第五夜 溺愛と変化の夜
このメンバーに
教会の回復役件治癒担当の
腹黒聖職者・オルシードがいれば
かつて世界最強と言われた
勇者パーティーが揃う。
オルシードは今
自分が建てた計画が作動したので
忙しくて来れるわけがない。
今頃生き生きと
教会内部の膿み出しに
精を出していることだろう。
そんなことをラインハルトと
コーネリアが思っていると
シェルドの足元に
オレンジの毛並みの子猫と白い子猫が近づいていく。
2匹の子猫からすると
巨人に見えるシェルドの足元にすり寄っていくのは
見ている方がドキドキするが
たとえ踏まれても
その身を一瞬で
強固な結界で守れる子猫たちである事は知っている。
だからラインハルトもコーネリアも呆れて見ているだけだ。
今この状態のシェルドを止めれるのは
子猫たちしかいない。
そもそも3匹の子猫を溺愛するシェルドが
そんなミスをするわけがない。
オレンジの子猫と白い子猫は
それぞれシェルドの左右のズボンの裾に
ぴょんぴょんと飛びつき、
「パパ、わたちたち大丈夫でしゅ。」
「お願いだからゴールデンフィッシュナイトは
続けてくだしゃーい!」
ちゃんと自分たちが可愛らしく見えるように
目をうるうるさせて、
シェルドを見上げる。
「アメジスト!サファイア!わかってるよー!
言ってみただけでしゅよ」
シェルドは慌てて2匹も抱き上げる。
シェルドにとってこの3匹は宝物のような存在なのだ。
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「俺はこの3匹の子猫のために
今まで生きてきたんだ!」
そう言って出会ったばかりの3匹を
迷うことなく抱き上げたあの日。
ラインハルトは今までどんな時も
コワモテの表情を崩さなかったシェルドの変化に驚いていた。
ただし、
「お前、表情崩すなら、もっとマシな崩し方と状況にしろよ!」
黒煙と瓦礫とほこりとの中で、
シェルドは耳の近くの頸動脈から
プシューと血しぶきを吹き飛ばしながら、
ついさっきまですざましい爆発音を響かせた
場に似つかわしくないほど
顔がとろけきった表情をしている姿に
その場にいたシェルド以外のものはドン引きをしていた。
すごく気持ち悪い表情と、凄まじく凄惨な状況での出来事だったから。
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5年ほど前
砂漠の真ん中に欲深き闇の魔法使いロギンが
城を建て
最強最悪の生物を生み出そうとして
夜な夜な若い男たちをさらっている!と言う情報が
教会に舞い込んだ。
そんな欲深い魔法使いのロギンを倒すために
当時、教会が勇者として認定した
勇者ラインハルトをリーダーに
獣人シェルド
魔法使いコーネリア
叡智の聖職者オルシードに
パーティーを組ませ討伐にいかせた。
4人は様々な修羅場をくぐりぬけ
ようやく闇の魔法使いロギンの城を見つけ出し
追い詰め彼を屠ることに成功した。
多くの国々を脅かしていた
闇の魔法使いロギンは討伐されたが、
城の中はかなり悲惨であったと4人は言う。
そして今後このようなことが
二度と起きないように、
4人はその場所を徹底的に
破壊し地上から消し去った。
城が存在したかも
分からないように…。
あのあと、様々な国の秘密組織が
その場所を探し出し
己の国の利益になるものを見つけようとしたが
見つける事はできなかった。
唯一住居と思わしき場所に
瓦礫の山とに木が1本生えているのを
見つけただけだったと言う。
4人はその状況を一切明かさない。
そこで犠牲になった生物たちも
生きることが叶わなかった生物たちはすべて
神の名において屠ってきたと言う。
4人は当時の教会に
最強の勇者パーティーとして認定されその活動を終えた。
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「 ロギンおじいちゃまは
悪くないでしゅ!
わたちたちとおとうしゃまとおかあしゃまを
守っていただけでしゅ!」
すばらしい様々な国の昔話しも
角度を変えて見てみると
全く違う話になることが多い。
闇の魔法使いロギンは
ただの愛猫家であった。