。使っているところを見られたらきっと大変なことになる。
次に、気を抜かないこと。というのも、鬼子はギリギリ人に見えるが、魔王は「鬼!」と指をさされるほど人の姿とは程遠い。だから、鬼子が魔法で仮面を作った。魔法の仮面をつけている時は、どこからどう見ても日本人の男の子だ。その仮面のお陰で、魔王が病院で眠っている時も誰にも怪しまれなかった。
「___魔王様、いかがでしょうか?」
手鏡をまじまじと見つめる魔王に、鬼子が声をかける。
「…眉毛…もうちょっとカッコ良くできない?」
鬼子、長いため息をつく。
「また修正ですか!顔が違うなと怪しまれたらお終いなんですよ!」
度重なる鬼子がキレそうなので、仮面の修正はその辺で止めておいた。
それでも魔王、また鏡を覗き込む。美しい顔だあ、イケメンだあなんて言いながら。
「それ…学校でやったら嫌われますよ。」
「わかったよお。」魔王、渋々手鏡を机に戻す。
「いいですか?魔王様。」
小さなため息をつくと、鬼子はしゃがんで魔王と目を合わせる。
「私の魔法の仮面は、四六時中持つ訳ではありません。異世界転移の時でどっと使ってしまってからは、魔力がほとんど無いのですから。」
魔王は俯く。
「私も、鬼子くんと同じように仮面が作れたなら…」
「仕方のないことですよ。…作り方を教える事もできますが。」
「えっ、本当!」
「そりゃもちろん、修行が必要ですけれどね。ですがその前に、私の仮面について覚えておいてほしいことがあるのです。」
魔王、唾をゴクリ。
「仮面をつけている時、絶対に気を抜かないでくださいね!なんてったって気が緩むと取れてしまうほど弱々しい魔法なのです。魔法を使える人になら、ひょっとしたら素顔を見透かされてしまうかもしれないほど!」
「ヒェえええ!」
「私がそばにいる時には気を緩めようと取れませんが、一人でいる時はそのあたり気をつけてください。あと、学校で魔法使っちゃダメですからね!」
「分かった。」魔王、ふと窓の外を覗く。ここ数週間、鬼子と話す以外にすることが特になかった魔王は、窓の外を覗くことが癖になりつつあった。
「鬼子くん…私たち、体が縮んでいるよね…」
「はい、私の魔法という訳ではありませんよ。なんなんでしょうね。こっちに転移する時に自動的に縮んだとか?」
「どうなんだろう。でも、人の目線から人の家は見た事が無かったから、新鮮なんだよね。」
「私も、気持ちわかります。退院後が楽しみですね。」
「うん…楽しみだなあ、小学校!」
___しかし魔王は知らなかった。小学校が、どれだけショッキングな世界なのかという事を…!
大丈夫ですかコレ、面白いですか?
書いてる分には楽しいのですが…